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新原理に基づく強相関太陽電池を実証 接合界面の相競合を利用した高効率太陽電池の実現へ前進

掲載日:2014年9月9日

遷移金属酸化物においてしばしば現れる電荷整列絶縁体状態に光を照射すると、止まっていた電荷が一斉に動き出して金属化することが知られています。この光誘起相転移の過程では、1つの光子が複数の電荷を励起する多重キャリア生成が起きています。次世代太陽電池として注目されている強相関太陽電池では、この現象による光電変換効率の飛躍的な向上が期待されています。

二電荷整列絶縁体状態に光を照射したときに、局在化していた電荷が一斉に動き出して金属へと相転移する様子。この際に、1光子で複数のキャリアが励起される多重キャリア生成が起こる。この現象を太陽電池で利用するためには、図のように光誘起相転移をヘテロ接合の界面で起こす必要がある。

© 2014 Masao Nakamura.
二電荷整列絶縁体状態に光を照射したときに、局在化していた電荷が一斉に動き出して金属へと相転移する様子。この際に、1光子で複数のキャリアが励起される多重キャリア生成が起こる。この現象を太陽電池で利用するためには、図のように光誘起相転移をヘテロ接合の界面で起こす必要がある。

東京大学大学院工学系研究科の川﨑雅司教授らの研究グループは、光を照射すると相転移を起こす代表的な物質「ペロブスカイト型マンガン酸化物」と半導体とのヘテロ接合を作製し、磁場下での太陽電池特性を調べました。格子歪みや化学組成を最適化した接合では、光電変換効率が磁場によって大きく向上することを見いだしました。この結果は、接合界面に相競合状態が誘起されていることを示唆しています。さらに、大きな磁場依存性を示す接合では、磁場依存性をほとんど示さない接合に比べて、大きな短絡電流が観測されました。これは、接合界面近くで局所的な光照射による相転移が起こり、多重キャリア生成によって光電流が増幅していると考えられ、強相関太陽電池の実現に近づく重要な結果といえます。

プレスリリース (理研)

論文情報

Z. G. Sheng, M. Nakamura, W. Koshibae, T. Makino, Y. Tokura, and M. Kawasaki,
“Magneto-tunable photocurrent in manganite based heterojunctions”,
Nature Communications Online Edition: 2014/8/1 (Japan time), doi: 10.1038/ncomms5584.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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