東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙の上部に書名、帯に「独禁法の基本を徹底的に学ぶ」とコメントあり

書籍名

独禁法講義 [第7版]

著者名

白石 忠志

判型など

310ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2014年4月10日

ISBN コード

978-4-641-14465-1

出版社

有斐閣

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

独禁法講義 [第7版]

 本書は、私が東北大学助教授であった時期の米国での研究 (1993~1995年) の成果を活かして、ワープロ文書をA4紙に印刷し3分冊にしたものを1995年に、有斐閣のご厚意により『独禁法講義案』という形で1996年に、それぞれ中間的に作成して授業で使用し、その後、東京大学に移って、1997年10月に初版を刊行したものである。
 その頃からの一貫した理念は、独禁法の基本構造を解明し、それを読者にわかりやすく伝える、ということである。「わかりやすい教科書」を出版することについては批判的な言説に接することも多い。しかし、高度な内容とするためにはどうしてもわかりにくくなる、というのであれば格別、伝え方に問題があるのでわかりにくい、あるいは、本質を把握できていないからわかりにくい、というのであれば、改善すべきである。
 独禁法は、終戦直後に起草した人々が様々な事情に翻弄されながら苦心して作ったせいもあると思うが、物事の本質に関係のないところで複雑怪奇な構造となっており、それをさらに悪化させるような改正も最近になって行われている。複雑で細かいので半可通はかえって容易であるが、構造を本質的に把握しようとする真摯な人々に対しての壁は高い。その壁を少しでも溶かして、独禁法の面白さと重要性を伝えたいというのが、私の願いであった。
 そのような理念によるものであるので、本書の本来のスタイルは、本質に根差した構成とすることを優先し、そこに日本の様々な条文を割り付けていく、というものであった。本質から乖離した構成をとる法律の雑多な条文は、あちこちに分解されて解説されることになる。そうすることで、読者は、基本的な概念を英語に直しさえすれば外国の専門家と会話をできる水準にまで、到達することができる。本書によって救われた、独禁法を捨てずに済んだ、と言ってくださるプロの方々もいらっしゃる。褒め言葉は十分に割り引くとしても、そのような方々の存在は私の誇りとするところである。
 その後、法科大学院制度ができ、独禁法 (経済法) が司法試験科目となったため、日本の独禁法の条文構造に関する解説も、ある程度は詳しく行わざるを得なくなった。世界に通用する本質的な体系と、本質から乖離した日本の法律の構成との狭間において解説するジレンマが、版を重ねるうちに強まってきたのである。
 2017年には、初版刊行後20年を迎える。日本の独禁法の条文にもう少し寄り添うのか、本来の志に忠実に競争法の本質の解説に注力するのか、そのあたりを整理すべき時期を迎えているように感じている。

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 白石 忠志 / 2016)

本の目次

序章
1 違反要件総論
 第1章 違反要件序論
 第2章 弊害要件総論
 第3章 その他の総論的諸問題
 第4章 不正手段
2 日本法の条文に即した違反要件論
 第5章 日本法の違反類型をめぐる総説
 第6章 不当な取引制限
 第7章 私的独占
 第8章 不公正な取引方法
 第9章 事業者団体規制
 第10章 企業結合規制
 第11章 例外的な違反類型
 第12章 適用除外
3 日本法におけるエンフォースメント
 第13章 公取委における事件処理
 第14章 刑罰
 第15章 民事訴訟
 第16章 総合問題
終章