東京大学教職員・学生の手記「震災後の留学生住居への対応」

東日本大震災 - 東京大学教職員・学生の手記

平成23年3月11日に発生した東日本大震災発生時の様子やその後の行動、対応、感想等を本学関係者に手記として執筆してもらいました。

震災後の留学生住居への対応

医学部附属病院 総務課 庶務担当 佐藤 悠
(当時:本部留学生・外国人研究者支援課)

 平成23年3月11日、学生支援センターは地震のため大きく揺れた。私は上司の指示に従い、留学生を連れて2階の事務室から避難した。恐怖で座り込んでしまう留学生もいたが、最終的には皆、無事に避難することができた。留学生たちにとっては大変な体験だったと思う。

 当時は留学生宿舎の入れ替わりの時期だった。一部の留学生は進学、卒業等で宿舎から退去し、空いた部屋には4月から別の留学生が入居する。新しく宿舎に入るのは4月から日本に来る新規渡日の留学生だが、地震と放射能の影響で留学を取り止めてしまう人が多く、そのため、宿舎もこのままでは4月から空室ばかりになってしまう状況だった。

 私は宿舎の選考を担当していた。宿舎は人気が高いので、補欠選考を行えば空室はすぐに他の入居希望者で埋まる。しかし、補欠選考が遅れると留学生は民間のアパートを契約してしまう(不動産業者等にお金を払ってしまう)ので、空室が出てはすぐに補欠選考を行い、また空室が出てはすぐに補欠選考を行い……と、機敏な対応が求められていた。例年、1~2回程度しか行わない補欠選考を何度も何度も繰り返しているのは、やはり異常な状態だったと思う。そのような状況下だったが、私に異動の辞令が下り、宿舎の補欠選考を何度も行う非常事態は4月から後任に引き継がれることとなった。


本部留学生・外国人研究者支援課 田近 千尋

「東大の留学生の○○さんから家賃が支払われていません。」「××さんはどこにいるんですか?洗濯物も干しっぱなしでポストに郵便物が溢れていますよ。」「地震でマンションの配水管が壊れ、△△さんの部屋が水浸しになりました。連絡を取って下さい。」

――― 4月1日の着任初日から、このような家主や不動産業者からの電話対応に追われる日々が続いた。当課では留学生が賃借する物件契約の連帯保証人を機関保証という形で請負っているため、震災後慌てて母国へ帰国した留学生の退去後の部屋の契約解除、残置物の処分など、多くの手続きを本人に成り代わって行う必要があった。

本人へ確認のため連絡を取ると、「放射能が恐くて地震の日からずっと窓を閉め切っていた。急いで荷物をまとめて帰った。」「震災後一時帰国していたところ、親にもう日本に戻らないで欲しいと懇願された。」こんな声が沢山聞こえてきた。言語的な制約による情報不足、さらに不確かな情報しか拠り所がなかった留学生にとって、震災は精神的にも物理的にも大きな影響を及ぼした。

日本人でも先行きの見えない不安な状況の中、母国を離れ、一人で日本に留学に来ている留学生の気持ちを考えると、何とも表現しがたい気持ちのまま、ひたすら目の前にある仕事を片付けるしかないような毎日で、震災以外の対応も重なり忙しく、昨年度はいつ頃落ち着いたのか思い出すことすらできない。



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