NO.1433


一般ニュース
01  
秋の紫綬褒章受章
 木畑洋一名誉教授、山下晋司教授、中山信弘名誉教授、濱口宏夫名誉教授、近藤豊教授、福田裕穗教授、笹川千尋名誉教授が、本年秋の紫綬褒章を受章いたしました。

木畑 洋一 名誉教授(大学院総合文化研究科・教養学部)



 木畑洋一名誉教授が、本年秋の紫綬褒章を受章されました。木畑先生は、長年にわたってイギリス及び国際関係を対象とした歴史学の研究、教育に努められ、西洋史、東洋史、日本史の境界を超えた研究の発展に貢献されました。
 木畑先生のご業績の最大の特徴は、イギリス帝国に注目することによって新たな研究領域を開拓された点にあります。イギリスが19 世紀以来大帝国を支配し、幕末・明治以来の日本にも多大の影響を及ぼしたことは言うまでもありません。しかし、このようなイギリスの帝国支配に注目して国際関係を見る視点は、アメリカ合衆国の隆盛と共に忘れ去られた観がありました。この状況に対し木畑先生は、イギリスの文書公開によって豊富に利用できるようになった外交史料を渉猟し、広い範囲にわたる実証的研究を行ってこられました。先生は、帝国支配を当然のこととして受け止める人びとの心性を「帝国意識」として検討し多大な成果を挙げられたのみならず、帝国としてのイギリスと日本との関係の研究によって、諸外国の研究者にも大きな影響を与えてこられました。これらの研究は、イギリス帝国史分野においては、『支配の代償:英帝国の崩壊と「帝国意識」』といった単著、日英関係史の分野においては『日英交流史:1600-2000』という全5 巻の共編著などとして公表されています。先生は、平成9 年には『帝国のたそがれ:冷戦下のイギリスとアジア』に対して大平正芳記念賞を受賞されました。
 木畑先生は、学会において、歴史学研究会委員長、日本歴史学協会会長などの要職を歴任し、その発展に寄与されたのみならず、本学においても、評議員、大学院総合文化研究科長・教養学部長を務められました。学部生の交換留学の推進、英語を教育言語とした授業の導入、韓国や中国との教育交流にも力を尽くされるなど、先生の功績は誠に顕著です。
 この度のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生のご健勝と益々のご活躍を祈念しております。
(大学院総合文化研究科・教養学部 後藤春美)

山下 晋司 大学院総合文化研究科・教養学部教授



 大学院総合文化研究科の山下晋司教授が、本年秋の紫綬褒章を受章されました。山下教授は、文化人類学の分野において長年にわたって教育・研究に努められ、東南アジアおよび東アジア研究の第一人者として、学界および教育界の進歩と発展にひろく貢献なさいました。
 山下教授のご業績の特徴は、東南アジアの宗教/儀礼研究から出発し、東南アジア都市・国家論、移民研究、そして観光人類学というかたちで、常に視点を拡張されてきたという点です。最初の単著にあたる『儀礼の政治学─インドネシア・トラジャの動態的民族誌』では、インドネシア・スラウェシ島トラジャ族の葬送儀礼を精密に分析しつつ、それがインドネシアという近代国家に編成される過程で観光化や民族的な象徴化のダイナミックな過程の中にあることを示し、後進の研究に甚大な影響を与えました。
 こののち、先生のご関心は文化人類学からみた国民国家論へと発展し、『バリ─観光人類学のレッスン』において観光人類学という新たな領域を確立すると同時に、その視座を世界的な移民の動態へと拡大していきます。近年の『観光人類学の挑戦─「新しい地球」の生き方』およびThe Making of Anthropology in East and Southeast Asiaという編著はそうした研究の成果であります。
 山下教授はこれらの業績に対して、澁澤賞、日本文化人類学会賞、米国図書館協会のChoice Outstanding Academic Titlesといった数々の賞を受賞されています。さらに、日本文化人類学会会長、総合観光学会会長代行、American Anthropologist誌の編集委員等さまざまな学術活動に従事されてきました。今日に至るまで急速に変化するアジアおよびグローバル社会の中で、常に新たな道を模索なさっています。
 この度のご受章を心よりお祝い申し上げますと同時に、先生の益々のご活躍を祈念しております。
 (大学院総合文化研究科・教養学部 福島真人)

