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膜輸送体の超高感度輸送計測法の開発 輸送活性の計測感度が従来法より100万倍向上

掲載日:2014年8月4日

東京大学大学院工学系研究科の渡邉力也助教、野地博行教授らの研究グループは、薬剤標的として注目される膜輸送体の輸送活性の計測感度を従来法と比べて約100万倍向上させる超高感度活性計測技術を開発しました。

超高密度人工生体膜チップを用いた膜輸送体の活性計測。(左)超高密度人工生体膜チップの外観。(右)蛍光指示薬を利用した膜輸送体の活性計測例。膜輸送体の活性に応じて蛍光の強度差が大きくなる。

© 2014 渡邉力也
超高密度人工生体膜チップを用いた膜輸送体の活性計測。(左)超高密度人工生体膜チップの外観。(右)蛍光指示薬を利用した膜輸送体の活性計測例。膜輸送体の活性に応じて蛍光の強度差が大きくなる。

膜たんぱく質は細胞膜上にあり、情報伝達やエネルギー合成などの重要な役割を担っているたんぱく質です。市販薬の大半は膜たんぱく質を標的としており、なかでも生体膜を介して細胞内外の基質の取り込みや排出を行う膜輸送体は、近年特に注目されている薬剤標的です。膜輸送体を創薬の標的とする場合、その輸送活性を定量的に計測することが薬効を評価する上で重要ですが、従来汎用されてきた方法では、検出感度の問題と計測対象が限られていることから、大半の膜輸送体の活性を計測することは極めて困難でした。

渡邉助教らは検出感度向上のため、①安定性と膜たんぱく質との高い親和性を兼ね備えた人工生体膜の量産技術の開発、②その人工生体膜で被われた微小水滴を10万個以上集積化させた超高密度人工生体膜チップの開発、③これを用いて膜輸送体の超高感度活性計測技術を確立しました。現在までに、F型ATP合成酵素やα溶血素などの膜輸送体の働きを1分子単位で計測できるほどの高感度化に世界で初めて成功し、基質の取り込みや排出を、従来法の約100万倍の超高感度かつ定量的に計測することを可能にしました。 今回開発された人工生体膜チップは、さまざまな膜輸送体を標的とした創薬候補を超効率的に探索する上で最適な基盤技術になることが期待されます。

プレスリリース

論文情報

Rikiya Watanabe, Naoki Soga, Daishi Fujita, Kazuhito V Tabata, Lisa Yamauchi, Soo Hyeon Kim, Daisuke Asanuma, Mako Kamiya, Yasuteru Urano, Hiroaki Suga, & Hiroyuki Noji,
“Arrayed Lipid Bilayer Chambers Allow Single-Molecule Analysis of Membrane Transporter Activity”,
Nature Communications 2014, 5, 4519, doi: 10.1038/ncomms5519.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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