日印交流プラットフォーム構築プログラム(JIEPP)第3回シンポジウム
日印交流プラットフォーム構築プログラム(JIEPP)第3回シンポジウム
産学連携をグローバルに展開するうえで、求められる大学の役割とは何か。
産学連携の発展においても、IT技術開発分野で注目を集めるインドとの連携は欠かせないものとなっています。
このシンポジウムでは、産学連携の現在と将来について、日印交流を軸とした産官学の連携活動を行っている各界の代表者が一堂に会して議論します。
日程 | 2021年3月5日(金) |
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時間 | 13:30~15:20 |
会場 | Zoomウェビナーによるオンライン開催 |
内容 | テーマに関する基調講演/パネルディスカッション |
使用言語 | 日本語(同時通訳あり) |
参加費 | 無料 |
事前登録 | 必要 |
主催 | 文部科学省補助金「大学の世界展開力強化事業」インド(B) 「日印交流プラットフォーム構築プログラム」(JIEPP) |
お問い合わせ | JIEPP事務局(東京大学経営企画部国際戦略課) |
プログラム
相原 博昭(東京大学 大学執行役・副学長、グローバルキャンパス推進本部長)
ご来賓挨拶
吉岡 路(文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室 専門官)
サンジェイ クマール ヴァルマ (駐日インド大使館 大使)
藤井 輝夫(東京大学 社会連携・産学官協創担当理事・副学長)
モデレーター:堀田 昌英(東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
パネリスト:
- 小林 憲枝(長岡技術科学大学 IITM-NUTオフィスコーディネーター)
- 小山 博之(岐阜大学 グローカル推進機構副機構長/地域国際化推進部門長)
- 大谷 利行(松江市産業経済部まつえ産業支援センター長)
- 中村 哲也(日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ 専務・チーフデジタルイノベーションオフィサー)
関村 直人(東京大学 国際担当副学長)
講演者・パネリストのご紹介
東京大学 社会連携・産学官協創担当理事・副学長
長岡技術科学大学 IITM-NUTオフィス コーディネーター
岐阜大学グローカル推進機構・地域国際化部門長
松江市産業経済部まつえ産業支援センター長
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ 専務・チーフデジタルイノベーションオフィサー(CDIO)
第3回シンポジウム開催報告
2021年3月5日(金)13:30に第3回JIEPPシンポジウムが開催されました。第3回シンポジウムは、第1回・第2回シンポジウムでの学びを生かし、日印交流と産学連携に関する議論をより進化させることを目的に行われました。
産学連携に関する多様で先端的なグッドプラクティスの共有によって、日印交流を軸とした産学連携をグローバルに拡大し深化させるうえで求められるプラットフォームの役割に関し意見交換を行いました。
シンポジウムはオンラインで行われ、大学関係者や企業関係者を中心に115名が視聴しました。
総合司会は東京大学工学系研究科の渡邉聡教授が務めました。
相原博昭東京大学大学執行役・副学長/グローバルキャンパス推進本部長による開会挨拶に続き、吉岡路文部科学省高等教育局高等教育企画課国際企画室専門官および、サンジェイ・クマール・ヴァルマ駐日インド大使からご来賓挨拶をいただきました。
講演内容
基調講演
藤井 輝夫(東京大学 社会連携・産学官協創担当理事・副学長)
藤井輝夫東京大学理事・副学長による基調講演では、「東京大学の未来社会協創」と題し、Society 5.0の実現に向け、より良い未来社会創りに貢献することを目的として本学に2017年7月に設置された未来社会協創推進本部(FSI)や、関連プロジェクトの一つとして実施されているOMNIの取組、および企業と未来ビジョンを共有し解くべき問いの段階から共に検討する産学協創の事例が紹介されました。
