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記者会見「玄米の放射性セシウムが1キロ・グラム当たり100ベクレルを超えた地域における稲の「試験作付」推奨に関する提言」記者発表

「玄米の放射性セシウムが1キロ・グラム当たり100ベクレルを超えた地域における稲の『試験作付』推奨に関する提言」

平成24年2月13日

東京大学大学院農学生命科学研究科

農林水産省は、平成23年12月27日に公表した「24年度産稲の作付に関する考え方」において、国の暫定規制値の1キロ・グラム当たり500ベクレルを超えた場合、旧市町村単位で地区全体の作付を制限する方針である、としました。また、今後500ベクレル以下100ベクレル超の場合も、同様の方針が出されることが想定されます。
そのような状況を受け、東京大学大学院農学生命科学研究科は、玄米の放射性セシウムが100ベクレルを超えた地域において、稲の作付規制が実施された場合に生ずる弊害の解決策について提言します。

1.会見日時: 平成24年 2月 13日(月) 16:00 ~ 17:00 

2.会見場所: 東京大学農学部フードサイエンス棟 中島董一郎記念ホール(別添参照)

3.出席者: 
長澤寛道(東京大学大学院農学生命科学研究科長)
中西友子(東京大学大学院農学生命科学研究科放射性同位元素施設 教授)
塩澤 昌(東京大学大学院農学生命科学研究科生物・環境工学専攻 教授)
根本圭介(東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻 教授)

4.発表概要: 
玄米の放射性セシウムが新暫定基準値(1キロ・グラム当たり100ベクレル)を超えた地域において、作付規制として稲の作付がなされない施策が講じられた場合の弊害とは、(1)経年的変化のモニタリングの欠落、(2)水田の荒廃、(3)労働力の劣化 が挙げられ、当該地域の農業復興を断念させるものであると考える。これを解決するために、当該地域を試験的な圃場として作付すべきであると提唱する。その際の通常(商業)作付と試験作付の線引きは、旧市町村単位とせず、地域特性を十分理解している市町村を主体とし、国や農林水産省、大学等が連携すべきであると考える。(また、これらの提案とは別に、保障の問題は従来どおり市町村単位で行われるべきである。)

5.発表内容: 
【背景】 農林水産省は、平成23年12月27日に公表した「24年度産稲の作付に関する考え方」において、国の暫定規制値の1キロ・グラム当たり500ベクレルを超えた場合、旧市町村単位で地区全体の作付を制限する方針である、とした。また、今後500ベクレル以下100ベクレル超の場合も、同様の方針を出しかねない状況下において、作付がなされない場合の弊害の大きさを鑑み、我々は深く憂慮しここに提言を行うものである。

【論点:作付がなされない問題点】 作付がなされないことによる弊害には、(1)経年的変化のモニタリングの欠落、(2)水田の荒廃、(3)労働力の劣化 などの農業上の重大問題があることを改めて問いたい。すなわち作付をしないことは、玄米への放射性セシウム蓄積の年次推移を把握できなくなることを意味する。玄米への放射性セシウム移行が生じるメカニズムを確かめる上でも、また他の23年度に作付を行っていない高濃度汚染地域で作付をした際の予想をする上でも、年次的なデータを継続的に得ることは大変重要である。さらには、作付をしないことにより、稲作環境を荒廃させ、働き手を失うことは論を俟たない。すなわち、当該地域の農業復興を断念させるものである。以上の理由により、作付がなされないような施策は、放射性物質の影響を受けた農業の回復に苦心するわが国の進むべき道に逆行するものであると考える。

【問題点の解決策】 放射性セシウムが玄米から検出されるメカニズムは未だ不明であり、かつ予防策の有効性も不明である状況を考えれば、当該地域での作付を試験的作付と位置づけて推奨すべきである。もちろん、その際の収穫物は流通させない策を講じる必要がある。さらに、実施主体は地域特性を十分理解している市町村とし、モニタリングは、国や農林水産省、さらには我々大学等も連携して取り組むことが肝要である。
試験的に作付を継続することにより、農地における放射性物質動態の科学的解明ならびに汚染低減の予測が可能となる。かつ、収穫物を流通させることなく、水田の荒廃、労働力の劣化を防ぐことができると考える。

6.問い合わせ先:
東京大学大学院農学生命科学研究科 放射性同位元素施設
教授 中西友子

東京大学大学院農学生命科学研究科 放射性同位元素施設
助教 田野井慶太朗

東京大学大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻
教授 根本圭介

7.添付資料:


20120213_01

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