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皮肉や冗談を理解するための神経ネットワークを解明 内側前頭前野をハブとした階層的神経ネットワークが存在

掲載日:2013年6月17日

© Takamitsu Watanabe. 階層的神経モジュール。言語処理用モジュールと非言語処理用モジュールがあり、それらを共通モジュールの一つである前背側内側前頭前野がコントロールしている。

日常生活で交わされる皮肉や冗談を理解するには、非言語情報(表情や声色等)と言語情報(言葉の内容等)の食い違いを素早く処理し、相手の意図を的確に推測しなければならない。本研究では、このような言語・非言語情報のスムースな処理が、2つの下位モジュール(ここでのモジュールは複数の脳領域から成る機能的集合体を指す)を持つ階層的な神経ネットワークによって実現されていることを明らかにした。主に非言語情報を活用して他者の友好性を判断する場合には、後方部の背内側前頭前野をハブとする下位モジュールが活発化し、主に言語情報を活用する場合には右半球の腹側の後部下前頭回をハブとする異なる下位モジュールが活発化した。更に、2つの下位モジュールは前方部の背内側前頭前野によって橋渡しされ、背内側前頭前野が活性化後、どちらかのモジュールのハブ領域が活発になることも示された。すなわち、前方部の背内側前頭前野が非言語情報用モジュールと言語情報用モジュールのどちらかを選択的に動員し、非言語情報と言語情報が食い違う際の複雑な他者判断を瞬時に効率よく成立させていることを示唆している。本研究は、東京大学大学院医学系研究科精神医学の山末英典准教授・同研究科統合生理の渡部喬光特任助教らの研究グループによって行なわれた(科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業 CREST」および文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」による成果)。

論文情報

Watanabe, T., Yahata, N., Kawakubo, Y., Inoue, H., Takano, Y., Iwashiro, N., et al.,
“Network structure underlying resolution of conflicting nonverbal and verbal social information”,
Social Cognitive and Affective Neuroscience Online Edition: 2013,4,2, doi: 10.1093/scan/nst046.
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リンク

大学院医学系研究科

大学院医学系研究科・医学部 精神医学分野

大学院医学系研究科・医学部 精神医学分野 神経画像・臨床神経生理グループ

([関連項目]プレスリリース:2012.6.23)自閉症スペクトラム障害に脳の特定領域の活動不全が関与

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