また、産学協創の重要な取組として、半導体戦略や量子技術戦略等の海外トップ拠点と国内産業界を本学が橋渡しする取組である「UTokyo Gateways」の事例が紹介されました。加えて、特にインドに関連する産学協創の取組として、デジタル技術を活用して社会課題解決を目指す、タタコンサルタンシーサービシズとの連携が詳しく取り上げられました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、まずパネリストが自身の所属先の取組について事例紹介を行い、その後ディスカッションを行いました。
小林氏は、長岡技術科学大学とインド工科大学マドラス校(IITM)と企業の間で締結されている三者間協定によって実務訓練やインターンシップが行われていることや、長岡技術科学大学とIITMの間で行われている博士課程共同指導の取組を紹介しました。
小山氏は、岐阜大学とインド工科大学グワハティ校(IITG)との間で行われているジョイント・ディグリーについて紹介し、それが日印の大学間の緊密な関係形成や、地域経済との連携によって行われていることを紹介しました。
大谷氏は、中村元博士(東京大学名誉教授、インド哲学)が松江市出身という縁から始まったケララ州との留学生受け入れ事業について紹介しました。この取組においては、県境を越えて地理的なつながりのある複数の市が共同して、地元企業や島根大学と連携しながら実施していることを説明しました。
中村氏は、自身が所属するTCSの説明およびTCSと本学との連携について紹介し、そのうえで、インドこそが日本を成長に導くベストパートナーであり、インドについて正確な知識を持って日印が「がっぷり四つに組む」ことが必要であると説明しました。
その後のディスカッションでは、堀田教授から、多様な日印交流の取組がある中で、その協働が可能になるような枠組の構築にはどのような方法があるのかという問題提起がなされました。続けて小山氏からも、多様な取組をどのようにして、どのような方向性でつなげていくのか質問があがりました。これに対し、中村氏から、分野を決めて関わりを深めることや、スピード感の重要性が指摘されました。小林氏からも、インドと日本のスピード感の違いについて説明がありました。そのうえで、インドと日本の相互理解が重要であり、インドの学生に日本を知ってもらうための取組として、日本留学が効果的であることが説明されました。大谷氏からは、インターンシップで来日したインド人学生を受け入れるうえでは、英語力やスピードアップといった日本企業側の変化が必要であるという指摘がありました。
ディスカッションの最後に、連携をよりしやすくするための方策について堀田教授より問いかけがあり、これに対して各パネリストから次のような応答がありました。
小林氏は、今回のシンポジウムが自身にとって有意義であったことに触れ、情報交換の機会を増やすことの重要性を強調しました。小山氏は、大企業との連携のみならず、ファミリービジネスを行っているような経済界の人々とも連携する枠組みを作っていくことが今後は必要と指摘し、それに加えてシンポジウムなどの情報交換の機会を増やすことが重要と述べました。大谷氏は、インターンシップで来日したインド人学生や、島根大学の学生に日印交流の橋渡し役になってほしいという期待を述べました。最後に中村氏からは、現在は日印交流を加速させるフェーズにあるという現状認識を示すとともに、日印間で相互理解を深め、交流を続けていくことが重要と指摘しました。
総括
シンポジウムの最後では、関村直人東京大学副学長から総括がありました。関村副学長は、第1回シンポジウム以降に得たプラットフォーム構築のポイントは、[1]大学の取組を結びつけること、[2]日印の地域を結びつけること、[3]産業界との協力を行うことだと考えており、今回のシンポジウムはこれらの各ポイントのグッドプラクティスや展望を示すものとなったことを説明しました。そして、産業界と大学では重視するものが必ずしも同じではない中で、協力関係を築いていくことが重要と指摘しました。大学としては、多様性の中に普遍性を見出し、知的交流をベースに日印交流を発展させていくことが重要と述べました。
また、今回のシンポジウムでは、コロナ禍にあっても、すでにネットワークを持っている人々同士がオンラインで交流することで、ネットワークのネットワークをつなげることができたと評価しました。そして、ポストコロナの時代にはこうした動きがきわめて重要になっていくので、これを基盤にプラットフォームを発展させていきたい、と期待を述べて総括を締めくくりました。