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観測された鉄系高温超伝導の起源の鍵 電子線の照射による鉄系高温超伝導の超伝導電子数の特異な変化

掲載日:2014年12月11日

結晶に電子線を照射することにより作り出される欠陥(不純物)を示す模式図。電子が原子と衝突することにより、「原子の抜けた穴」と「元の位置からずれた原子」から成る欠陥が生じる。電子が原子に衝突した際の反跳エネルギーが小さいため、図で示した欠陥が試料全体に均一に分布する。 (c) 2014  水上 雄太

結晶に電子線を照射することにより作り出される欠陥(不純物)を示す模式図。電子が原子と衝突することにより、「原子の抜けた穴」と「元の位置からずれた原子」から成る欠陥が生じる。電子が原子に衝突した際の反跳エネルギーが小さいため、図で示した欠陥が試料全体に均一に分布する。
© 2014 水上 雄太

東京大学大学院新領域創成科学研究科の水上雄太助教、芝内孝禎教授(京都大学大学院理学研究科客員教授兼任)、東北大学金属材料研究所の橋本顕一郎助教らは、鉄系高温超伝導体についてこれまで明らかになっていなかった超伝導電子の電子状態を解明しました。これは、純良単結晶に電子線を照射して、その照射量を増やすに伴い超伝導電子の数が非単調に変化することを初めて観測したことにより、明らかになったものです。

2008年に発見された鉄系超伝導体は、その発見以降、短期間で膨大な量の研究がなされたにもかかわらず、その超伝導発現機構と密接に関係する超伝導電子の電子状態が未解明でした。本研究によってそれは「s±(エス プラスマイナス)」型の対称性であることが明らかとなり、これは磁気揺らぎを主な機構とする超伝導において提案されたものです。今後より高い温度での超伝導の実現を目指し、この機構を用いた超伝導体の設計指針につながることが期待されます。

本研究成果は2014年11月28日付けで、英国科学誌Nature Communicationsにオンライン掲載されました。

本研究は、京都大学大学院理学研究科の松田祐司教授、仏エコールポリテクニーク、米フロリダ大学の研究者らと共同で行いました。

プレスリリース

論文情報

Y. Mizukami, M. Konczykowski, Y. Kawamoto, S. Kurata, S. Kasahara, K. Hashimoto, V. Mishra, A. Kreisel, Y. Wang, P. J. Hirschfeld, Y. Matsuda, T. Shibauchi,
“Disorder-induced topological change of the superconducting gap structure in iron pnictides”,
Nature Communications vol. 5, Article number 5657 (2014), doi: 10.1038/ncomms6657.
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