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東京大学先端科学技術研究センター、富士通株式会社、興和株式会社 IT創薬により、がんを標的とする新規活性化合物の創出に成功研究成果

東京大学先端科学技術研究センター、富士通株式会社、興和株式会社
IT創薬により、がんを標的とする新規活性化合物の創出に成功

平成26年8月7日

東京大学先端科学技術研究センター
富士通株式会社
興和株式会社

 

東京大学 先端科学技術研究センター(所在地:東京都目黒区、所長:西村 幸夫、以下、東大先端研)と、富士通株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本 正已、以下、富士通)、興和株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長:三輪 芳弘、以下、興和)は、コンピュータ上で仮想的に設計・評価するIT創薬により、がんの原因となるタンパク質(以下、標的タンパク質)の働きを抑える医薬品の候補となり得る新規活性化合物を創出することに成功しました。
また、本共同研究を通じ、IT創薬による新規活性化合物のほかにも、創薬研究の推進において重要な情報を与える複数の低分子化合物を得ました。今後3者は、前臨床評価(注1)をめざし、これまでの研究で得た低分子化合物の改良を進めることを決定しました。

 

【背景・役割分担】
東大先端研と富士通は、2011年6月にIT創薬の共同研究を開始し、同年7月に、興和が参加しました。
本共同研究では、東大先端研が研究している「疾患を引き起こす原因と考えられるタンパク質の情報」を基に、IT創薬による方法と、従来の低分子創薬技術とコンピュータを用いた低分子化合物探索の併用による方法という2つの方法で、がんを標的疾患とする創薬研究を進めてきました。このうち、IT創薬による方法では、富士通が医薬品の候補となる低分子化合物を設計し、興和が低分子化合物の合成と実験による阻害活性測定を行うという役割を主に担いました。
また、この共同研究の間、富士通は株式会社富士通研究所(本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長:佐相 秀幸)とともに、IT創薬技術の改善を重ね、精度と性能を向上してきました。

 

【これまでの研究成果】
従来の低分子創薬技術では、既存の低分子化合物が蓄積されている、試薬会社が提供する市販の化合物ライブラリなどから、標的タンパク質に対し、ある設定基準以上の阻害活性(注2)を示す低分子化合物を探索します。ヒットした低分子化合物を、医薬候補化合物とするため、新規の化合物構造に改変する必要がありますが、改変に適した低分子化合物が必ずしも得られるとは限らないという課題がありました。本共同研究では、標的タンパク質に対して、医薬候補化合物設計技術(注3)によりコンピュータ上で多様な化合物構造を設計し、高精度活性予測技術(注4)によりそれらの阻害活性を予測して絞り込みます。その後、合成と実験による阻害活性測定を行います。これにより、既知化合物の改変による従来の創薬では得がたい新規の化合物構造であり、かつ阻害活性の高い医薬候補化合物を、高い確率で創出することを目指してきました。
この共同研究において、コンピュータ上で設計した多様な化合物構造の中から、標的タンパク質との相互作用により安定な複合体を形成すると考えられる22の化合物構造を選択し、そのうち8化合物構造を合成し、実験による阻害活性測定を行った結果、そのうちの1低分子化合物が、目標とする阻害活性を示し、新規活性化合物を創出することに成功しました。12.5%という、従来の低分子創薬技術と比べて非常に高い確率で、新規活性化合物を創出したことになります。
東大先端研、富士通、興和は、本共同研究を通じ、IT創薬による新規活性化合物のほかにも、今後の創薬研究の推進において重要な情報を与える複数の低分子化合物を得ました。

 

【今後の共同研究】
東大先端研、富士通、興和は、今後もこれまでの共同研究での協力体制を継続し、早期に前臨床評価を開始することをめざして、前出の複数の化合物を改良していく予定です。


≪共同研究の概要≫
1.期間: 2014年4月から2015年3月
2.体制:
東大先端研… システム生物医学ラボラトリー
富士通……… 未来医療開発センター研究開発統括部 バイオIT開発室
興和………… 医薬事業部東京創薬研究所
3.場所:
東京大学先端科学技術研究センター、同センター内富士通分室、
および興和株式会社東京創薬研究所
4.主な役割分担:
東大先端研… 疾患を引き起こす原因と考えられるタンパク質の情報提供
富士通……… IT創薬による低分子化合物の設計・評価
興和………… 低分子化合物の合成と実験による阻害活性測定、およびコンピュータを用いた低分子化合物探索

以上


【 注釈 】
(注1) 前臨床評価: 新薬開発の段階で、人を対象とする臨床試験の前に行う試験。動物を使って有効性・安全性を調べる。

(注2) 阻害活性: 疾患を引き起こす原因と考えられるタンパク質に化合物が結合し、タンパク質の機能を抑制する度合い。通常、化合物の濃度で表される。
(注3) 医薬候補化合物設計技術: 疾患を引き起こす原因と考えられるタンパク質が機能する部位に結合して、タンパク質の働きを抑える低分子化合物を設計するOPMF(オーピーエムエフ)。富士通が開発。
(注4) 高精度活性予測技術: 分子動力学計算をベースに、医薬候補化合物の阻害活性を実験に匹敵する高い精度で予測するMAPLE CAFEE(メープル カフェ)と、原子間に働く力の精緻なパラメーターを生成するFF-FOM(エフエフフォム)から成る。富士通研究所が開発。

 

【 関連リンク 】
プレスリリース「東京大学 先端科学技術研究センターと富士通 世界に先駆けて実用化を目指す、新しいIT創薬技術の共同研究を開始」(2011年6月10日 発表済み):
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2011/06/10.html

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