「元気な日本復活特別枠」要望事業に関するパブリック・コメントへの東京大学としての意見について

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「元気な日本復活特別枠」要望事業に関するパブリック・コメントへの東京大学としての意見について

 

「元気な日本復活特別枠」要望事業に関するパブリック・コメントへの東京大学としての意見について

 

 本学では、今夏に公表された概算要求に関して、基本的な考え方を既に示しているところですが(「平成23年度概算要求・要望の発表を受けて」(平成22年9月21日))、このたび、政府において標記のパブリック・コメントを開始したことを受け、東京大学としての意見を提出・公表することといたしました。

 

 教育研究関係の予算については、文部科学省から10項目がパブリック・コメントの対象となっており、それぞれ大学にとって直接・間接に大切な意義を持つものと受け止めていますが、今般は、国立大学法人としての自らの在り方に鑑み、専ら国立大学を対象に措置され、本学の経営の基盤を支えている事業に焦点をあてて、意見をとりまとめました。

 

平成22年10月5日

 

東京大学総長

濱田 純一

 


(意見提出フォームに記載した内容を以下にまとめましたのでご覧ください。)

 

1.以下の事業について意見提出を行いました(事業ごとに意見書を提出しました)。

事業番号1901 安全で質の高い学校施設の整備 [提出版PDF]

事業番号1904 学習者の視点に立った総合的な学び支援及び「新しい公共」の

          担い手育成プログラム [提出版PDF]

事業番号1905 「強い人材」育成のための大学の機能強化イニシアティブ [提出版PDF]

事業番号1906 成長をけん引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアティブ [提出版PDF]

 

2.(1)~(9)の質問項目には、上の4事業共通で以下のように答えました。

(5択―そう思う、どちらかというとそう思う、どちらともいえない、どちらかというとそう思わない、そう思わない)

  (1)記載された政策目的を実現するために、この事業を実施する必要があると思いますか。

     回答:そう思う

  (2)記載された政策目的に照らして、地方公共団体や民間等に委ねることは難しく、国が率先して行うことが必要だと思いますか。

     回答:そう思う

  (3)限られた予算枠の中で、この事業は、同一分野(関連項目)の他の事業と比べて、優先して実施する必要があると思いますか。

     回答:そう思う

  (4)この事業を実施することを通じて「元気な日本」の復活につながると思いますか。

     回答:そう思う

  (5)この事業に関する「要望概要」の「事業の新規性、見直し内容」の欄に記載されている内容は、評価できるものだと思いますか。

     回答:そう思う

  (6)この事業の手法(事業主体、支出先等)は適切であると思いますか。

     回答:そう思う

  (7)要望額や事業規模は事業内容等からみて適切な(過大ではない)ものだと思いますか。

     回答:そう思う

 

 

3.それぞれの事業に対する評価を自由記述で以下のように述べました。

事業番号1901 安全で質の高い学校施設の整備

○我が国の国際競争力を強化するためには、国内外の優秀な学生や研究者を惹き付ける国際水準の教育研究環境の整備が不可欠であり、施設の耐震化は、そのための当然の前提条件だと考える。

○老朽化し、耐震強度にも問題のある建物の中では安心して教育研究活動に取り組むことができない。施設の耐震化は、多くの人が集まる大学で安心安全に教育研究活動を進める上で必要不可欠である。本学においても、耐震補強の必要な建物が16万m2も残っており、施設の耐震化の予算は必要である。

事業番号1904 学習者の視点に立った総合的な学び支援及び「新しい公共」の

          担い手育成プログラム

○資源の少ない我が国にとって、優れた高等教育を受けた将来を担う人材は、国力の源泉である。OECD諸国をはじめ諸外国が大学等に重点投資を行い、優秀な人材を惹きつけ、育成し、それを国の発展につなげるという政策をとっているが、ひとり我が国だけが投資の削減を続けていたのでは、国際的な競争に打ち勝つことは困難であるのみならず、将来にわたって日本の国力が衰微していくことになる。日本の大学の中核を担う国立大学の授業料免除枠の拡大(国立大学法人運営費交付金)等は、諸外国と比較して決して高くない我が国の高等教育進学率を高める上でも、必要不可欠の事業であり、我が国の発展につながるものである。

