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うまれつき肝臓に病気があるこどもたちに光明! こどもの肝臓病によるかゆみに有効な薬剤を世界で初めて発見

掲載日:2014年7月16日

患者数が極めて少ないまれな疾患(希少疾患)の1つに、こどもの肝臓に関する病気で、成人前に肝不全となり、死に至る難病があります。この難病は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症と呼ばれる遺伝子の変異が原因となる疾患で、原因遺伝子の違いにより、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型、2型、3型に大別されます。1型、2型の患者は、肝臓の機能の低下に伴う強いかゆみのために、物事に集中できない、夜間深い睡眠をとることができない等、日常生活において悩みを抱えています。

行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型を患っている子供がフェニルブチレートを飲んでいる間とその後のかゆみの程度の推移。かゆみの程度5段階(0:かゆみなし、4:かゆみが原因のひっかき傷や出血あり)で評価。

© 2014 林久允、長谷川泰浩
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型を患っている子供がフェニルブチレートを飲んでいる間とその後のかゆみの程度の推移。かゆみの程度5段階(0:かゆみなし、4:かゆみが原因のひっかき傷や出血あり)で評価。

東京大学大学院薬学系研究科の林久允助教らは、これまでの基礎研究において、尿素サイクル異常症の治療薬であるフェニルブチレートが、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型、2型の患者に有効である可能性を示す結果を得ていました。今回、林助教、直井壯太朗大学院生、楠原洋之教授らの研究グループは、大阪大学医学部附属病院に通院している進行性家族性肝内胆汁うっ滞症1型のこどもたちを対象とした臨床研究を大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座(小児科学)の近藤宏樹助教、長谷川泰浩医員、大薗恵一教授らと共同で実施し、フェニルブチレートには、この病気を原因としたかゆみを改善させる効果があることを発見しました。

進行性家族性肝内胆汁うっ滞症に限らず、肝臓の病気を原因としたかゆみに対する有効な治療法は現在無く、こどもたちの生活の質を低下させる主な要因になっています。従って、本薬剤は、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症のこどもたちをかゆみという悩みから救い出すだけではなく、他の肝臓の病気によるかゆみに対する効果も期待できます。

プレスリリース

論文情報

Yasuhiro Hasegawa, Hisamitsu Hayashi*, Sotaro Naoi, Hiroki Kondou, Kazuhiko Bessho, Koji Igarashi, Kentaro Hanada, Kie Nakao, Takeshi Kimura, Akiko Konishi, Hironori Nagasaka, Yoko Miyoshi, Keiichi Ozono, Hiroyuki Kusuhara,
“Intractable itch relieved by 4-phenylbutyrate therapy in patients with progressive familial intrahepatic cholestasis type 1”,
Orphanet Journal of Rare Diseases Online Edition: 2014/7/15, doi: 10.1186/1750-1172-9-89.
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