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「生活の質の主観的満足度」と「前頭前野の活性」の関連 近赤外線スペクトロスコピーを用いて明らかに

掲載日:2014年1月27日

近年、疾病の治療や寿命の延長のみではなく、生活の質(QOL)の主観的な満足度の向上が重視されつつある。しかし、主観的なQOLの形成に脳機能がどのように関与しているかは明らかにされていない。

© Yoshihiro Satomura, Kiyoto Kasai. 言語流暢性課題を実施している最中に主観的なQOLの高いグループにおいて高い活性(QOLの満足度と脳の活性の間の統計的に有意な相関)が認められた脳の部位。

東京大学大学院医学系研究科精神医学の笠井清登教授らのグループは主観的なQOLの背景にある神経基盤を明らかにするため、72名の健常者を対象に、52チャンネルの近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて前頭前野の活性と主観的なQOLの関連について調査した。具体的には72名の健常者が、一定の時間内(1分)に提示された条件(例えば「あ」から始まる単語)に合致する単語を挙げている(言語流暢成課題)間の脳の活性を、NIRSを用いて計測した。なお、言語流暢性課題は、人が言葉を処理および出力する能力を測る心理学的なテストである。その結果、主観的なQOLが高い健常者ほど言語流暢性課題中の前頭前野の活性が高いことが示された。また、主観的なQOLのうち身体的領域や社会関係における満足度が、より強く前頭前野の活性と関連していることが明らかになった。

これらの結果は、前頭前野の機能が主観的なQOLの形成において重要な役割を担っていることを示唆している。また、NIRSは簡便で、脳を傷つけることなく外側から計測でき、自然な体勢で脳の活動を計測できる長所をもち、NIRSを用いて得られる脳活動のデータは主観的なQOLの生物学的な指標として利用できる可能性が期待される。

論文情報

Yoshihiro Satomura, Ryu Takizawa, Shinsuke Koike, Shingo Kawasaki, Akihide Kinoshita, Eisuke Sakakibara, Yukika Nishimura, and Kiyoto Kasai,
“Potential biomarker of subjective quality of life: Prefrontal activation measurement by near-infrared spectroscopy”,
Social Neuroscience Online Edition: 03 Dec 2013, doi: 10.1080/17470919.2013.861359.
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