東京大学教職員・学生の手記「東日本大震災を経験してのバリアフリー支援室の取り組み」

東日本大震災 - 東京大学教職員・学生の手記

平成23年3月11日に発生した東日本大震災発生時の様子やその後の行動、対応、感想等を本学関係者に手記として執筆してもらいました。

東日本大震災を経験してのバリアフリー支援室の取り組み

バリアフリー支援室長 丹下 健

 東日本大震災によって、これまで障害のある学生・教職員の日々の修学や就業に対する支援の充実に重点がおかれ、緊急災害時の安全確保に対する意識や備えが不十分であったことを気づかされた。以下に、震災当日の状況とその後の支援室の取り組みについて述べたい。


 震災当日は、本郷と駒場の各支所にスタッフが勤務していたが、障害のある学生・教職員や所属部局からの支援要請等はなかった。障害のある学生・教職員の安否確認は所属部局が行うものであるため、震災発生直後には支援を行っている障害のある学生・教職員に対して避難状況を確認しなかったが、駒場支所では念のため週明けに安否確認を行った。避難時の配慮確認等、支援室が果たすべき役割については今後の課題である。

 平成23年5月に、障害のある学生・教職員に対して、震災当日の避難状況についてアンケート調査を行った。震災当日に学内にいた学生・教職員は回答者の約7割で、そのうちの9割近くが指定避難場所に避難し、8割弱が帰宅せず主に学内に宿泊していたことが明らかになった。避難指示の不徹底など、緊急災害時の対応における問題点も明らかになった。そこで障害のある学生・教職員の緊急災害時の避難マニュアルを作成することとした。

 しかし、支援を行っている学生・教職員は、障害の種別や程度、修学・就業環境も様々であるため、画一的な避難マニュアルを作成することは意味がない。それぞれの状況に合わせた避難マニュアルが必要との認識から、まず障害のある教職員ごとの「緊急災害時における個別マニュアル」の作成を部局に依頼し、支援室もマニュアル構成の提案や避難補助具を用いた避難試行などを通じてその作成に協力することとした。平成24年10月現在で、対象となる教職員の約半数について作成に着手している。個別マニュアルが作成された教職員については、職場の避難訓練の際に個別マニュアルの検証を行ってもらい、その改善に努めている。また、体調管理が難しく医療行為が必要な教職員の緊急災害時の避難について、附属病院や保健センターなどとの連携についても協議を進めている。実際にどのような規模の災害がいつ起きるかはわからず、現在作成している個別マニュアルがどのような災害にも対応できるものではないことも認識している。しかし、緊急災害の場面をシミュレーションして課題を抽出し、避難補助具や人的支援体制などの事前準備を行うことは、緊急災害時の混乱を最小限に抑えることに有効であると考えており、今後、支援を行っている学生に対する個別マニュアルを部局とともに作成していく予定である。


 平成24年3月18日に東京大学バリアフリーシンポジウム「大学の防災とバリアフリー」を開催し、本学の関係者と被災地の大学で聴覚障害学生支援を担当している教員に講演いただき、東日本大震災の教訓をもとに、大学はどのような備えをすべきかを議論した。シンポジウムでは、上記アンケート結果の報告も行った。



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