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113番元素名の「ニホニウム」正式決定にあたって(総長談話) [その他] (広報室)

2016年12月01日掲載

 このたび、森田浩介博士をはじめとする理化学研究所のグループが発見した113番元素の名称が、国際純正応用化学連合(IUPAC)によって「ニホニウム」と正式決定されました。東京大学を代表して、心からお祝いを申し上げます。

 これは、長岡半太郎博士、仁科芳雄博士以来の長年にわたる我が国の原子核物理学研究の賜物であり、我が国の基礎科学と先端技術の先進性の現れでもあります。この素晴らしい成果に、東京大学も量子ビーム加速を通じて貢献させていただきましたが、引き続きこのような学術基盤を担う研究の発展を進めてまいりたいと考えています。

 我が国における元素の発見の歴史は古く、戦前には、本学教養学部の前身である第一高等学校で教鞭をとったこともある小川正孝博士が惜しいところで逃した75番元素の研究がありました。加速器による原子核の研究では、本学の電気工学科を卒業したのち、長岡半太郎博士の下で物理学に転じた仁科芳雄博士らによる60インチサイクロトロンの建設が第2次大戦中も続けられました。その後、戦後に原子核研究が中断した時期を経て東京大学附属原子核研究所(核研)、理化学研究所(理研)などで加速器による原子核実験が行われるようになり、超重元素の探索の機運も研究者たちの間で高まっていきました。
 超重元素を作り出すには、重い原子核を別の原子核にぶつける必要があり、重イオン加速器が必要です。1984年、理研から核研に教授として移った野村亨博士を中心に、GARISという超重元素分離器を製作してのプロジェクトが始まりました。ただ、GARISによる超重元素探索はうまく進みませんでした。
 しかし、ここで歴史の偶然が訪れます。次世代加速器(RIBF)建設のためにGARISの場所を変える必要が生じ、加速されるイオンビームのエネルギーと強度の大幅な向上のため、加速器に6台の装置(IH型キャビティ)が付加されました。その副産物として、超重元素探索に適したビームがGARISに入射されるようになったのです。
 もう一つの偶然も加わりました。それは東大に関わるものです。1997年に、核研を改組する形で、理学系研究科附属の施設として原子核科学研究センター(CNS)が設立され、2000年度に上記の6台の装置のうち4台を東大の予算で設置したのです。この装置導入の当初の目的はRIBFの全体性能の向上でしたが、超重元素探索にもプラスに働くことも予期されていたようです。もちろん東大の寄与だけで実験ができたわけではないものの、この理研と東大の連携がなければデータは取れなかったとは言えるかもしれません。

 日本の物理学の水準は極めて高く、113番元素の発見はその結実の一つです。その源は、常に広い視野と長い時間スケールで研究を進めてきた、厚みのある核物理学の研究コミュニティにあります。性急に成果を求めるのではなく、常に学問の基盤を高め続けることの重要性の証明を、ニホニウムの発見が示しているのです。
 今回の理研の栄誉を心からお祝いするとともに、今後も本学が、我が国さらには世界の学術に大きな貢献を果たすため、いっそうの努力を重ねていく決意を新たにしております。
 
東京大学総長 五神 真

 

対象者: 社会人・一般 / 在学生 / 受験生 / 留学生 / 卒業生 / 企業



東大の予算で設置された重イオンエネルギー増幅装置。理研と東大の連携がなければ貴重なデータは取れなかった、と言えるかもしれません。
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