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世界初、光捕獲の観測に成功 日独共同チームが、ランダム媒質中での光の局在の観測に成功

掲載日:2012年4月19日

光を捕まえることは、古くから人々の夢でした。ドイツには古くから伝わる「シルダの町の人々」という寓話があります。これは、家に窓を作ることを忘れてしまったために、太陽の光を袋に詰めて、家の中に運んで明かりの代わりにしようとしたがうまくいかなかった、というお話です。光を捕えることができれば、新しい光源やエネルギーとしての利用なども期待されます。しかし、現代においても、熱に変えて吸収させる以外に光を捕獲することは難しい問題です。

ランダムに配列された酸化亜鉛ナノニードルにおける光の局在のイメージ図 c Manfred Mascheck

ランダムに配列された酸化亜鉛ナノニードルにおける光の局在のイメージ図 c Manfred Mascheck

このたび、日独共同チーム(カール・フォン・オシエツキー大学オルデンブルク クリストファー・リノー教授、東京大学大学院工学系研究科 大津元一教授、八井崇准教授ら)は、ランダムに配列された酸化亜鉛ナノニードル(ナノ寸法の針状の構造)を用いて、光の捕獲の様子を実時間で観測することに、世界で初めて成功しました。

ランダムに配列されたナノニードルが光にとっての迷宮として作用し、一度光がこの媒質に入ると外に出るのが難しくなります。しかしながら、この様子を見ることは困難でした。その理由は、光が速過ぎることです。

そこで、同チームは、非常に短い時間に発生する現象を観測可能な顕微鏡の開発に成功しました。この顕微鏡では、数フェムト秒(フェムト秒は1000兆分の1秒)という極端に短い幅を持つ光パルスを使います。このパルス幅が、ナノニードル配列の中に光が捕えられている時間よりも短いので、捕獲の様子を直接観測することができたのです。

今回の発見は純粋な基礎研究ですが、新しい照射装置やレーザなどの光源、太陽光の有効利用に大きく役立つと期待されています。 本研究は、科学技術振興機構の戦略的国際科学技術協力推進事業「日本-ドイツ研究交流」として、ドイツ研究振興協会(DFG)と協力し「ナノエレクトロニクス」分野の研究交流プロジェクト(課題名「近接場光相互作用を介した光励起移動の探求:デバイスと評価」)の一環により、東京大学と独カール・フォン・オシエツキー大学オルデンブルク、独イルミナウ工科大学と共同で進められました。

プレスリリース

論文情報

Manfred Mascheck, Slawa Schmidt, Martin Silies, 八井崇, 北村心, 大津元一, David Leipold, Erich Runge, and Christoph Lienau,
“Observing the localization of light in space and time by ultrafast second harmonic microscopy”,
Nature Photonicsオンライン版 doi: 10.1038/NPHOTON.2012.69.
論文へのリンク

リンク

大学院工学系研究科

大津研究室

八井研究室

カール・フォン・オシエツキー大学オルデンブルク

Research Group ULTRAFAST NANO-OPTICS

独イルミナウ工科大学

Faculty of Mathematics and Natural Sciences Department of Theoretical Physics I

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