○近時、大学への進学や修学に向けた学生・保護者の不安は深刻の度を増している。国際比較の観点からも日本の学生に対する公的な財政的支援は極めて貧弱であり、逆に家計による負担は重く、教育の機会均等は大きく脅かされている。能力と意欲のある若者が経済的な不安なくして大学にアクセスできる社会こそが、今の我が国に求められている。学生の経済状況、居住する地域や、学問分野を問わず、教育の機会均等を確保するため、国立大学の授業料免除枠の拡大(国立大学法人運営費交付金)等をはじめとする経済的支援は、必要な者にしっかりと措置できるように国は責任を果たすべきである。

事業番号1905 「強い人材」育成のための大学の機能強化イニシアティブ

○我が国が持続的に発展していくためには、従来から国立大学が果たしてきた、我が国の知の創造拠点・高度人材育成拠点としての役割(国際競争力の源としてのナショナルセンター機能と、地域社会・経済を支えるリージョナルセンター機能)をさらに強化充実することが必要である。

しかるに、国立大学の基盤を支える運営費交付金は、法人化後6年間で、当初予算ベースで▲830億円(率にして6.7%)もの削減が行われ、本学の場合▲69億円(7.5%)の減となっている。各大学では、このままでは、遠からず教育の質を保つことが難しくなり、学問分野を問わず、基礎研究や萌芽的な研究の芽を潰すだけでなく、地域医療の最後の砦としての機能が破綻するなど、我が国の高等教育・研究の基盤が根底から崩壊し、回復不可能な事態に立ち至ることが危惧される。そのような事態を回避し、我が国の持続的発展を図るため、今回の要望を含め、国立大学法人運営費交付金の拡充をぜひとも実現して頂きたい。

○先進諸国と比較し、高等教育への公財政支出が低い我が国の状況は、若者が将来に希望を持つことを阻害し、我が国の活力を削ぐ結果になっている。また、優秀な日本人の若者の海外流出=頭脳流出を誘発し、長い目で見て我が国の大きな損出となる。将来を担う人材育成や新たな成長分野を支える研究活動など、大学に期待される役割を果たすためにも、大学への投資を拡大して、大学の基盤を強化し活性化することが我が国の成長に不可欠である。

○国際化社会の中で、本学をはじめ日本の大学がもっと国際的に評価されるためには積極的な国際展開が必要である。大学に国内のみならず国外からも人や情報が集まることで、我が国の新たな発展の可能性が生まれる。発展の芽を伸ばし続けるためには、国立大学法人運営費交付金のみならず、各種の拠点形成に向けた投資を重点的に行うべきである。

○拠点形成に関する事業については、昨年の行政刷新会議の仕分けにおいて、グローバルCOE、グローバル30などが大幅に削減されたため、今後の見通しが立てられず、計画の変更も余儀なくされる状態となっている。

 我が国の成長を真剣に考えるのであれば、今回の要望で提案された「博士課程教育リーディングプログラム」や「大学の世界展開力強化事業」など、大学改革を促す取組の支援が非常に重要と考える。

○本学としても「強い人材」を育成する責任を果たしていく決意であり、大学の基盤的経費及び拠点形成に関する経費について、政府の適切な対応を求めたい。

事業番号1906 成長をけん引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアティブ

<科学研究費補助金等>

○我が国の最大の強みは科学・技術である。中でも、ノーベル賞受賞者の受賞のもととなる研究実績は若手時代に行ったものが多く、国はノーベル賞級の研究成果を期待するのであれば、それを根底から支える研究者の研究活動のための経費、特に若手研究人材への投資をより充実すべきである。

○規模・内容を問わず、多くの研究は個々の研究者の地道な努力によって積み上げられたものである。こうした研究者の努力を支える科学研究費補助金の存在は大きく、これをより充実させることが我が国の成長に不可欠である。

○博士課程学生を含む若手研究者への経済的支援は急務である。若手研究者への経済的不安定さが博士課程進学・研究者への断念に繋がっている。将来の我が国を支える若者に活力がなければ、我が国の明るい将来の道筋は描けない。世界に誇れる「元気な日本」の復活には、若者の活力を伸ばす重点投資が必要である。

 

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