ひょうたん島通信 第6回

ひょうたん島通信 第6回

 岩手県大槌町の大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センターのすぐ目の前に、蓬莱(ほうらい)島という小さな島があります。井上ひさしの人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルともされるこの島は、「ひょうたん島」の愛称で大槌町の人々に親しまれてきました。ひょうたん島から毎月、沿岸センターと大槌町の復興の様子をお届けします。

「ひょうたん島通信 第6回」は、東京大学学内広報NO.1426 (2012.6.25)に掲載されたものです。

インターネットの先にある被災地の日常「ひょうたん島ライブモニタリング」

斎藤 馨(新領域創成科学研究科自然環境学専攻教授)

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沿岸センター屋上に設置されたマイク

 毎日正午、波音に混じって「ひょっこりひょうたん島」の時報放送がインターネットから聞こえてきます。昨年5月に沿岸センターの屋上にマイクを設置して始めた「大槌サウンドスケープ配信」です。震災により浜から離れざるをえない大槌町の方々に原風景である浜の自然の音を届けようと、遠隔地にある森林のライブ音を拾って森の中のようすを観察するわれわれの「サイバーフォレスト研究」を応用したものです。

  マイクを設置した当初は、被災地からは人が少なくなっていましたので、波音やカモメなどの自然音に混じって日中は瓦礫を撤去する重機の音だけが聞こえていました。7月の夜にはシュレーゲルアオガエルの合唱に驚きました。冒頭に記した正午と6時、18時に毎日行われていた時報放送は8月1日に復活しました。また月命日である11日の地震発生時刻には毎月黙祷サイレンが響きわたり、胸が締め付けられる思いでした。そして、被災から1周年にあたる2012年3月11日には赤浜地区で行われたイベントのようすも聞こえ、いまでは早朝に漁船の往来するエンジン音が聞こえるようになっています。このように被災地に思いをめぐらせてライブ音を聞いていると、自然の営みと復興のようすが生々しく伝わってきます。

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大槌川の海鳥たち

  この間に、webカメラと気象センサー(東京大学も参加している「Live E!」により開発されたデジタル百葉箱です)も設置し、音と映像、そして温湿度や雨量風向風速といった気象データからなる大槌の自然環境と復興のようすをライブ配信しながらアーカイブ記録する「ひょうたん島ライブモニタリング」システムの構築を進めています。2012年6月には海中マイクを設置し水中音も配信する予定ですので、ご期待ください。

  「大槌サウンドスケープ配信」と「ひょうたん島ライブモニタリング」を通じて、大槌の日々の自然と復興の気配を遠隔地にいても感じることができます。今後もライブ配信と記録を継続し、被災と復興の営みをわれわれの記憶に残していきたいと考えています。


【かわべコラム】

スポーツの力で日本を元気に!
  ―自由への疾走 Are You Gonna Go My Way―

(かわべコラム)国際沿岸海洋研究センター専門職員・川辺幸一です。2月から大槌町勤務に戻りました。 釜石市から提供を受けた仮設住宅に住み、そこから大槌町中央公民館内にある復興準備室に通勤しています。

 

 大槌町で、5月30日に「チャレンジデー 2012」が開催されました。この「チャレンジデー」、聞きなれない方がほとんどかと思いますが、毎年5月の最終水曜日に世界中で実施されている住民参加型のスポーツイベントです。人口規模がほぼ同じ自治体同士が対戦し、15分間以上継続してさまざまな運動やスポーツをした住民の「参加率」を競い合います。敗れた自治体は、相手自治体の旗を庁舎のメインポールに1週間掲揚し相手の健闘を称える……と、いうものです。

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仮設住宅の前でラジオ体操。参加率としてカウントされます

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ゴミの量と種類により得点を競うスポーツゴミ拾い

  大槌町では2005年より連続してこのイベントを実施してきました。昨年は震災の影響で実施を見送りましたが、今年は初参加の兵庫県神河町と対戦しました。結果は、「大槌町:参加率57.4%、神河町:参加率51.9%」で見事に大槌町の勝利!

  このようなイベントは仮設住宅にお住まいの方々の運動不足解消になりますし、いい交流の機会にもなったのではないでしょうか。今後もこのようなイベントが行われて、町が活気づくきっかけとなればいいですね。

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「ひょうたん島通信」第6回
制作: 大気海洋研究所広報室
掲載: 東京大学学内広報 NO.1426 (2012.6.25)

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