中山 信弘 名誉教授(大学院法学政治学研究科・法学部)



 中山信弘名誉教授が、知的財産法学の研究におけるご功績により、本年秋の褒章において紫綬褒章を受章されました。中山先生は、非常に新しい分野である知的財産法学の初期からの数少ない研究者として、永年にわたり知的財産法学の教育、研究に努めてこられました。
 日本では知的財産法が無体財産法と呼ばれた時代に、知的財産法学を専攻する指導教授がいない状況で、知的財産法の基本的な問題の一つを「従業者発明における発明者の地位」という論文として発表され、本学の無体財産法講座の初めての教員となられました。体系的研究を進め、その集大成を教科書である『特許法』、『著作権法』として発表されました。また、中山先生は、情報を保護対象とする知的財産法が、技術の発展により必然的に変容していかなければならないことを早くから強く意識され、情報化社会の発展に即した知的財産法学を発展させるべく努力し、『コンピュータ・ソフトウェアの法的保護』を発表されました。技術の発展により生じた著作権法の変容について書かれた『マルチメディアと著作権』では、急速な情報関連技術の発展を踏まえた法律学の研究が評価され、平成9年に第12回電気通信普及財団賞(テレコム賞)、平成11年にTheWorld Technology Award (The World Technology Network)を受賞されました。
 このような業績により、知的財産法学は学問分野として認知され、国家政策の一翼を担うようになりました。政府の審議会委員を務め、わが国の知的財産法の政策立案、立法等に深く関与し、その功績に対して、平成4年に工業所有権制度関係功労者通商産業大臣表彰を、平成17年に産業財産権制度120周年記念内閣総理大臣感謝状を受賞されました。
 以上のように、中山先生はわが国の知的財産法の政策立案、立法等への貢献及び知的財産法学の発展などに尽力され、その功績はまことに顕著なものです。この度のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生のご健勝と今後益々のご活躍を祈念いたします。
(大学院法学政治学研究科・法学部 大渕哲也)

M口 宏夫 名誉教授(大学院理学系研究科・理学部)



 本学名誉教授であるM口宏夫先生が、分子分光学・振動分光学の長年にわたる研究におけるご功績により、紫綬褒章を受章されました。
 振動スペクトルは「分子の指紋」と呼ばれ、分子の構造やダイナミクス、またその分子が置かれた環境に関する詳細な情報を含んでいます。M口宏夫先生は、独自の発想に基づいた新しい振動分光の手法を次々と開発され、分子から生細胞まで、幅広い対象に対して「振動スペクトルで何がどこまで見えるか」という分光学の極限を追求してこられました。
 M口先生の重要な業績の一つは、1980年代初頭から、時間分解分光と振動分光を組み合わせた「ピコ秒時間分解ラマン分光装置」、「ピコ秒2次元マルチプレクスCARS(Coherent anti-Stokes Raman scattering)分光装置」、「ナノ秒時間分解赤外分光装置」などを次々に製作され、振動分光学を先導してきたことです。さらに、新たな時空間分解ラマン分光及びラマンイメージング法を確立して、単一生細胞をあるがままに計測し、細胞の活性を分子レベルで物理化学的に究明する新しい研究領域を開拓しました。生細胞中の活性分子など、それまで観測が不可能であった分子の振動スペクトルを、高い精度で測定し解析する方法論を確立されました。真のin vivo 生体分子可視化技術として、化学、生命科学、医学、工学など広範な分野で、現在も世界から非常に高い注目を集めています。
 このように、M口先生は国際的に顕著な学術的成果をあげられると同時に、現在は台湾国立交通大学理学院講座教授として、分光学の更なる発展にご貢献されています。先生のご健勝と益々のご活躍を祈念するとともに、この度のご受章を心よりお祝い申し上げます。
(大学院理学系研究科・理学部 小澤岳昌)

