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盲点の内側に光を当てると瞳孔反射の量が増える 照射光量に応じ適応的に反応する生体システムの解明へ

掲載日:2015年6月26日

© 2015 Ikuya Murakami.左図: 網膜と眼内の視神経円板の関係。右図: 実験結果の模式図。各パネルにおいて、白色光と青色光はそれぞれ、盲点の外側、内側に当てた光を表す。

盲点の外側と内側に光を当てた場合に見られる瞳孔の対光反射
左図: 網膜と眼内の視神経円板の関係。右図: 実験結果の模式図。各パネルにおいて、白色光と青色光はそれぞれ、盲点の外側、内側に当てた光を表す。
© 2015 Ikuya Murakami.

東京大学大学院医学系研究科の宮本健太郎日本学術振興会特別研究員PDと同大学院人文社会系研究科心理学研究室の村上郁也准教授は、健康な成人において、盲点の内側に当たる光は知覚されないにもかかわらず、光が当たるか、当たらないかによって瞳孔反射の量に違いが生じることを発見しました。

私たちの眼の網膜には、光を感じる視細胞が約1億個あり、それらの細胞に光が当たるとその情報が脳に伝えられ、光を認識します。ところが、盲点に対応する網膜上の部位は、血管や視神経の通り道であるため視細胞が存在しません。したがって、盲点の内側に光が当たっても私たちにはそれが一切見えません。一方で、盲点を囲むドーナツ型の光が当たると、実際には盲点に光が当たっていなくても盲点の内側にも光が当たっているかのように感じます。

同様に眼に光が当たると、瞳孔では1秒弱遅れて瞳孔径が縮小する対光反射が起きます。対光反射は、当たった光の面積に応じた反応であることが知られています。これまで、当たっている光の面積と知覚される光の面積が異なる盲点と対光反射についてはその関係が明らかではありませんでした。

今回の発見では、視細胞のない盲点の内側だけに光を当てても対光反射はまったく起きない一方で、盲点に青色や白色などの短い波長を含む光を当てながら網膜の別の場所で光を同時に当てた場合に、対光反射の量が増強されることがわかりました。

このような一見相反するような結果は、光に対して感受性をもつ内因性光感受性網膜神経節細胞という種類の神経細胞の軸索が盲点を通過しており、この神経節細胞がそこで光を受容している可能性があることを示唆しています。

本研究のように盲点という網膜上の特異な場所を用いることによって、私たちが物を見る、認識する仕組みの理解が深まるとともに、反射や概日リズムといった、網膜上の光照射を受け取って適応的な制御が生じる過程に関して、ますます研究の道筋が拓ける可能性があります。「今後は、意識的・無意識的な視覚的判断に、盲点刺激が影響を与えうるかを調べ、脳内の多重の情報処理経路に関して理解を深めていく予定です」と村上准教授は話します。

論文情報

Kentaro Miyamoto and Ikuya Murakami, "Pupillary light reflex to light inside the natural blind spot", Scientific Reports Online Edition: 2015/06/26 (Japan time), doi:10.1038/srep11862.
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