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パープル系の表紙

書籍名

法セミ LAW CLASS シリーズ 医事法講義

著者名

米村 滋人

判型など

384ページ、A5版

言語

日本語

発行年月日

2016年6月

ISBN コード

978-4-535-52175-9

出版社

日本評論社

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医事法講義

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本書は、主として法学部・法科大学院で法学を学ぶ学生を対象に医事法全般に関する解説を行う教科書ないし体系書である。もっとも、最新の立法や判例に関連する問題状況をも広く取り扱っており、現在の法律対応を考える医療関係者にも有益な情報を掲載している。
 
本書は、大きく5章から構成されている。
 
第1章 (医事法総論) では、医事法とは何か、また医事法において問題となる原理や権利・利益は何か、というような一般的法原理に関する事項につき、概括的な解説を行っている。
 
第2章 (医療行政法) では、医師・医療機関と行政 (国・地方公共団体) との関係を中心に、医療に関する行政的規制の問題につき、法令の状況と従来の学説・判例を中心に解説を加えている。具体的には、医師法・医療法の諸制度を中心に解説を行っており、医業独占、医師の応招義務、無診察治療の禁止、異状死体届出義務、医療機関の設備・人員規制、医療計画、医療事故調査など、最近の医療に関する諸問題を踏まえた制度理解や解釈論を提示している。
 
第3章 (一般医療行為法) では、医療行為全般で問題となる民刑事法上の法律関係、特に医療過誤の法律関係につき、学説・判例を中心に詳細な解釈論を展開しつつ解説を行っている。民事医療過誤に関しては、不法行為責任が問題となることが多く、過失、権利・法益侵害、損害、因果関係の各要件論に関連して、医療過誤特有の学説や判例が大きく展開されているため、その内容を網羅的に紹介し、筆者の見解を記載している。刑事医療過誤に関しても、個別要件論に加え、刑事手続によって医療過誤紛争を処理することの適否につき検討を加えている。
 
第4章 (特殊不法行為法) では、一部の特殊な医療分野に関する特別法などの法律関係につき、実際の運用や問題状況を含めた詳細な解説を行っている。具体的には、終末期医療、脳死・臓器移植、精神医療・感染症医療、生殖補助医療、クローン・再生医療の問題を扱っている。臓器移植法や精神保健福祉法など特別法が存在する場合には、それら特別法の内容や解釈論の紹介が中心となっているが、法律が存在しない領域も多く、解釈論としてこれらの医療に固有の規律がどうあるべきかにつき立ち入った検討を行っている。
 
第5章 (その他の諸問題) では、ヒト組織・胚 (生体・死体由来組織を含む) の法的地位、医薬品・医療機器に関する規制、医学研究に関する規制につき、現在の法令の内容や最新の問題状況につき解説を行っている。特に、医学研究規制に関する記述を詳細に行っており、複数の研究倫理指針 (行政指針) の内容を詳しく紹介・検討していることに加え、近時の指針改正や個人情報保護法についても詳細な記述を行っている。
 
総じて、本書は、医事法の基本的な部分から説明を行いながらも、近時の問題状況に対応した最新の法令・判例・行政指針の内容を盛り込み、その適否や残された問題状況等につき詳細な検討を行っている。この点で、他の医事法の教科書類と比較すると情報量が多い一方で、医事法につき知りたいと考えるさまざまな読者層のニーズに応えられる構成となっている。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 米村 滋人 / 2017)

本の目次

第1章 医事法総論
   第1節 医事法の基本的意義
   第2節 医事法の基本思想と法的構造
 
第2章 医療行政法
  第1節 医療従事者法
  第2節 医療機関法
  第3節 医療法上の医療制度・医業類似行為
 
第3章 一般医療行為法
  第1節 医療契約
  第2節 民事医療過誤法
  第3節 刑事医療過誤法
 
第4章 特殊医療行為法
  第1節 終末期医療
  第2節 脳死・臓器移植
  第3節 精神医療・感染症医療
  第4節 生殖補助医療
  第5節 クローン技術規制・再生医療規制
 
第5章 その他の諸問題
  第1節 ヒト組織・胚の法的地位
  第2節 医薬品・医療機器の規制
  第3節 医学研究の規制
 

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