近藤 豊 大学院理学系研究科・理学部教授



 近藤豊先生が、地球大気環境科学における顕著なご功績により、本年秋の紫綬褒章を受章されました。
 人間活動による地球規模での大気化学組成の変化は、人類の生存環境としての大気の質と地球の気候システムに大きな影響を与えています。近藤先生は永年にわたって先端的な測定手法の開発と独創的なデータ解析により、このような地球大気環境科学の研究・教育の推進に努めてこられました。これらの研究では、近藤先生は一貫して高精度測定の追及という観測の原点に足場を置き、各種の測定器の開発にもとづいて気球、航空機、地上観測を世界各地で実施するとともに、国内外の研究プロジェクトを推進されてこられました。そして成層圏オゾンの破壊メカニズム、対流圏大気の酸化力・大気質の変動要因、気候変動に関わるエアロゾル(微粒子)の動態など、大気環境科学の重要課題の解明に傑出した業績をあげられてきました。
 成層圏オゾン研究では、成層圏全高度での各種の窒素酸化物の直接測定を世界で初めて成功させ、北半球中緯度や北極でのオゾン破壊メカニズムの解明に重要な貢献をされました。また対流圏大気の研究ではアメリカ航空宇宙局(NASA)のグローバル航空機観測プロジェクトにおいて主要な観測を何度も担当され、化学反応系の鍵となる窒素酸化物の収支や反応系全体を統一的に把握する知見を初めて示すなど、画期的な成果をあげられました。さらに地球温暖化効果をもつエアロゾルであるブラックカーボンの測定手法の確立に尽力され、アジアや北極圏でのブラックカーボンの動態を明らかとしてきました。
 これらの研究は国内外で高い評価を受け、日本気象学会賞など国内学会の数々の賞を受賞されるとともに、2009年にはアメリカ地球物理学連合(AGU)のFellowを受賞されています。
 今回のご受章を心よりお喜び申し上げますと共に、今後のますますのご活躍とご健勝を祈念いたします。
(大学院理学系研究科・理学部 小池真)

福田 裕穂 大学院理学系研究科・理学部教授



 大学院理学系研究科生物科学専攻の福田裕穂教授が、長年にわたる植物科学分野の研究・教育・発展への功績により、本年秋の紫綬褒章を受章されました。
 福田教授は、植物科学とくに植物生理学の分野で長年にわたり教育、研究に努め、当分野の発展に貢献されました。福田教授の最大の業績は、植物の組織構築のモデルとして、維管束の形成機構の解明を一貫して進めてきたことにあります。ヒャクニチソウの葉肉細胞から道管細胞に分化するシステムを大学院生時代に確立して以来、一貫して独自の研究手法、技術の開発を行い、独創的な研究成果を発表し続けてきました。最近の顕著な業績としては、秩序だった維管束形成の鍵を握る低分子ペプチドTDIFの発見、その受容体およびシグナル伝達経路の解明や、木部道管分化のマスター遺伝子の発見などが挙げられます。教育面でも、これまでに多くの優れた学生を育てて植物科学分野に送り出してきました。また、基礎科学研究に留まらず、最近では文部科学省のグリーンイノベーション創出事業「グリーン・ネットワーク・オブ・エクセレンス(GRENE)」の一環として「植物CO2資源化研究拠点ネットワーク(NCCARP)」の代表を務め、地球環境問題の解決に植物や微生物を利用するプロジェクトにも精力的に取り組んでいます。実際に、植物細胞壁の形成パターンを決定する4遺伝子の同定に成功するなど、有用植物や植物バイオマスの改良につながる研究への展開も広げています。学界においては、日本植物学会会長、日本学術会議会員を務め、また大学運営においても、評議員、副研究科長を務めるなど、我が国の生命理学におけるリーダーシップを大いに発揮されています。
 これらの業績により、2007年に日本植物細胞分子生物学会学術賞を、2010年に日本植物生理学会学会賞を受賞されました。この度の紫綬褒章の受章を心からお祝い申し上げますと共に、今後ますますのご健勝とご活躍をお祈りいたします。
(大学院理学系研究科・理学部 中野明彦)

笹川 千尋 名誉教授(医科学研究所)



