東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙に虹色のサークル模様

書籍名

インターネット・バイ・デザイン 21世紀のスマートな社会・産業インフラの創造

著者名

江﨑 浩

判型など

258ページ、四六判

言語

日本語

発行年月日

2016年6月22日

ISBN コード

978-4-13-063456-4

出版社

東京大学出版会

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インターネット・バイ・デザイン

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IoT、クラウド、ビッグデータから、それらを活用した生産・交通・電力エネルギーなどのシステムまで、インターネットの本質を組み込んだ、社会・産業インフラの未来像を議論しました。
 
「インターネットが進化を続けられる理由は何なのか?」、「そうした技術を活用するならば、生産・交通・電力エネルギーなどのシステムはどのような変貌を遂げるのか?」、本書では、社会・産業のインフラ基盤にインターネットを計画的に組み込むことを「インターネット・バイ・デザイン」と定義し、この基本的な考え方を提示・解説し、サイバー空間と実空間の融合によって、登場する高機能・高効率なインフラの可能性を議論しています。
 
インターネットは、スイッチやルータのようなICT/IT機器がディジタル技術を用いて相互接続されて地球を覆う巨大なコンピュータネットワークですが、本書では、物理的な「インターネット」の概念を超えて、「インターネットのアーキテクチャ」を議論して、インターネットアーキテクチャに基づいた、21世紀の社会経済インフラの設計構築手法として、「インターネット・バイ・デザイン」の概念を議論しました。
 
インターネットは、「グローバル」で、地球上に1つしかないすべての社会・産業活動を支える「共有基盤」です。インターネットが、安価にかつ継続的進化を遂げながらも、現在もなお進化を続けることができているのは、その「透明性 (オープン性と中立性)」、「ラフコンセンサス (おおまかな合意)」、「ベストエフォート (最大限の努力)」と「エンド・ツー・エンド志向」に基づいたシステムの設計 (=デザイン) と構築・運用が実現されていることに起因しています。 「エンド・ツー・エンド志向」とは、知性が必要な高度な処理はネットワークの端 (=エンド) にあるユーザの機器が『自律的に』行い、ネットワークの中にある機器はとても単純な機能のみを行うような構造にすることで、ユーザの機器の性能向上や機能向上によって、持続的な改良とイノベーションを実現しようという考え方でありシステム設計です。
 
さらに、インターネットはディジタル技術をもとに設計・構築されていますが、ディジタル技術の導入は単にシステムのコストダウンに貢献しただけではなく、メディアの抽象化による「媒体からの解放」を実現することで、常に、新しい技術とメディアがインターネット上に登場・展開することを可能にしました。
 
また、インターネットは、意図的に、「動くものを」尊重し、システムを意図的に最適化せずに、「動きながら」修正とイノベーションの適用を可能とすること目指しています。
 

(紹介文執筆者: 情報理工学系研究科 教授 江﨑 浩 / 2019)

本の目次

はじめに

第1章 インターネット・アーキテクチャの考え方を知る
1 インターネットは,どんな特徴を持っていますか?
2 インターネットは電話と比べてなぜ安いのか?
3 インターネットは,なぜ大震災の際に動いたのだろう?
4 インターネットは,なぜ進化を続けられるのだろう?
5 「ガラパゴス・ビジネス」はよいことか?
6 なぜベストエフォートでよいのだろう?
7 エンド・ツー・エンドって,どういう意味?
8 暗号化は何のためにある?
9 インターネットの未来はどうなるのか?
10 インターネットとインターネット・アーキテクチャの違いって何?

第2章 デジタル技術の本質を理解する
1 デジタル化の意味
2 インターネットにおけるパケット通信の仕組み
3 デジタル化の恩恵
4 デジタル化の未来

第3章 インターネット時代の社会・経済を理解する
1 インターネットの誕生と成長
2 情報革命が社会・経済に与えるインパクト
3 インターネットによる技術・ビジネス・インフラの変遷
4 インターネット・バイ・デザインの7つの特徴

第4章 セキュリティとプライバシーを捉え直す
1 セキュリティと安全・安心
2 知的財産をめぐるセキュリティ
3 リスク管理としてのセキュリティ
4 プライバシーのグローバルな認識
5 IoT時代のセキュリティとプライバシー

第5章 インターネットに基づくインフラを設計する
1 社会・産業インフラのスマート化にむけて
2 スマートビル,スマートキャンパス
3 スマートエネルギーシステム
4 IoTによるスマート化の展開
5 インターネット・バイ・デザインの四つの視点

おわりに
 

関連情報

受賞:
2016年度 大川出版賞 (公益財団法人 大川情報通信基金)
http://www.okawa-foundation.or.jp/activities/publications_prize/list.html
 
書評:
日本経済新聞 朝刊 (2016年8月7日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO05770350W6A800C1MY7000/
 

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