GX研究

持続可能で包摂的な社会の実現に向けた研究

東京大学では、誰もが尊厳をもって幸せに暮らすことができる持続可能で(sustainable)包摂的な(inclusive)社会を実現する手段として、自然システムの限界を超えないように、公正な移行を前提としながら、社会経済システムを環境再生型(regenerative)なものに変革していくことをグリーントランスフォーメーション(GX)と定義します。中でも、「カーボンニュートラル(炭素中立)」、「ネイチャーポジティブ」、「サーキュラーエコノミー(循環経済)」を最も重要な取組の柱と考えています。
東京大学は、世界最高の教育研究拠点として、国際的なGX先導、基盤的学知の創出、および、カーボンニュートラルキャンパスの実現を通じた未来社会モデルの提示を通じ、GXの推進に貢献して参ります。

国際的なGXの先導

世界の気温上昇を産業革命前の状態から1.5度以下に抑えるには、世界のシステム転換が必要であり、その実現には国家を超えたハイレベルな議論が不可欠です。グローバル・コモンズ・センター(CGC)においては、東京大学が持つ国際的なネットワークを活かした地球規模の課題解決に向けた取組を行い、世界および日本のGXを先導しています。以下、主な取組を紹介します。

グローバル・コモンズ・スチュワードシップ・イニシアティブ

グローバル・コモンズ・スチュワードシップ(GCS)イニシアティブは、プラネタリー・バウンダリーの枠内で持続可能な人類社会を築くことを最終目的として、システム転換の道筋と道具を提示し実践を促進することを目指しています。具体的には、各国がグローバル・コモンズへ与える環境負荷の程度と増減を測る「インデックス(包括的な指標開発)」、今世紀半ばまでに人類社会に必要なシステム転換の経路を示す「モデリング(社会・経済シナリオ分析)」と「社会経済システム転換の促進とモニタリング」、そしてこれらを統合してグローバル・コモンズの管理を実行可能な戦略的枠組みを構想する「フレーミング」という4つのワークストリームから構成されています。さらにGCSイニシアティブを支える基盤の一つである「サイバー空間」に関するワークストリームを設けています。GCSイニシアティブでは、各ワークストリームにおいて、研究と実践の点で世界的に高い実績を有する海外機関との強力なパートナーシップのもと活動を進めています。

ETI-CGC

日本が脱炭素(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現するには、抜本的な経済社会システム転換とそれを支える幅広い議論が必要です。そこで日本企業有志と東京大学グローバル・コモンズ・センターは、2021年11月5日、日本の脱炭素のパスウェイを描く産学連携のプラットフォーム、ETI-CGC(Energy Transition Initiative – Center for Global Commons)を設立しました。ETI-CGCは、次の5つの原則に基づき、推進されます。
1.グローバル・コモンズである地球環境の持続可能性を守る。このため、日本の温室効果ガスの排出を2050年までにネットゼロにする道筋(パスウェイ)を描く。
2.世界や日本における知見及び科学的洞察を基に、カーボンニュートラルを達成し、幸せと豊かさを実現する、地域事情に沿ったパスウェイを模索する。
3.このパスウェイが、多様な地域事情を抱える国々にとっても役立つモデルとなり、世界全体のカーボンニュートラルに貢献することを目指す。
4.パスウェイを実現していく過程は、日本の産業構造、経済社会システムや行動様式を未来に向けて変えていく機会であるととらえ、どのようにその機会を活かすかをも議論していく。
5.関連する政策提言などを行い、日本における議論を広く興すため、リーダーシップを発揮する。

基盤的学知の創出

東京大学は、世界最高の教育研究拠点として、基盤的学知の創出を通じてGXの推進に貢献して参ります。以下、主な取組を紹介します。

気候と社会連携研究機構

気候変動あるいは地球温暖化の問題は、もはや自然科学の枠を超えており、気候変動の理解と予測および生態系への影響評価、将来の社会システム デザイン、気候正義に代表される社会の格差解消、カーボンニュートラルに向けた行動変容など、さまざまなアプローチを包含するトランスフォーマティブサイエンスが求められています。2022年7月に設立された気候と社会連携研究機構(UTCCS)においては、大気海洋研究所、工学系研究科など文理併せて13の部局が参加し、IPCCの部会構成に対応する「地球システム変動研究部門」「生態システム影響研究部門」「人間システム応答研究部門」の3つの研究部門が科学的エビデンスに基づき、気候変動問題を克服する社会の在り方を模索する研究活動を展開しています。