 笹川千尋名誉教授は、医学微生物学、細菌学、感染生物学の発展に尽くした顕著な功績により、秋の紫綬褒章を受章されました。笹川先生は、医学系研究科博士課程修了後から、医科学研究所において研究・教育に努め、平成7年に教授となられ、昨年度末の定年退職まで本学で研究に邁進されました。永年にわたる病原性細菌研究における足跡は非常に目覚ましいものです。
 笹川先生は、高度に進化した細菌の病原性の本質を解明するために、従来の古典的な細菌学に、多岐にわたる学際的な研究手法を世界に先駆けて導入し、病原体と宿主関係を、分子、細胞、組織、個体の多様なレベルで包括的に理解する「感染生物学」の創成に深く貢献されました。分子生物学やバイオインフォマティクスをはじめ、隣接学問領域の多彩な研究手法を縦横に駆使することで、病原細菌に普遍的な原理・現象の解明を可能としたのです。特に、赤痢菌の腸内感染における、細胞侵入、細胞内増殖、細胞間拡散、自然免疫抑制等において多数の発見をし、それらに対応する宿主の生体防御の新たな概念をも提示しました。また、ピロリ菌感染による胃炎、胃癌発症の分子機構の解明も特筆すべき業績です。一連の研究は、細菌の病原性と、その感染部位である消化管粘膜バリアーの概念に数多くのパラダイムシフトをもたらし、国際的にも高く評価され、現在の病原微生物学の世界の潮流の形成の礎となっています。
 平成10年野口英世記念医学賞、平成18年武田医学賞を受賞。国際的一流誌の編集者やアドバイザリーとして活躍し、国内でも学術関連各種専門委員をつとめ、さらに、日本細菌学会理事長、日本微生物学連盟理事長などを歴任されました。学術の発展に尽力されたご功績はまことに顕著なものです。この度のご受章を心よりお祝い申し上げますとともに、先生の今後益々のご健勝とご活躍を祈念いたします。
(医科学研究所 三室仁美)

02  
文化勲章受章
 高階秀爾名誉教授が文化勲章を受章いたしました。

高階 秀爾 名誉教授(大学院人文社会系研究科・文学部)



 今秋、長年の美術評論活動や文化振興への貢献により、高階秀爾名誉教授が文化勲章を受章されました。
 高階先生は、本学大学院修士課程在籍中にフランス政府給費留学生として渡仏、パリ大学付属美術研究所及びルーヴル学院で西洋近代美術史とルネサンス美術史を研究されました。1959年新設の国立西洋美術館に勤務され、美術史家・評論家としてめざましい活動を開始され、71年に東京大学文学部助教授、79年同教授、定年退職後は、92年国立西洋美術館館長、2000年から西洋美術振興財団理事長、02年に現職の大原美術館館長に就任され、また、04年から京都造形芸術大学大学院院長なども歴任されました。
 高階先生のご業績は、第一に、ルネサンス以降の西洋美術史をわかりやすい著作や展覧会の企画監修を通して戦後の日本の社会に広めたこと、第二に、批評の対象でしかなかった日本近代美術を比較美術史の視座に立ち、日本近代美術史として国際的研究の領野に据えたことです。さらに、新聞や雑誌などへの連載を通して、稀有な知性を備えた文化人として美術や音楽の評論や書評に至るまで、幅広い文化の振興に努め、また、若手美術家の登竜門であるVOCA展の実行委員長として、美術家の育成にも熱心に取り組まれています。
 先生には膨大な数の著作があります。その活動により、芸術選奨文部大臣賞(71年)、翻訳文化賞(72年)、フランス 芸術文芸シュヴァリエ勲章(81年)、放送文化賞(88年)、フランス 芸術文芸オフィシエ勲章(89年)、フランス 芸術文芸コマンドール勲章(96年)、明治村賞(97年)、日本文化デザイン大賞(98年)、紫綬褒章(2000年)、フランス レジオン・ドヌール シュヴァリエ勲章(01年)、日本芸術院賞・恩賜賞(02年)、イタリア グランデ・ウフィチャーレ勲章(03年)を受賞され、文化功労者(05年)に選ばれました。
 この度の受章を心よりお祝い申し上げますとともに、益々のご活躍を祈念しております。
 (大学院人文社会系研究科・文学部 小佐野重利)

03  
文化功労者顕彰
 甘利俊一名誉教授、金子宏名誉教授、別府輝彦名誉教授が文化功労者として顕彰されました。

甘利 俊一 名誉教授(大学院工学系研究科・工学部)



