ARTICLES

English

印刷

アミノ酸の代謝促進で長寿に Sアデノシルメチオニン代謝が寿命延長の鍵

掲載日:2015年10月14日

© 2015 小幡史明食餌中に含まれるメチオニンは、体内でSAMに変換される。GNMTは余剰なSAMを代謝して制御する酵素である。GNMTが活性化しSAMの代謝・消費が促進されるとショウジョウバエの寿命が延びる

メチオニン代謝と寿命の関係
食餌中に含まれるメチオニンは、体内でSAMに変換される。GNMTは余剰なSAMを代謝して制御する酵素である。GNMTが活性化しSAMの代謝・消費が促進されるとショウジョウバエの寿命が延びる
© 2015 小幡史明

東京大学大学院薬学系研究科の小幡史明特任助教と三浦正幸教授らの研究グループは、Sアデノシルメチオニンの代謝を促進させることで寿命が延びることを、ショウジョウバエを用いて明らかにしました。またSアデノシルメチオニン代謝の促進が、食餌制限による寿命伸展の一因であることを発見しました。

摂取カロリーを制限すると寿命が延長する現象は、酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウスからヒトまで種を超えて広くみられます。近年の研究から、実際には総カロリーではなく、摂取する食餌の質が重要であることがわかってきました。中でも、必須アミノ酸の一種であるメチオニンだけを制限することでも寿命が延長することが示唆されています。しかし、その詳しい仕組みは明らかになっていませんでした。

今回研究グループは、メチオニンそのものではなく、メチオニンから合成されるSアデノシルメチオニン(SAM)の代謝が寿命延長の決定要因であることを明らかにしました。また、研究グループはショウジョウバエの脂肪組織にはSAMの量を一定にしようとする仕組みがあることを発見し、この機能を担う酵素(Gnmt)とその遺伝子を見出しました。SAMの量を詳しく分析した結果、老化したショウジョウバエの体内ではSAMの量が増加していました。そこでこの酵素の働きを遺伝学的に強めると、SAMの代謝が促進されることによって加齢に伴うSAMの増加が抑えられ、個体の寿命が延びることがわかりました。また、SAMの量を調節する酵素を欠損させたショウジョウバエでは、食餌制限による寿命延長の効果が見られませんでした。

「SAMの代謝経路はヒトにも同じように存在するため、本研究成果を人間の寿命や健康に関する研究に役立つ知見と考えています」と現在、英国フランシス・クリック研究所の研究員である小幡氏は話します。「SAMは抗うつ、抗肝臓傷害作用をもつサプリメントとして使われている実績がありますが、その作用機序の多くはわかっていませんので、今後詳しく調べる必要があると思います」。

プレスリリース

論文情報

Fumiaki Obata, Masayuki Miura, "Enhancing S-adenosyl-methionine catabolism extends Drosophila lifespan", Nature Communications Online Edition: 2015/09/18 (Japan time), doi:10.1038/ncomms9332.
論文へのリンク(掲載誌

関連リンク

大学院薬学系研究科

大学院薬学系研究科 遺伝学教室

アクセス・キャンパスマップ
閉じる
柏キャンパス
閉じる
本郷キャンパス
閉じる
駒場キャンパス
閉じる