エネルギー総合学連携研究機構

エネルギーに関する諸問題は、我々の生活に大きな影響を及ぼしています。例えば、カーボンニュートラル社会の実現を目指すことが法制化され、再生可能エネルギーの大幅な増加と共に、化石燃料、原子力のみならず、蓄電池、水素、二酸化炭素CO2 )の森林吸収など広範な領域にまたがる学問が必要となっています。また、エネルギー問題を突き詰めると、技術、法制度、経済制度のみならず、根本的には哲学や社会倫理につながっています。2021年7月に発足したエネルギー総合学連携研究機構(CROCES)には文理合わせて10の部局が参加し、「エネルギーシステムに関する研究」「革新的再生可能エネルギーとエネルギー貯蔵に関する研究」「革新的エネルギー変換・輸送・利用とCO2 削減に関する研究」「エネルギー政策・エネルギー経済と地球資源管理に関する研究」「人間の快適性向上のための革新的材料とエネルギー管理に関する研究」の研究開発からエネルギー政策・制度設計に至るまで広範な領域をカバーする5つのテーマで研究を展開しています。

未来戦略LCA連携研究機構

カーボンニュートラルや循環経済の実現など、持続可能な社会の構築のためには技術・システムの大きな変革が求められます。現在、先端科学技術として研究開発されている様々な革新技術は、それらが未来社会に実装されたときのライフサイクル全体での効果を開発段階で定量的に評価し、求められる性能や要件を明確化し、研究開発にフィードバックされる必要があります。2023年4月に発足した未来戦略LCA連携研究機構(UTLCA)においては、学内10部局の先端科学技術研究者とライフサイクルアセスメント(LCA)研究者が集結し、技術を現在社会で評価する既存のLCAを未来社会のデザインに貢献する「先制的LCA」に発展させるべく、革新技術の標準的評価手法の確立や、消費と生産の連携が強化された社会システムの統合的なデザインの研究を通じ、既存の学問分野を超えた新たな学理の確立を目指します。

SDGs登録プロジェクト

国連が掲げる17の持続可能な開発目標に貢献する東京大学の研究プロジェクトを掲載し、研究活動間のシナジーを促進するとともに、これらのプロジェクトが生み出す価値による社会的影響を確保することを目的としています。

カーボンニュートラルキャンパスの実現を通じた未来社会モデルの提示

東京大学は、世界最高の教育研究拠点として、カーボンニュートラルキャンパスの実現を通じた未来社会モデルの提示を通じてGXの推進に貢献して参ります。以下、主な取組を紹介します。

東京大学サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)

東京大学は、教育・研究機関として将来のサステイナブルな社会のモデルをキャンパスから示したいと 2008 年4 月に「東京大学サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP)」を立ち上げ、同年 7 月に総長直轄の専属組織 TSCP 室(現:施設部環境課TSCPチーム)を発足しました。

演習林

農学生命科学研究科の附属施設である演習林は、森林・林業の実践的研究・教育の場として全国7ヵ所に合計約31,000ha(森林面積)の地方演習林を擁している他、森林科学専攻・生圏システム学専攻に協力講座を設置して大学院学生の指導・教育にも活用されています。「科学と社会をつなぐ森」をミッションに掲げ、「100年を超える長期データの蓄積」「地域社会と連携した教育研究の実践」といった強みを活かし、持続可能な木材生産の研究などを通じて東京大学のGXへ挑戦しています。

キャンパスマネジメント研究センター

東京大学のキャンパスの建物群を対象として、施設マネジメント、歴史的空間資源の活用、情報技術の活用を推進する。以下の3つの観点を相互に発展させながら、未来社会に相応しい理想の大学空間の創造を目標として、研究・教育・実践を推進します。
1.ファシリティ・マネジメント(FM)
2.プロパティ・マネジメント(PM)
3.情報マネジメント(IM)

東大グリーンICTプロジェクト

インターネットアーキテクチャに基づいた Society5.0を実現するに資するシステムアーキテクチャ、実装、ならびに実証実験を行います。成果は、関係業界等における標準化・ガイドライン化にも展開します。

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