体温を維持するために遺伝子の立体構造が変化 寒冷感知タンパク質のリン酸化と遺伝子の立体構造
東京大学先端科学技術研究センター 代謝医学分野の酒井 寿郎教授、稲垣 毅特任准教授、阿部 陽平特任研究員らの研究グループは、寒冷時に熱産生遺伝子の発現を急速に活性化して体温を維持するには、従来知られていた「転写因子」と呼ばれるタンパク質群の働きだけではなく、熱産生をつかさどる遺伝子DNA(クロマチン)の急速な立体構造変化が必須であることを解明しました。
私たちヒトや哺乳動物は、急激な環境の変化に瞬時に反応し、生命を守るしくみがあります。例えば、からだが寒冷環境という低体温が引き起こされうる危険な状態にさらされると、中枢でこれを感知し、交感神経からの刺激によって、熱産生を専門に行う褐色脂肪組織で迅速に熱が産生され、低体温になることを防ぎます。研究グループはこれまで、核内で遺伝子DNAのメチル基を除去するJMJD1Aタンパク質を欠損したマウスは低体温に陥ることを明らかにしていましたが、そのしくみの詳細はわかっていませんでした。
交感神経から寒冷刺激を受けたJMJD1Aタンパク質は、リン酸化され、これが引き金となって、「遺伝子の高次構造を変化させる複数のタンパク質群」が熱産生遺伝子に結合、遺伝子の発現を活性化させます。これら一連の変化は数分の単位でおこり、熱産性に関わる遺伝子の発現を急速に促します。
本成果は、JMJD1Aタンパク質を標的とした低体温症や肥満への新規治療法や予防法にもつながると期待されます。
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論文情報
JMJD1A is a signal-sensing scaffold that regulates acute chromatin dynamics via SWI/SNF association for thermogenesis", Nature Communications Online Edition: 2015/05/07 (Japan time), doi:10.1038/ncomms8052.
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