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マウスES細胞の多能性と分化に関与するメカニズム Wnt/β カテニン経路の作用に関わる遺伝子制御ネットワークの同定

掲載日:2013年4月1日

受精卵が分裂を繰り返しながら、胚となってからだを作る過程のごく初期に、様々な臓器や組織に分化できる能力(多能性)をもつ細胞が生まれることが分かっています。胚性幹細胞(ES細胞)はこの細胞に由来します。昆虫などの無脊椎動物からわたしたち脊椎動物に至るまで、臓器や組織が作られる過程では、Wntというタンパク質が様々な段階・部分で重要な働きをすることが知られています。一方、WntはマウスES細胞の多能性の維持にも関与します。Wntのこの相反する働きはパラドックスの一つでした。

マウスES細胞のゲノムDNAにおけるβ カテニン、Oct4、Sox2、Nanog、Tcf3の重複結合領域の一例 © Shinsuke Ohba
赤と青のピークの中央部がそれぞれの因子が結合している領域(黄色)。ES細胞の多能性マスター因子であるPou5f1遺伝子(Oct4)の近傍で、β カテニンの結合領域とOct4、Sox2、Nanog、Tcf3の結合領域は重複し、その領域の塩基配列は哺乳類間で高度に保存している(最下段)。

東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の大庭伸介特任准教授は、南カリフォルニア大学エリ・アンド・イデッス・ブロード再生医療・幹細胞研究所所長のAndrew P. McMahon教授、ハーバード大学ダナ・ファーバー癌研究所X. Shirley Liu准教授らと共同で、ゲノムワイドな網羅的解析とシステム生物学的手法を用い、マウスES細胞においてWnt/βカテニン経路が多能性維持作用と分化誘導作用を示す際に、それぞれ異なる遺伝子ネットワークを使うことを見出しました。本成果によって、幹細胞の多能性と分化を制御するメカニズムの一端が明らかとなり、再生医療における幹細胞の安全かつ適切な使用法を開発する際の足がかりとなることが期待されます

プレスリリース

論文情報

Xiaoxiao Zhang, Kevin A. Peterson, X. Shirley Liu, Andrew P. McMahon, and Shinsuke Ohba,
“Gene regulatory networks mediating canonical Wnt signal directed control of pluripotency and differentiation in embryo stem cells”,
Stem Cells Online Edition: 2013/3/15. doi: 10.1002/stem.1371.
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