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リネンのようなテクスチャに、青からグレーのグラデーション模様

書籍名

日本人の情報行動 2015

判型など

284ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2016年8月22日

ISBN コード

978-4-13-050190-3

出版社

東京大学出版会

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日本人の情報行動 2015

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東京大学情報学環橋元研究室では1995年以降、5年毎に日本人のメディア利用行動に特化した調査を実施している。全国13歳から69歳の男女が対象で、住民基本台帳に基づいたランダムサンプリングによる訪問留置調査であり、サンプル数は毎回1500前後である。時間量については、複数日を対象として、24時間の行動のすべてを記入する日記式調査に基づいている。生活時間の計測としては、NHKの研究所が1960年代から5年毎に実施している「国民生活時間調査」がよく知られているが、NHKの調査は睡眠や仕事などの生活時間に重点を置いており、メディア利用に関しては、テレビ、ラジオ、新聞など数項目に限定されている。一方、「日本人の情報行動調査」は、マスメディアはもとより、インターネット利用だけをとっても、利用媒体、利用内容ごとに細分化した14項目を設けている。
 
1995年調査から、調査実施毎に『日本人の情報行動 1995』のような形で東京大学出版会から書籍を刊行しており、調査結果とともに、その時折に応じたメディア環境への考察を加えている。今回、2015年調査の結果を中心にまとめたのが『日本人の情報行動 2015』である。
 
本書は2部構成からなり、第1部は2015年調査の結果の概要、第2部は現代における日本のメディア状況や情報行動の変化に関する考察からなる。
 
我々が日本人の情報行動調査を始めてからの20年間は、携帯電話とインターネットの普及により有史以来屈指と言ってけっして過言でないほど、メディア環境が激変した時期である。とくにインターネットは社会、産業、文化等、我々の生活のあらゆる面で、まさしく情報革命と呼びうる大きな影響をもたらし、情報行動の面で言えば、これまでの既存のすべてのメディアのあり方を一変させた。テレビは確かに我々の生活に大きな影響を及ぼしたが、既存メディアとの関係で言えば、新聞や雑誌の発行部数を減らすこともなく、むしろ共存共栄関係にあった。しかし、ネットは、新聞、雑誌に大打撃を与えただけでなく、テレビの視聴時間が減少する大きな要因となった。
 
たとえば我々の調査から具体的な数値を出せば、テレビは40代以下の各年齢層で大きく視聴時間を下げ、とくに20代は1995年の213.8分から2015年には111.3分、10代は183.5分から72.6分へとほぼ半減している。よく「若者のテレビ離れ」と言わるが、我々の調査からはそれが現実であることが如実に示されている。
 
一方、モバイル・デバイスによるインターネットの利用時間は、2000年時点では、まだiモードが始まったばかりで携帯電話でネット契約加入している人もほとんどいなかったが、2015年にはその時間が10代で95.2分、20代で102.4分に達しており、10代ではモバイルネットだけでテレビの視聴時間を超えている。しかも、若年層においては、ネット利用時間の半分以上がSNSに費やされている。この結果、若年層のコミュニケーション様式や主観的世界の構成に大きな変化が現れた。
 
本書は、主に時間量という側面から日本人の情報生活や行動様式・意識が、この20年で大きく変化したことを数値的に裏付けた書籍である。
 

(紹介文執筆者: 情報学環 教授 橋元 良明 / 2016)

本の目次


第1部 日本人の情報行動の現状と変化
0. 「2015年情報行動調査」の概要 (橋元良明)
  0.1 研究の経緯
  0.2 調査の概要
1. 情報行動の全般的傾向 (北村 智、森康 俊、辻 大介)
  1.1 情報行動の概況
  1.2 時間帯別にみた主な情報行動
  1.3 情報機器の所有・利用
  1.4 情報領域と情報源
  1.5 メディアの重要性・有用性認識
  1.6 動画メディアの視聴
2. メディア別にみた情報行動 (橋元良明、河井大介、小笠原盛浩、是永 論、北村 智)
  2.1 インターネット利用
  2.2 テレビとその他の映像メディア
  2.3 その他のメディア利用
  3. ソーシャルメディアと動画サイトの利用 (木村忠正)

第2部 2015年情報行動の諸相
  4 この20年間でのテレビ視聴vs.ネット利用 (橋元良明)
  5 移動と情報行動 (是永 論)
  6 情報行動における年齢・時代・世代効果の検討 (北村 智)
  7 ソーシャルメディア利用と他のネット利用の関連 (河井大介)

第3部 調査票 (単純集計結果)

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