 本学の名誉教授である甘利俊一先生が、情報幾何学、数理脳科学などの数理工学の分野における功績により文化功労者として顕彰されました。
 甘利先生は,1958年に本学工学部応用物理学科を卒業、1963年に本学大学院数物系研究科博士課程を修了され、同年に九州大学工学部助教授、1967年に本学工学部助教授、1981年に教授となられ、1996年に退官されるまで工学部計数工学科・大学院工学系研究科計数工学専攻において研究と教育にあたられました。退官後は理化学研究所脳科学総合研究センターで研究を続けられ、センター長を務められた後、脳科学総合研究センター特別顧問に就任されています。
 甘利先生は、1960年代より神経回路網理論について時代を先取りする独創的な研究を行ってこられました。誤差逆伝播学習法の先駆けとなる学習理論、統計神経力学、連想記憶理論など、数理脳科学の多くの基礎理論を確立されています。また、1980年代には、世界に先駆けて情報幾何学を創始されました。情報幾何学は、幾何学と数理統計学とを融合し、確率分布族を多様体としてとらえ、その性質を微分幾何学的手法を用いて研究する独創的な学問です。情報幾何学により双対接続などの従来に無い新しい概念が微分幾何学に導入されました。現在では、情報幾何学は統計科学、数理脳科学、数理計画法、システム理論、情報理論など、数理工学や情報科学の多くの分野において強力な手法となっています。
 これらの業績により甘利先生は日本学士院賞など国内外の多数の賞を受賞されています。このたびの文化功労者顕彰を心よりお祝い申し上げます。
 (大学院情報理工学系研究科・工学部 駒木文保)

金子 宏 名誉教授(大学院法学政治学研究科・法学部)



 金子宏先生が文化功労者として顕彰されました。まことに喜ばしいことです。
 金子先生は本学法学部を1953年に卒業され、法学部助手、助教授を経て、1966年に教授となられ、1991年に本学を退職されました。その後、横浜国立大学教授、学習院大学教授を務められ、現在は東亜大学教授を務めておられます。
 金子先生は、租税法という学問分野の創設者であり、日本の租税法研究における文字通りの第一人者です。現代税制の中心である所得税・法人税の基礎を成す所得概念の研究にすでに1960年代から取りかかり、これを理論的に完成させて、世界的な業績をあげられました。1972年には租税法学会を創立され、初代理事長として研究者相互の交流を促進されました。さらに、私法と租税法の関係を究める卓越した研究を次々と展開され、これらを体系化して立法・裁判・実務をリードされました。とりわけ、制度設計の基礎となる立法政策的な視点を早くから法律学に導入された点は、その後の学界に大きな影響を与えています。
 金子先生は、研究・教育と並び、租税制度の改善のためにも力を尽くされています。長期にわたり税制調査会の審議に参加され、1988年の抜本税制改正の基礎となった答申の作成においても中心的役割を果たされました。他にも、利子所得課税の適正化、移転価格税制の導入、固定資産税の改革、公益法人制度の改革、国際連帯税の提案など、先生のご貢献の例は数え切れません。新興国から税務職員を日本の大学院に招くプログラムの創設を主導されたことも、特筆すべき事実です。
 今回のご顕彰を機に、金子先生は社会全体に対しさらに大きな指導的影響を与えていかれることと信じます。ますますのご健勝とご活躍をお祈り申し上げる次第です。
(大学院法学政治学研究科・法学部 増井良啓)

別府 輝彦 名誉教授(大学院農学生命科学研究科・農学部)



 別府輝彦先生は1961年に本学大学院化学系研究科農芸化学専門課程博士課程修了後ただちに本学農学部助手に着任され、1969年に助教授、1977年に教授に昇任されました。1994年に本学をご退官後、2009年まで日本大学教授を務められました。別府先生はこの間、一貫して発酵学・応用微生物学分野の研究・教育に尽力されました。
 本学における初期の研究活動においては、カビのアロイソクエン酸発酵の発見、コリシン蛋白の作用機作の解明等の新しい成果を挙げられました。研究室を主宰された際には、いち早く遺伝子組換え技術を導入しチーズ製造酵素キモシンの微生物を利用した組換え生産に成功されましたが、これは高等動物遺伝子をクローン化した我が国初の例です。別府先生はさらに、放線菌や酢酸菌等の工業微生物の遺伝学的解析、X線結晶構造解析を利用したタンパク質機能の解明、真核生物の細胞周期を阻害する微生物由来新規生理活性物質の単離と作用機構の解明、共生を基礎とする微生物生態系の解析等、幅広い研究を行い多くの業績を挙げられました。これらの独創的な研究業績により、日本農芸化学会賞、国際微生物学会連合有馬賞、アメリカ工業微生物学会Charles Tom Award、日本学士院賞等を受賞され、2005年には日本学士院会員にも選定されました。また、すでに紫綬褒章、瑞宝重光章を受章されています。別府先生は本学生物生産工学研究センターの初代センター長を務められ、学外においても財団法人バイオインダストリー協会、社団法人日本農芸化学会、日本放線菌学会等の会長を歴任されました。さらに国内外の学術審議会専門委員や国際会議の組織委員・運営委員を数多く務められ、我が国のみならず世界の発酵学・応用微生物学の発展に大きく貢献されました。
 別府先生は2007年度から本年3月まで続いた文部科学省大規模研究開発事業「ターゲットタンパク研究プログラム」のプログラムディレクターを務められるなど現在もお元気で幅広く活躍されています。先生の益々のご健勝を心よりお祈り申し上げます。
 (大学院農学生命科学研究科・農学部 大西康夫)

