東京大学教職員・学生の手記「東北大学学生の受入」

東日本大震災 - 東京大学教職員・学生の手記

平成23年3月11日に発生した東日本大震災発生時の様子やその後の行動、対応、感想等を本学関係者に手記として執筆してもらいました。

東北大学学生の受入

理学系研究科 物理学専攻長(当時)早野 龍五

早野龍五が個人的な取り組みとして行なってきた福島原発事故関連の活動については、東大基金のホームページ(研究者インタビュー活動報告)にて報告しておりますので併せて御覧ください。

 理学系研究科物理学専攻では、東日本大震災後ほどなく、東北大学と同大学院の学生の受け入れを決め、2011年4月から東北大学が授業を再開するまでの約一ヶ月間、簡易な手続きで授業の聴講を可能にした。

 この措置により、学部学生28名(理学部物理学科24名、工学部応用物理学科4名)と大学院生11名(理学研究科物理学専攻10名、工学研究科応用物理学専攻1名)が講義を聴講し、東北大学から大いに感謝されたが。また、このことは、一緒に授業を受けた本学の学生にとっても良い刺激になったと思われる。

 以下では、電子メールなどをもとに、当時の様子を振り返る。

4月に授業を開始すべきかどうか

理学部教務委員長より(2011年3月20日)
「総長から、各学部研究科において4月授業開始に支障がないかどうか、意見を求められています。理学部全体の状況を把握するため、物理教室の状況と意見分布を知りたいと思います。余震、停電、交通状況、原発問題を考えると、4月4日のガイダンス、4日からの授業開始をはじめるのかどうか、ご意見をお願いします。」

物理専攻主任(3/20)
「ガイダンス、授業を通常通り始めることに一票。東北大学は4月中は休止と聞いていますが、その間、被災地の学生で東大の授業を聴講したい人には簡単な手続きで許可するなども考えてはと思います。」

早野(3/20)
「東北大学物理の田村専攻長と調整します。」

東北大学物理学専攻長(当時) 田村裕和教授からのメール(3/20)
「早野様、東北大では、仙台は物が不足して住みにくいので、(決して放射線のためではなく)学生には4月下旬まで実家に帰っているようにとの指示が出ています。東京周辺に帰った学生だけでも、興味があれば聴講できる、ということにしてもらえると刺激になってすごくいいと思います。ぜひお願いします。」

4月に授業を開始することを決定

 その後、物理専攻内での議論、理学系研究科長との協議を経て、理学系研究科の授業は予定通り4月に開始することを決定した。夏の電力逼迫が予想される中、授業開始を遅らせて夏学期の終了が8月にずれ込むことは、望ましくないというのが主たる判断要因であった。学生実験を平常通り行うかどうかについてはかなり議論があったが、最終的には実験についても平常通り行うことにした。

東北大学学生の受け入れ手続き

私→東北大学田村専攻長(3/22)
「 学生さんの受け入れについて、 ちょっとお手数かけますが、 聴講を希望する該当する学生のリスト(学部生も大学院生もOK)を作って、私に送っていただけますか。そのリストを公式の依頼文書として扱い、リストにある学生さんの聴講を認めます。
 …
ただ、もし100名も、ということになったら講義室の広さなどを考えると無視できない大きな数ですので、とりあえず各学年の最大人数概算をお送りいただけますか。」

田村専攻長からの返信
「どうもありがとうございます。さっそく学生に声を掛けさせていただきます。
 …
各学年で何人が東京周辺に避難しているかを記録していないのですが、概数では各学年90人のうち20人程度が東京周辺と思われます。これが最大数になると思いますが、実際は半数以下くらいしか来ないと思うので、多くても10人程度と考えています。」

どの科目を受講可能にするか等

 その後、物理専攻教務関係者と、学生実験に東北大学生が参加することは可能か、演習はどうか、などを検討。結局、学生実験は本学の学生の人数でタイトなカリキュラムが組まれているので無理であるが、演習は参加可能ということに決めた。その他の事項としては、

  1. 出席を取る(聴講期間終了後に東北大学に送付)
  2. 図書室、学生談話室、WEBへのアクセスを開放
  3. 大学院生については、研究室の輪講・ゼミへの参加も可能

 などを決めた。

聴講開始

物理学専攻教務係→理学系研究科学務(4/5)
「お世話になっております。物理学専攻教務です。
物理学科・物理学専攻では、震災で被災した東北大学の学生を受入れ、講義の聴講を許可することにいたしました。現在、聴講に来ている学生のリストをお送りいたします。」

 そして2011/4/5に東北大学学生に対するガイダンスを行い、講義聴講を正式に開始した。

終了

東北大学大学院理学研究科物理学専攻 専攻長 石原照也 先生より (4/26)
「このたびは多くの学生、大学院生が貴専攻にお世話になりました。
昨日、我々の大学院のガイダンスが開かれ、そこで何人かの学生と話をしましたが、大変よい刺激を受けよろこんでいました。ありがとうございました。
昨日は不安定な天候でしたが、今日の仙台は暖かく、一部の研究室では花見も計画されているようです。それぞれさまざまなダメージは受けていますが、それはそれで受け止めて、研究活動を続けて行きます。どこも電力事情は厳しく、今後夏場にかけて東大とても研究活動に制限がつくと察します。こちらで何かお手伝いできることがありましたら、ご連絡ください。
今後ともよろしくお願いします。」




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