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記者会見「東京大学大学院農学生命科学研究科 磯貝 明 教授、齋藤継之 同准教授がアジアで初めてマルクス・ヴァーレンベリ賞を受賞」記者発表

記者会見
「東京大学大学院農学生命科学研究科 磯貝 明 教授、齋藤継之 同准教授がアジアで初めてマルクス・ヴァーレンベリ賞を受賞」

平成27年3月18日

東京大学大学院農学生命科学研究科

 

1.会見日時:平成27年 3月18日(水)14:00~15:00


2.会見場所: 東京大学農学部 弥生講堂アネックス セイホクギャラリー(弥生キャンパス:文京区弥生1-1-1)


3.出席者:
磯貝 明(東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻 教授)
藤原 秀樹(Marcus Wallenberg賞シニアアドバイザー、元・日本製紙株式会社取締役)
Kaj Rosen(Executive Secretary. The Marcus Wallenberg Foundation)


4.発表内容:
東京大学大学院農学生命科学研究科 生物材料科学専攻の磯貝明教授、齋藤継之准教授が、セルロースナノファイバー(注1)のTEMPO触媒酸化(注2)に関する画期的な研究、および木材セルロースからナノフィブリル化セルロース(NFC、注3)を高効率で調製する前処理方法として、この酸化を利用開発した業績により、元・本研究科生物材料科学専攻助教で現在フランス国立科学研究センター植物高分子研究所(CNRS-CERMAV)主任研究員の西山義春博士と共に、アジアで初めてマルクス・ヴァーレンベリ賞を受賞することとなりました。
3名による革新的で独創的な研究業績は、NFCの産業利用にとって画期的な技術となり、また関連研究開発の世界への拡大の先駆けとなりました。NFC生産と新たなNFC含有先端材料の開発が進むことにより、グローバルな森林資源の有効利用と低炭素社会の構築につながる新産業創成に大きく前進することが期待されます。
マルクス・ヴァーレンベリ賞は、森林・木材科学において、重要な基礎研究や利用技術の発展に著しい貢献となる画期的な研究開発を奨励し、促すことを目的とする「森林・木材科学分野のノーベル賞」というべき賞です。1981年に創設され、森林・木材科学分野、関連生物学分野で独創的かつ卓越した研究成果、あるいは実用化に大きく貢献した功績を対象として、ヴァーレンベリ財団が毎年1名もしくは1グループを表彰します。今回の磯貝明教授、齋藤継之准教授、西山義春博士のグループは、アジアから初めての受賞となります。授賞式は2015年9月28~29日に、ノーベル賞の受賞者が宿泊することでも知られるスウェーデン・ストックホルムのグランドホテルにおいて、スウェーデン国王夫妻をお迎えして行われます。なお、賞金は200万スウェーデン・クローナ(日本円で約2800万円:平成27年3月13日時点)です。

マルクス・ヴァーレンベリ賞については、同賞のウェブサイトもご参照ください。
http://mwp.org/
 
注1:セルロースナノファイバー
樹木中のセルロースは、精緻な階層構造を形成して細胞壁を形成しており、大きな樹体を支えています。その最小構成単位である結晶性セルロースミクロフィブリルは、幅がわずか数ナノメートルで長さは数ミクロンと長く、化学的に安定で高強度・高弾性率であり、地球上で最大量のバイオマス由来の再生産可能なナノ素材です。しかし、樹木中のミクロフィブリル間は細胞壁内でお互いに強く結束しており、ミクロフィブリル1本1本を分離して材料利用することは従来できませんでした。しかし、磯貝教授らの研究により、樹木を構成するミクロンレベル幅の繊維をナノレベル幅まで細かくほぐすことで生まれた「新規セルロースナノファイバー」により、最先端のバイオ系ナノ素材として幅広い利用が可能となりました。
例えば、水に分散した本セルロースナノファイバーを成膜すると、透明で強く、熱膨張率の低い安定なフィルムとなります。更にこのフィルムは酸素をほとんど通さず、酸化防止膜として優れた性能を持つことも分かっています

注2:TEMPO触媒
TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)等の安定ニトロキシラジカル種を触媒とする酸化反応(TEMPO触媒酸化)は、多糖の1級水酸基を選択的にカルボキシ基へと酸化することができます。
木材パルプや綿等の天然セルロース繊維にTEMPO触媒酸化を適用すると、ミクロフィブリル表面に露出した1級水酸基(約1.7基/nm2)を選択的に全て、カルボキシ基へと酸化することができます。つまり、TEMPO触媒酸化されたセルロースミクロフィブリル表面は、高密度のカルボキシ基で覆われた状態になります。酸化後はこの表面カルボキシ基が水中で電離するため、ミクロフィブリル間に静電的な斥力及び浸透圧が効果的に作用します。続いてミキサー等による軽微な分散処理を加えれば、幅約3 nmで長さ数ミクロンに達するミクロフィブリル単位(TEMPO酸化セルロースナノファイバー)にまで分離分散することができます。

注3:ナノフィブリル化セルロース
約3nmと超極細幅で長さ数ミクロンに達する、高結晶性、高強度の新規バイオ系ナノ材料です。植物セルロースをTEMPO触媒酸化前処理したのち水中で解繊処理することにより調製できます。


【磯貝明教授の経歴】
略歴
1980年 東京大学農学部林産学科卒業
1985年 東京大学大学院農学系研究科博士課程修了
1985年 Institute of Paper Chemistry 博士研究員
1986年 東京大学農学部助手
1994年 東京大学農学部助教授
1999年 東京大学大学院農学生命科学研究科助教授
2003年 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
受賞歴
1999年 セルロース学会賞
2002年 繊維学会賞
 

【齋藤継之准教授の経歴】
略歴
2003年 東京大学農学部生物環境科学課程卒業
2008年 東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了
2009年 東京大学大学院農学生命科学研究科助教
2012年 スウェーデン王立工科大学 学振海外特別研究員
2013年 東京大学大学院農学生命科学研究科准教授
受賞歴
2008年 東京大学総長賞
2010年 第77回紙パルプ研究発表会 最優秀発表賞
2010年 印刷朝陽会賞
2013年 日本木材学会奨励賞
2013年 The BEPS outstanding young scientist award
 

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