04 本部環境安全課
「総長による安全衛生パトロール」実施される
 10月30日(火)、駒場Uキャンパスの生産技術研究所、先端科学技術研究センターにおいて、総長による安全衛生パトロールが実施された。総長によるパトロールは、本学の安全衛生に対する姿勢を自ら示すことを目的とし、毎年実施されている。
 当日は、濱田純一総長をはじめ、清水孝雄環境安全担当理事、小島憲道環境安全本部長、長谷川壽一駒場地区事業場長、中埜良昭生産技術研究所所長、中野義昭先端科学技術研究センター所長ほか関係者により、生産技術研究所と先端科学技術研究センターの実験室等10カ所の巡視が行われた。
 担当教員から研究内容の説明を受けた後、実験機器の安全な使用、保護具の着用、薬品の保管状況、ボンベや棚の固定、避難経路等について現状を視察した。
 巡視後、濱田総長から「以前よりも安全衛生に対する意識や体制、設備が改善されてきたと感じる。実験等はリスクが高い印象を受けた。一人ひとりの安全に対する意識が重要であるため、今後もより一層安全教育に力を入れてほしい」との講評がなされた。
 なお、各部局においても部局長による安全衛生パトロールが順次実施されており、安全衛生管理の普及と向上に取り組んでいる。





05 本部学生支援課
第36回東京大学伊豆・戸田マラソン大会が開催される
 11月4日(日)第36回東京大学伊豆・戸田(へだ)マラソン大会が静岡県沼津市戸田で開催された。大会には、本学戸田寮をスタート・ゴールとする42.195kmのフルマラソンと、らららサンビーチをスタートして戸田寮にゴールする23.7kmのハーフマラソンがある。5kmで500mを登る山道を含むなど通常に比べかなりの難コースだが、富士山と駿河湾が織りなす絶景のなかを走ることができるため、例年、参加者から好評を博している。



 当日は晴天に恵まれ、絶好のコンディションの中で開催された。フルマラソンは140名(学生87名、教職員10名、卒業生30名、沼津市在住・在勤者13名)が出走し、127名が完走した。ハーフマラソンでは36名(学生5名、教職員4名、卒業生3名、沼津市在住・在勤者24名)が出走し、全員が完走した。
 フルマラソン個人の部は、前回大会の2位である本学卒業生の千葉公介さんが2時間52分01秒の好タイムで優勝を果たした。また、団体の部では、チーム「Doo-Up A」が優勝となった。
 ハーフマラソンでは、沼津市の菊地貴優さんが優勝し、3位にも沼津市からの参加者が入賞するなど、沼津市からの参加者に活躍が目立った。
 また、本年度は、沼津市との共催として、本学ハーフマラソンと同コースとした、沼津ハーフマラソン(シーサイドラン)23.7kmが設置され、13名の参加者が本学参加者とともに疾走した。
 沿道では、地元の方々からたくさんの暖かい声援があり、閉会式では、同日開催していた戸田地区最大のイベントである「さんさん祭り」会場のステージをお借りしていたことから、選手は式前に漁師なべやお汁粉などの露店で地元の味を堪能することができた。
 閉会式では、総長杯、沼津市長杯等の授与並びに上位入賞者の表彰が行われ、栗原裕康沼津市長からご挨拶をいただいた後、古田元夫運動会理事長から講評をいただき、盛会のうちに終了した。



