令和7年度文化勲章受章

令和7年度文化勲章受章

辻 惟雄 名誉教授が、令和7年度文化勲章を受章いたしました。

辻 惟雄 大学院人文社会系研究科・文学部 名誉教授

辻 惟雄 名誉教授

このたび、辻惟雄名誉教授が文化勲章を受章されました。伊藤若冲をはじめ、江戸時代の知られざる画家たちの魅力を世に示した『奇想の系譜』(美術出版社、1970年)は、従来の日本美術史のとらえ方を刷新し、「かざり」「あそび」「アニミズム」をキーワードに日本の美術や文化の特質に迫る見方は、『日本美術の歴史』(東京大学出版会、2005年)に示されるように、独創的かつ説得力に富むものです。

東京大学文学部美学美術史学科を卒業後、同大学院博士課程から助手を経て東京国立文化財研究所に奉職された辻先生は、室町時代後期の絵師、狩野元信の緻密な史料研究を進めました。これは後に博士号を授与された『戦国時代狩野派の研究』(吉川弘文館、1994年)に結実し、近世の画壇を主導した狩野派の成立基盤を明らかにしています。東北大学文学部助教授、教授を経て、1981年、東京大学文学部教授に就任、1992年以降、国際日本文化研究センター教授、千葉市美術館館長、多摩美術大学学長、MIHO MUSEUM館長を歴任、2016年に文化功労者に選出、2017年には朝日賞を受賞されました。

国際的な視野から日本美術史、日本学を再構築したことも特筆すべき業績です。米国のコレクター、ジョー・プライス夫妻と長年の交流を重ねて伊藤若冲研究をリードし、1987年に創設した「日本美術史に関する国際大学院生会議」は国内外の若手研究者を育成する場となっています。また、ボストン美術館における現地作品調査は、辻先生の提唱のもと1991年から30年以上にわたり継続され、『ボストン美術館日本美術総合調査図録』(中央公論美術出版、2022年)に全容が示されました。

辻先生の学問には、過去の権力者たちが構築した文化の主流を把捉する歴史家としての確かな構想力とともに、そこからこぼれ落ちたアウトサイダーたちの創造にも目配りを忘れない、やさしさに満ちた芸術的感性が横たわっています。

辻先生のご受章を心からお慶び申し上げますとともに、ひきつづき日本の文化・芸術・学問の国際的な発展をお導きいただきたく、ご健勝をお祈り申し上げます。

(大学院人文社会系研究科・文学部 髙岸輝)

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