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日本最古、中生代初期の脊椎動物の糞化石を発見 古生代末の大量絶滅の直後、海の生態系が復活した証拠

掲載日:2014年10月15日

古生代と中生代の境界(約2億5200万年前)には、海の生物のうち約95%の種が絶滅し、食物連鎖の構造の複雑さが一度失われたことがわかっている。これまでの研究では、この大量絶滅の後に生態系が完全に回復するには500万年以上を要したと考えられてきた。しかし、大量絶滅の直後にあたる前期三畳紀(~約2億4700万年前)の海の動物については、化石が発見されること自体が稀であり、生物多様性を低く見積もり過ぎた可能性も指摘されている。

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中生代初期の地層から発見されたさまざまな大きさの糞の化石と、そのうちの一つの顕微鏡写真(右上)。脊椎動物の骨が含まれている。
© 2014 Yasuhisa Nakajima

独ボン大学の中島保寿博士研究員と東京大学大学院理学系研究科の泉賢太郎大学院生は、稀にしか発見されない動物の骨などの化石ではなく、より豊富に発見される動物の糞化石を分析することにより、前期三畳紀の海の生態系にはすでに複雑な食物連鎖が回復していたことを明らかにした。

中島博士研究員と泉大学院生は、宮城県南三陸町にある前期三畳紀の海の地層「大沢層」から、糞の化石60点以上を発見した。これらの糞化石は直径数mm~7cmと大小さまざまで、いろいろな大きさの動物たちが排泄したとみられる。またこれらの糞化石を偏光顕微鏡で観察した結果、糞化石の中に脊椎動物の骨が含まれていた。このことから、大量絶滅から500万年の間に、小型の脊椎動物とそれを捕食する高次捕食者、その他一次生産者などからなる複雑な生態系が回復していたことが明らかになった。本研究が示すように、南三陸町など国内のフィールドは過去数億年間の生態系の歴史を解明するための重要な拠点であり、これからも継続的に発掘調査を行っていく必要がある。

プレスリリース

論文情報

Yasuhisa Nakajima, Kentaro Izumi,
“Coprolites from the upper Osawa Formation (upper Spathian), northeastern Japan: Evidence for predation in a marine ecosystem 5 Myr after the end-Permian mass extinction”,
Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology Online Edition: 2014/9/27 (Japan time), doi: 10.1016/j.palaeo.2014.08.014.
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