06 本部総務課
名誉教授懇談会の開催
 11月13日(火)18時から伊藤国際学術研究センターにおいて名誉教授懇談会が開催された。当日は、名誉教授の方々191人がご出席され、学内からは濱田純一総長をはじめ、理事・副学長、監事、各部局長等の関係者多数が出席した。
 懇談会は、濱田総長の挨拶後、平成24年度名誉教授選考委員会委員長の坪井俊数理科学研究科長より名誉教授選考経過報告があり、続いて平成23年度、24年度の名誉教授称号授与者を代表して総合文化研究科の林文代名誉教授の挨拶の後に、佐々木毅名誉教授(元総長)の発声で乾杯があり懇談が開始された。
 終始なごやかな雰囲気で進行した懇談会は、清水孝雄理事・副学長の閉会挨拶をもって散会した。



07 本部人材育成課
東京大学教職員永年勤続者表彰式行われる
 平成24年度の東京大学教職員永年勤続者表彰式が、11月21日(水)9時30分から、小柴ホールにおいて、濱田純一総長、武藤芳照理事、磯田文雄理事、苫米地令副理事、関係部局長および関係事務(部)長等の列席のもと行われた。
 表彰式では、被表彰者105名を代表して、本部保全課長岡野正さんに表彰状の授与並びに記念品が贈呈された。総長からの挨拶の後、被表彰者を代表して、経済学研究科等図書運用係長 西村聡子さんより謝辞が述べられた。



 なお、本年度表彰された方々は次のとおりである。


08 本部入試課
入試事務室の設置
 平成25年度入学者選抜実施に関する事務を処理するため、1月1日(火・祝)から3月31日(日)までの間、入試実施委員会のもとに、入試事務室が設置されることとなった。
 入試事務室は、本部入試課長を室長に、室長代理、室長補佐及び室員若干名をもって構成される。
 室員は、入試課職員のほか、本部各課等から派遣される事務職員で、およそ3か月にわたり、入学試験に関する業務に当たることとなる。


部局ニュース
09 大学院医学系研究科・医学部
研究者公開シンポジウム「愛着と喪失をめぐって」を開催
 9月8日(土)15時30分から、東京千代田区の学術総合センターにおいて、東大こころの発達と障害の教育研究コンソーシアム共催の研究者公開シンポジウム「愛着と喪失Attachment and Lossをめぐって」が開催された。当日は好天の中、日本家族看護学会の会員に加え、本学内外の研究者や学生、臨床家を含め200名ほどの参加者が来場し、立ち見の方も出るほどの盛況ぶりであった。日本家族看護学会第19回学術集会大会長の医学系研究科上別府圭子准教授(当時)が挨拶をし、医学系研究科こころの発達医学の金生由紀子准教授、教育学研究科の多賀厳太郎教授の司会のもと、各研究者の講演が続いた。
 まず、最初に、教育学研究科遠藤利彦准教授より「Bowlbyへの原点回帰が含意するもの」として、現代アタッチメント理論について総論的な講演があり、続いて、理化学研究所 黒田公美ユニットリーダーより、「親に運ばれる時に示す子の協調的反応の神経機構と意義」として、ラットと乳児の輸送反応についての研究が紹介された。次に福井大学 友田明美教授より、「子ども虐待が脳におよぼす影響」として被虐待によるヒトの脳形態/機能の変化についての研究報告があった。最後に、医学系研究科 池田真理助教が「妊婦のアタッチメント・スタイルが産後の精神状態に及ぼす影響」として産後うつ病との関連について研究報告を行った。愛着の理論的な話に始まり、自閉症などの発達障害、虐待、産後うつなどの問題に対し研究者や子育てにかかわる専門家がどう取り組む必要があるかについて議論が広がり、本学のコンソーシアムの特徴を生かした、分野横断的なシンポジウムとなり、盛況のうちに終了した。





10 大学院農学生命科学研究科・農学部
全国大学演習林協議会森林管理技術賞を3職員が受賞
 平成24年度(第14回)全国大学演習林協議会森林管理技術賞を農学生命科学研究科附属演習林の3職員が受賞した。
 全国大学演習林協議会(全演協)は、演習林を持つすべての国立・公立・私立大学が会員となり演習林の教育研究活動の活性化をめざしてさまざまな活動を行っている組織である。全演協では、演習林の技術職員の業務評価と意識向上を目的に「森林管理技術賞」を設け毎年表彰を行っている。
 平成24年度は5月11日に選考が行われ、全国27大学演習林より推薦された候補者から8名の方の受賞が決まった。本学演習林からは北海道演習林の飯沼利雄さんが特別功労賞を、企画部の犬飼浩さんが技術貢献賞を、生態水文学研究所の澤田晴雄さんが学術貢献賞をそれぞれ受賞した。9月20日(木)に京都大学で開催された全演協秋季総会の冒頭、今年度の受賞者の表彰式が行われ、全演協会長より受賞に表彰状と記念品が授与された。



