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電池の充電時間が1/3以下に 濃い液体が秘める新機能を発見、新世代の電解液へ

掲載日:2014年4月4日

電気を蓄え、必要なときに取り出すことのできる二次電池は、電気自動車やスマートグリッドなど省エネルギー社会実現の鍵を握る中核技術である。現状最も優れた二次電池はリチウムイオン電池であるが、上記用途に向けて、充電時間の短縮や高電圧作動が喫緊の課題となっている。特にリチウムイオン電池を構成する要素のうち、電解液の材料は20年以上もほぼ同一組成のものが用いられており、革新的な電解液材料を開発することができればリチウムイオン電池の飛躍的な性能向上も現実性を帯びる。

© 山田裕貴
電解液(右側)から負極(左側)へリチウムイオン(橙色球)が移動することでリチウムイオン電池の充電が行われる。この反応には電解液として、エチレンカーボネート溶媒が必須とされていたが、本研究の成果により“濃い電解液”では多種多様な溶媒が使用可能となった。本研究で開発した電解液では、この反応が極めて高速で起こるため、従来の1/3以下の時間で急速充電が達成できる。

東京大学大学院工学系研究科の山田裕貴助教と山田淳夫教授のグループは、京都大学の袖山慶太郎特定研究員、独立行政法人物質・材料研究機構の館山佳尚グループリーダーらとの共同研究により、リチウムイオン電池の急速充電、高電圧作動を可能にする新規な電解液を開発した。この新規な電解液は従来の4倍以上となる極めて高い濃度のリチウムイオンを含む“濃い液体”であり、既存の電解液にはない「高速反応」と「高い分解耐性」という新機能を有する。また、この新規な電解液の機能は特殊な溶液構造によるものであることを独立行政法人理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」を用いたシミュレーションにより明らかにした。

本研究により開発した電解液は、既存材料の性能を大きく上回る新世代の電解液としてリチウムイオン電池に応用でき、従来の3分の1以下の時間で急速充電が可能となると共に、現状の3.7 V(ボルト)を超え、電気自動車やスマートグリッドへの実用に耐えうる5V級の高電圧作動への道を拓くものである。

なお、本研究成果の一部は、文部科学省元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>「京都大学 触媒・電池元素戦略研究拠点ユニット」(研究代表者:田中庸裕 京都大学大学院工学研究科教授)による支援を受けて行われた。

プレスリリース

論文情報

Yuki Yamada, Keizo Furukawa, Keitaro Sodeyama, Keisuke Kikuchi, Makoto Yaegashi, Yoshitaka Tateyama, Atsuo Yamada,
“Unusual Stability of Acetonitrile-Based Superconcentrated Electrolytes for Fast-Charging Lithium-Ion Batteries”,
Journal of the American Chemical Society Online Edition: 2014/3/24, doi: 10.1021/ja412807w.
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大学院工学系研究科 化学システム工学専攻

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