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白い表紙に波紋のような模様

書籍名

ライブラリ 経営学コア・テキスト 別巻2 コア・テキスト 経営学キーワード

著者名

高橋 伸夫

判型など

200ページ、A5判、並製

言語

日本語

発行年月日

2021年5月10日

ISBN コード

978-4-88384-329-9

出版社

新世社

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コア・テキスト 経営学キーワード

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新世社のライブラリ「経営学コア・テキスト」シリーズは、2007年に第1巻が刊行されてから、これまでに (2021年5月までに) 計14巻が刊行された。新刊の刊行はまだ続くが、既刊も増刷され、第2版も出始め、真面目に原稿に目を通し、シリーズ全体を編集してきた者としては、肩の荷をやや下ろしつつある。
 
そんなとき出版社から、既刊14巻を網羅したコンパクトなキーワード集の企画が提案された。なるほど、良い企画だと思った。幸い、このシリーズは二色刷りで、キーワードを青色太字で明示している。キーワードを拾うのは簡単だろう……と、手始めに1冊を手に取ってキーワードを拾い始めたが、すぐにあきらめた。キーワードが多すぎて、一つ一つの意味を経営学辞典的に解説していたら、とてもコンパクトには収まらない。へたをすると元の本に近いくらいの分量になってしまう。そして何よりも、キーワードを正確に理解するには、元の本を読むのが一番だという当たり前のことに気がついた。
 
そこで私は考え方を変え、「キーワードだらけの経営学ガイドブック」に「編集」することにした。その際、(a) シリーズ各巻に登場している青色太字で明示されたキーワードを極力全部拾い、(b) キーワードはシリーズ同様に青色太字で示し、人名・会社名は黒色太字にし、(c) 見開き2ページを1テーマとして各テーマ完結の読み切り形式で書く、というルールを自らに課した。そして、既刊14巻分 (総計4200ページ超) を、見開き2ページ x 85テーマにまとめてみた。
 
その結果できたのが本書である。その一番の特徴は、なんといってもその薄さ (!) だ。実質たった170ページしかない。網羅的なキーワード本としては、画期的である。おかげで、古典から最新まで、これだけ大量で多彩なキーワード間の関係がストーリー性をもつようになり、分かりやすくなった。
 
また、書き進めるうちに、公務員試験対策として本書は好適だということにも気が付いた。過去に国家公務員採用I種 (今の総合職) 試験 (経済) の試験専門委員を11年もやっていた経験者としてアドバイスさせてもらうと、公務員試験では、キーワードだらけの文章の正誤をきちんと判断できる力が求められている。その意味では、本書は1冊丸ごと全部が予想試験問題みたいなものである。大学院入試や大学定期試験等の試験対策としても、本書はかなり有効だと思う。
 
そして当然のことだが、これだけまとまった「経営学コア・テキスト」シリーズを要領よく学ぶのに、本書は有用である。見開き2ページ毎についている【参考文献】を見れば、どの巻のどの章に書いてあるのかがすぐ分かり、効率よく関連分野にたどり着ける。興味をもったら、ぜひ元の本の方も読んでほしい。そして、「経営管理・組織」「戦略・マーケティング」「生産・イノベーション」というかなり大括りの分野ですら飛び越えて、一つのキーワードがさまざまな分野で使われていることも知ってほしい。こうしたキーワードが共通語としての役割を果たし、さまざまな分野の研究が互いに触発し合い、融合して、一つの学問体系をなしている。そんな経営学の世界にようこそ。

 

(紹介文執筆者: 経済学研究科・経済学部 教授 高橋 伸夫 / 2021)

本の目次

I 経営管理・組織
  I-1 経営管理
  I-2 会社制度とコーポレート・ガバナンス
  I-3 組織論
  I-4 意思決定
  I-5 組織的意思決定
  I-6 科学的管理法から人間関係論へ
  I-7 組織行動論の系譜
  I-8 人間資源アプローチ
  I-9 欲求説
  I-10 動機づけ衛生理論
  I-11 期待理論
  I-12 過程説
  I-13 内発的動機づけ
  I-14 リーダーシップ
  I-15 リーダー像の変遷
  I-16 人的資源管理
  I-17 モチベーション管理
  I-18 労働条件管理
  I-19 退職管理
  I-20 国際人的資源管理
  I-21 組織学習論
  I-22 学習曲線
  I-23 低次学習・高次学習
  I-24 組織学習のマネジメント
  I-25 組織文化と組織アイデンティティ
  I-26 組織構造
  I-27 組織デザイン
  I-28 トランスナショナル型組織
  I-29 コンティンジェンシー理論
  I-30 組織エコロジー論・制度的同型化
  I-31 資源依存理論
  I-32 取引コスト理論
  I-33 クラスター

II 戦略・マーケティング
  II-1 経営戦略
  II-2 多角化と企業戦略論
  II-3 製品ライフサイクル
  II-4 PPM
  II-5 競争戦略論
  II-6 バリュー・チェーン
  II-7 資源ベース理論(RBV)
  II-8 多国籍企業
  II-9 国際経営
  II-10 海外直接投資論
  II-11 プロダクト・サイクル仮説
  II-12 知財戦略
  II-13 マーケティング
  II-14 マーケティング戦略の立案
  II-15 ブランド戦略
  II-16 消費者行動モデル
  II-17 製品戦略
  II-18 価格戦略
  II-19 プロモーション戦略
  II-20 インターネット時代の広告(プロモーション戦略の続き)
  II-21 流通チャネル
  II-22 流通チャネルの設計と管理
  II-23 メーカー主導の流通チャネル形成
  II-24 マーチャンダイジング
  II-25 小売業態
  II-26 小売業の店舗集積とプラットフォーム
  II-27 卸売業と物流
  II-28 流通チャネルの変化

III 生産・イノベーション
  III-1 生産管理
  III-2 製品・工程マトリックス
  III-3 フォード・システム
  III-4 JIT
  III-5 生産性指標
  III-6 品質
  III-7 品質管理
  III-8 原価管理
  III-9 納期
  III-10 フレキシビリティ
  III-11 サプライヤー・システム
  III-12 サプライ・チェーン
  III-13 イノベーション
  III-14 魔の川,死の谷,ダーウィンの海
  III-15 普及曲線とリード・ユーザー
  III-16 生産性のジレンマ(A-Uモデル)
  III-17 分断的イノベーション(破壊的イノベーション)
  III-18 技術ロードマップ
  III-19 業界標準
  III-20 規格間競争
  III-21 製品アーキテクチャ
  III-22 コンカレント・エンジニアリング
  III-23 アウトソーシング
  III-24 イノベーションの組織

索引

 

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