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平成28年春の紫綬褒章受章

清木元治名誉教授、永原裕子教授、髙山博教授が、平成28年春の紫綬褒章を受章いたしました。

 

清木元治 医科学研究所 名誉教授

清木元治名誉教授

このたび、清木元治名誉教授が、本年春の紫綬褒章を受章されました。

清木先生は昭和57年からの癌研究会癌研究所における成人T細胞白血病(ATL)の研究で、ATLの原因となるウイルス(HTLV-1) のゲノムを世界で初めて同定し、全遺伝子構造を解読されました。本研究により、ATL患者をウイルスゲノムの検出により確実に診断することが可能となったばかりでなく、疫学研究やウイルス感染から発症までの詳細な基礎及び臨床研究が大きく進展しました。この研究業績に対して、昭和62年日本癌学会奨励賞、同63年国際対がん連合Eleanor Roosevelt International Cancer Fellowship Awardが授与されました。

昭和63年に金沢大学がん研究所教授に着任されてからは、がんの浸潤・転移で要となるプロテアーゼとして膜型マトリックスメタロプロテアーゼ(MT1-MMP)を世界で初めて発見されました。平成9年に東京大学医科学研究所教授に着任後も、MT1-MMPの研究を精力的に実施され、MT1-MMPが浸潤に伴う組織破壊だけでなく、がん細胞の悪性形質を統合的に制御するハブ分子としても働くことを明らかにされています。MT1-MMP発見からの一連の研究業績により、平成16年佐川がん研究振興財団第2回特別賞、同25年日本癌学会吉田富三賞、同26年高松宮妃癌研究基金学術賞を受賞されています。

また、清木先生は日本癌学会を中心としたがん関連学会の運営、日本学術会議会員としての活動、文部科学省科学研究費補助金によるがん研究組織の運営、日本医療研究開発機構による次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラムの運営など、我が国のがん研究の推進に多大な貢献を果たされています。

この度のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生のご健勝と益々のご活躍を祈念しております。

 
(医科学研究所 井上純一郎)

永原裕子 理学系研究科・理学部 教授

永原裕子教授

このたび、永原裕子教授が、本年春の紫綬褒章を受章されました。

永原教授は、初期太陽系における惑星材料物質の進化について、岩石学と鉱物学をベースに、物理過程と化学過程を統合したアプローチで新しい分野を切り開かれました。とりわけ、地球の材料物質と考えられている始源的隕石に含まれるコンドリュールと呼ばれる粒子が瞬間的な加熱によって前駆岩石片が再溶融して形成されたものであること、そしてコンドリュールを取り囲む物質が原始太陽系円盤の始原的物質であることなどを、世界で初めて明らかにしました。また、原始太陽系円盤に近い条件を実験室で再現し、世界に先駆けて鉱物の蒸発・凝縮実験を行うことで、太陽系形成初期に生じたさまざまな物理化学過程を明らかにされました。そして、蒸発・凝縮の際、元素分別はするが同位体分別が生じない特異な元素・同位体分別条件を初めて理論的に見出しました。さらに、晩期星周における惑星材料物質形成において、鉱物の結晶方向による蒸発・凝縮の異方性の存在を初めて明らかにするとともに、鉱物の結晶の形が星周の赤外吸収スペクトルの違いとして反映されることを示し、「宇宙鉱物学」という新分野の創成に大きく貢献しました。

これらの先駆的な研究業績に対し、米国科学アカデミー J. Lawrence Smith Medalを日本人として初めて受賞されたほか、山崎賞、猿橋賞、日本鉱物科学会賞など、国内外の数多くの賞を受賞されています。また、The Meteoritical Society会長を日本人として初めて務められたほか、Geochemical Society及びThe Meteoritical Societyのフェローに選出されるなど、国際的に高い評価を受けておられます。

この度の受章を心よりお慶び申し上げますとともに、今後のご健勝と益々のご活躍をお祈り致します。

 
(大学院理学系研究科・理学部 田近英一)

髙山博 人文社会系研究科・文学部 教授

高山博教授

このたび、大学院人文社会系研究科・文学部(西洋史学研究室)の髙山博教授が、本年春の紫綬褒章を受章されました。

髙山先生は、長年にわたり西洋史学の研究・教育に努め、国際的に高く評価される優れた研究成果をあげるとともに、我が国の西洋史研究の飛躍的な水準向上に大きく貢献してこられました。先生の研究業績は中世のヨーロッパ・地中海の広い領域に及びますが、特に高い評価を得ているのは、ヨーロッパ史研究、ビザンツ史研究、イスラム史研究などの異なる学問領域が交差する中世シチリアに関する研究です。

先生は、1980年代半ばに米国の専門誌に英語論文を発表して国際学界にデビューして以来、アラビア語、ギリシャ語、ラテン語史料の緻密な分析に基づく新しい説を次々と提示し、中世シチリアの歴史を大きく書き換えてきました。中世シチリア王国の行政組織や役人に関する一連の論文・著書は、現在では王国に関する基本文献となっており、英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語の論文・書物で広く利用・参照されています。従来の学説を大きく覆した先生の研究は、今では国際学界の通説となり、王国行政の枠を越えて、南イタリアの領主制・農民研究に大きな影響を与え、イスラムのヨーロッパへの影響という文脈でもしばしば引用・参照されています。これらの業績に対しては、Robert S. Lopez Memorial Prize(エ-ル大学最優秀中世史博士論文賞)、サントリー学芸賞、地中海学会賞、マルコ・ポーロ賞が授与されました。

先生は、多くの国際会議や大学・研究機関に招聘され、欧米の主要な学術雑誌のエディトリアル・ボードに入っておられます。国内においては、西洋中世学会会長、地中海学会事務局長、史学会理事などの要職を歴任され、文部科学省科学官、独立行政法人日本学術振興会学術システム研究センター専門研究員を務めるなど、我が国の学術行政にも貢献されてきました。そして、西洋史学研究室で先生の指導を受けた多くの若手研究者たちが、現在、国内外の研究機関の第一線で活躍しております。

 
(大学院人文社会系研究科・文学部 橋場弦)
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