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二次元磁性体の新たな量子状態を極限強磁場において観測 直交スピンダイマーがみせる多彩な量子相

掲載日:2013年10月28日

物質中の電子の持つ電荷やスピンと呼ばれる微小磁石の振る舞いが、今日の電子デバイスや磁気メモリなどの機能を実現しています。これらの電子の振る舞いは量子力学に支配されており、その理解を深めることは今後の電子デバイスの開発にとって重要です。

© Yasuhiro H. Matsuda, 直交ダイマー2次元磁性体SrCu2(BO3)2の118テスラまでの磁化過程。赤線で囲った70テスラ以上の磁化過程が今回はじめて明らかになった。1/2プラトー(磁化の値が平坦になること)は長さが短く、また完全に平らでないことから1/3プラトーに比べて不安定であることがわかる。

電子の振る舞いが量子力学に支配されている物質の一例として、ストロンチウム(Sr)、銅(Cu)、ボロン(B)、酸素(O)で構成される、SrCu2(BO3)2があります。SrCu2(BO3)2はCuの電子が微小な磁石(スピン)をもち隣のCuの電子スピンと対(ダイマー)をつくります。磁場をかけた際のこのダイマーの磁気的な振る舞いが、単純な理論では説明できない不思議な階段状の変化を示すことから発見以来10年以上研究されてきました。しかし、研究には非常に強い磁場が必要となることから、これまでSrCu2(BO3)2の磁気的な性質がその飽和状態の3分の1を示す状態(3分の1領域)における振る舞いの解明までにとどまっていました。

東京大学物性研究所の松田康弘准教授、大学院生の阿部望氏らは、京都大学大学院工学研究科の陰山洋教授、スイス連邦工科大学ローザンヌ校のミラ フレデリック教授らと協力して、118テスラという極限強磁場中で、このSrCu2(BO3)2の磁化測定にはじめて成功しました。また、その結果から、磁気的な性質がその飽和状態の2分の1を示す状態(2分の1領域)において、SrCu2(BO3)2が2分の1プラトー(磁化の値が平坦になること)と呼ばれる新たな量子状態を示すことを観測して、その完全な解明に成功しました。

本研究の成果は、SrCu2(BO3)2のような二次元磁性体が持つ量子性の理解に大きく貢献し、新たな量子デバイス実現につながるものと期待されます。またこの成果は、Physical Review Letters誌(9月26日付け)に掲載されました。

プレスリリース [pdf]

論文情報

Y. H. Matsuda, N. Abe, S. Takeyama, H. Kageyama, P. Corboz, A. Honecker, S. R. Manmana, G. R. Foltin, K. P. Schmidt, and F. Mila,
“Magnetization of SrCu2(BO3)2 in Ultrahigh Magnetic Fields up to 118 T”,
Physical Review Letters Online Edition: 2013/9/26 (Japan time), doi: 10.1103/PhysRevLett.111.137204.
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物性研究所 附属国際超強磁場科学研究施設 松田康弘研究室

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