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結晶化に伴って粉状の粒子が見せる特異な挙動 粒子間衝突に付随するエネルギー損失の役割

掲載日:2015年10月13日

© 2015 Yuta Komatsu, Hajime Tanaka.乱雑な構造を持つ液体相(明るい色の粒子)と6回対称の秩序を持つ固体相(暗い色の粒子)の共存状態(面積分率=0.74、無次元化した加速度=3.0)を示している。

ゴム球の粉末粒子でみられた液相と固体相が共存した状態
乱雑な構造を持つ液体相(明るい色の粒子)と6回対称の秩序を持つ固体相(暗い色の粒子)の共存状態(面積分率=0.74、無次元化した加速度=3.0)を示している。
© 2015 Yuta Komatsu, Hajime Tanaka.

東京大学生産技術研究所の田中肇教授、同大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程大学院生小松侑太氏の研究グループは、小麦粉や薬の粉などに代表される粉末状粒子の平面内における結晶化について研究を行い、非弾性的なゴム球粒子は、弾性的なスチール球粒子と異なり、液体相と固体相の共存を経て結晶化することを明らかにしました。本知見は、統計物理学に限らず、食品科学、薬品科学の基礎・応用研究に役立つと期待されます。

私たちの身の回りには、砂粒、米粒、錠剤などの様々な粉体が存在します。粉体は外からエネルギーを注入することによって初めて運動することができます。運動している粉末状の粒子が衝突する際、その衝突によって運動エネルギーが大きく失われるゴム球のような非弾性的な粒子と運動エネルギーがほとんど失われないスチール球のような弾性的な粒子とが存在します。しかし、前者のような非弾性的な粉体粒子の自己組織化については、多くの粉体がそのような性質を持つにもかかわらず、理解が進んでいませんでした。

今回、研究グループは上下に振動する2枚の板に粉末状の粒子を2次元的に閉じ込めて、粉末状の粒子がパッキング密度の上昇に伴い結晶化する様子を調べました。粉末状の粒子としては、弾性的な粒子としてスチール球を、非弾性的な粒子としてゴム球を用いました。その結果、両者では結晶化の様式が大きく異なり、ゴム球の粒子は液相と固体相の2相が共存する不連続な転移が起こることを発見しました。また、液相と固体相が共存する状態では、液相の方が固体相より有効温度が高いことが明らかになりました。

「今回、外部からのエネルギー注入により運動する粉体の自己組織化には、粒子間の衝突に伴う運動エネルギーの損失が重要な役割を演じることが示されたと言えます」と田中教授は話します。「また、従来知られている熱平衡系の場合とは全く異なる液相と固体相の共存条件が成り立っていることが明らかになりました」と続けます。

これらの結果は、粉体の集団運動や、生物に代表される自ら動き回る粒子系が自発的に複雑なシステムを形成する自己組織化を理解する上で重要な知見となるものと期待されます。

プレスリリース [PDF]

論文情報

Yuta Komatsu, Hajime Tanaka, "Roles of energy dissipation in a liquid-solid transition of out-of-equilibrium", Physical Review X Online Edition: 2015/08/26 (Japan time), doi:10.1103/PhysRevX.5.031025.
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