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真核生物の転写システムの複雑化の仕組みの解明

新しい進化指標による更なる古代の転写システムの解明

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定量生命科学研究所
2018/06/05

© 2018 Laboratory of Developmental Biology, IQB, The University of Tokyo.現在の生物学研究における生命現象の仕組みに関するほぼ全ての研究は、現存生物の生物システムについて行なわれている。本研究は約25億年前の古細菌から真核細胞に至る遺伝子制御の複雑化の仕組みに関するものである。

真核生物の転写開始システムの複雑化の仕組み
現在の生物学研究における生命現象の仕組みに関するほぼ全ての研究は、現存生物の生物システムについて行なわれている。本研究は約25億年前の古細菌から真核細胞に至る遺伝子制御の複雑化の仕組みに関するものである。
© 2018 Laboratory of Developmental Biology, IQB, The University of Tokyo.

東京大学定量生命科学研究所の堀越正美准教授らの共同研究グループは、約25億年前に古細菌から真核細胞へ進化した際に転写開始システムが複雑化した仕組みを初めて明らかにしました。

進化の研究といえば、化石を利用し、生物が共通祖先から分岐した年代を推定する方法が馴染み深いです。現存生物のDNAやタンパク質の配列の同一性や類似性を計算して進化の変遷を予測する分子進化の分野では、配列比較・進化距離・分子系統樹と呼ばれる手法が駆使されます。しかし、これらの手法には幾つかの弱点があります。まず、古代生物の遺伝子を手に入れることができません。そのため、今まで祖先生物の遺伝子と現存生物の遺伝子の違い(進化距離)を測ることが不可能でした。

研究グループが2016年に発表した研究では、遺伝子内に含まれる繰り返し配列に着目し、祖先遺伝子と現存遺伝子の間の進化距離を算出できる解析法を考案しました。現存生物の遺伝子内にみられる繰り返し配列を利用することによって、新しい指標である現存生物と古代生物の進化距離を算出し、上述の弱点を乗り越えました。その上で、DNAが残存していないため解析が不可能とされていた約25億年前に起こった遺伝情報を取り出す「転写開始システム」の古細菌から真核細胞に至った複雑化の仕組みを明らかにしました。現存生物の生物システムの解析が古代生物の生物システムを推定する唯一の方法でした。今回、解かれることのなかった古代生物の生物システムの分子進化の問題に推定でない確実な解答をもたらすことになりました。

今後、細胞の増殖・分化を支えるさまざまな生命システムがどのように進化してきたかをより幅広く詳細に解析するだけでなく、精巧な生物システムの進化の仕組みの変遷から、人工知能や精密機械の「進化」においても応用可能な情報が得られることが期待されます。              

なお、本成果は高エネルギー加速器研究機構と理化学研究所との共同研究で得られたものです。

「転写システムの起源の謎を意識してから30年が経ちました」と堀越准教授は話します。「今回、約25億年前の古細菌から真核細胞に至る『転写開始システム』の複雑化の仕組みを解き明かしたのは、常に困難な問題に挑戦する意識を持ち、研究を続けてきた結果であると考えています」と述べています。

論文情報

E. Kawakami, N. Adachi, T. Senda and M. Horikoshi, "Leading role of TBP in the establishment of complexity in eukaryotic transcription initiation systems", Cell Reports Online Edition: 2017/12/27 (Japan time), doi:10.1016/j.celrep.2017.12.034.
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