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「磁石でない磁気記録」を可能にする新しい電子スピン配列を発見 磁化を持たない新しい記録材料への可能性

掲載日:2012年6月27日

正四面体上の電子スピン:外向き(A)と内向き(B)の2通りがある

電子は、マイナスの電荷を帯びて自転(スピン)しており、ミクロな磁石としての性質を持っています。電子スピンが同じ向きに並ぶと、その物質は磁石としての性質を持ちます。そのような物質は、磁性材料として実用的に幅広く利用されています。代表的な用途の1つに、ハードディスクなどの磁気記録媒体があります。磁気記録に用いられる材料の電子スピンのN極がどちらを向くかによりデジタル的な0と1を表しています。

今回、理化学研究所放射光科学総合研究センタースピン秩序研究チーム有馬孝尚チームリーダー、東京大学物性研究所山浦淳一助教らを中心とした共同研究グループは人工化合物Cd2Os2O7に注目しました。この物質は、マイナス52℃以下に冷やすと金属から半導体に変化するという面白い性質を持っています。共同研究グループは、この物質の電子スピンが低温になると規則的に並ぶことによって半導体へと変化するのではないかと考え、大型放射光施設SPring-8※2の放射光X線を利用してOs原子の電子スピンの配列を調べました。その結果、金属から半導体への変化と同期して、4つのOs原子が構成する正四面体の電子スピンが、すべて内向き、あるいは外向きに並ぶことを発見しました。この特徴的な配列は、電子スピン同士が磁性を打ち消し合うため物質全体としては磁石の性質を持たず、かつデジタル的な0と1を表現することができることから、強い磁石を近づけてもほとんど影響を受けない、これまでにない新しい特徴を持つ記録材料の可能性があります。

今後、同じ型の電子スピン配列を持つ実用化可能な物質を創出することによって、これまでの磁気記録材料にはない特徴を持つ新しい記録材料の可能性が期待できます。

プレスリリース

論文情報

J. Yamaura, K. Ohgushi, H. Ohsumi, T. Hasegawa, I. Yamauchi, K. Sugimoto, S. Takeshita, A. Tokuda, M. Takata, M. Udagawa, M. Takigawa, H. Harima, T. Arima, and Z. Hiroi,
“Tetrahedral Magnetic Order and the Metal-Insulator Transition in the Pyrochlore Lattice of Cd2Os2O7”,
Physical Review Letters 108, 247205 (2012), doi: 10.1103/PhysRevLett.108.247205.
論文へのリンク

リンク

物性研究所

Xray Laboratory

理化学研究所 放射光科学総合研究センター スピン秩序研究チーム

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