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異なる原子の光格子時計の短時間精密比較に成功 周波数比の高速かつ超精密な測定は新しい物理への窓を開く

掲載日:2016年4月6日

© 2016 Hidetoshi Katori.様々なレーザー光源を用いてイッテルビウム原子とストロンチウム原子を捕獲、冷却し、光格子時計を実現します。制御システムによってレーザー光のパルスのタイミングや周波数を制御します。

理研の光格子時計の実験室の様子
様々なレーザー光源を用いてイッテルビウム原子とストロンチウム原子を捕獲、冷却し、光格子時計を実現します。制御システムによってレーザー光のパルスのタイミングや周波数を制御します。
© 2016 Hidetoshi Katori.

東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授と理化学研究所の研究グループは、イッテルビウム原子とストロンチウム原子を用いた光格子時計を、世界最高精度かつ最短の計測時間で比較することに成功しました。

光時計は、現状で最も高精度な周波数計測を可能にする装置であり、次世代の時計として世界中で研究が進められています。最先端の光時計では、その光時計が最高精度であることを証明すること自体が、大きな挑戦です。

研究グループは、イッテルビウム原子とストロンチウム原子を「魔法波長」で作られた光格子の中に捕獲・計測する光格子時計を開発して周波数を比較しました。その結果、国際単位系の1秒の実現精度を10倍近く上回る5x10-17の不確かさで周波数比を決定し、異なる原子時計の周波数比較の最高精度を更新しました。さらに、周波数比較の安定度を上げる「同期比較」手法を適用することによって、従来に比べて90倍も速い、わずか150秒でこの周波数比較を実現しました。

「異なる原子の周波数比較でこのような精度を達成できると、光格子時計は本来の時計の役割を超えて、未知の物理を探索する検出器の役割を担うようになります」と香取教授は話します。「このような周波数比の高精度な計測は、物理定数の恒常性の検証を可能にし、標準理論を超える新しい物理の構築に貢献する可能性があります」と期待を寄せています。

プレスリリース

論文情報

Nils Nemitz, Takuya Ohkubo, Masao Takamoto, Ichiro Ushijima, Masao Takamoto, Manoj Das, Noriaki Ohmae, and Hidetoshi Katori, "Frequency Ratio of Yb and Sr clocks with 5x10-17 uncertainty at 150 seconds averaging time", Nature Photonics 10, 258 (2016), doi:10.1038/nphoton.2016.20.
論文へのリンク(掲載誌UTokyo Repository

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