 飯沼さんは、北海道演習林における高密度路網(林道)の開設と維持管理という森林管理の基盤構築に関わる長年の貢献が、犬飼さんは、北海道演習林で天然林に替わる高品質材生産の場として注目されている山火事跡の二次林におけるウダイカンバ育成技術開発への貢献が、澤田さんは、秩父演習林の大面積長期生態系プロットにおけるイヌブナ、ブナなどの生態学的な研究業績が、それぞれ認められての受賞である。
 森林管理技術賞の表彰が始まって14年目であるが、同じ大学から3名の技術職員が同時に受賞するのは初めての快挙で、本学演習林職員の日頃の努力が高く評価されたことは喜びに堪えない。



11 大学院農学生命科学研究科・農学部
第5回アジア大学演習林シンポジウムを開催
 大学院農学生命科学研究科附属演習林主催で、9月26日(水)から30日(日)にかけて、アジア大学演習林コンソーシアムの第5回シンポジウムを開催した。韓国から7名、台湾から7名、インドネシア、マレーシア、タイから各1名の参加があり、本学からは教員18名、学生4名、技術職員5名が、また、山梨県環境研究所から2名が参加した。



 9月27日(木)と28日(金)には、「人間と森林」をテーマに山中寮内藤セミナーハウスで研究報告が行われ、演習林活動、森林管理、気象、水文、生物季節、生物多様性、生物害に関する口頭発表とポスター発表があり、活発な討論が交わされた。また、29日(土)には、山梨県環境科学研究所において県民向けの公開シンポジウム「地域の文化を育む森 新しい森林の価値を求めて」を共同開催した。
 海外からの参加者を中心に27日に富士癒しの森研究所内、29日に山中湖周辺の草山や富士吉田にある環境省生物多様性センター、30日に秩父演習林内の森林の見学も行われ親交を深めた。次回は、ソウル大学の主催で韓国において開催すること、2014年にアメリカ・ソルトレイクシティで開催されるIUFRO世界大会においても、関連集会を開くことが決まった。



12 大学院工学系研究科・工学部
「第8回全日本学生室内飛行ロボットコンテスト」で東大チーム優勝
 日本航空宇宙学会主催の第8回全日本学生室内飛行ロボットコンテストが10月13日(土)、14日(日)にポートメッセ名古屋で開催され、工学系のチームが製作した「FLEMING」が優勝し55チームの頂点に立った。東大チームの優勝は第1回大会以来2度目。



 工学系研究科国際工学教育推進機構バイリンガルキャンパスセンターは、創造性ものづくり教育(学部)、創造性工学教育(大学院)として学年や学科の枠を超えて学生たちが学びあう少人数形式の演習科目を共通科目として開講している。優勝した「FLEMING」はその一つ「飛行ロボットプロジェクト」から生まれた。
 今期このプロジェクトには航空宇宙工学、精密工学、機械工学の学生23人が参加し、4つのチームに分かれて標記コンテストのレギュレーションにかなう機体を製作。学年も学部3年生から博士課程2年生と幅広く、中国やフィンランドからの留学生も参加した。多様な知識と文化的背景を持った学生たちが目標を共有することで、チームワークやマネージメントの重要性を認識できた。また設計、製作、飛行試験、再製作といったPDCAサイクルを通して「ものづくり」の難しさや楽しさも実感した。
 本プロジェクトでは学期最後の学内コンペで全国大会出場の2機を選考した。出場が決まったチームは夏休み返上で試験飛行と機体の改良を行った。



 大会初日「FLEMING」は被災地への物資投下などのミッションを高い精度でこなし、自動制御よる飛行も成功させて高得点をマーク。もう一機の「欣(きん)」も手堅くミッションをこなし予選を通過した。「FLEMING」は予選での高得点が優勝につながった。



 本プロジェクトでは大会出場の有無に関わらず、初めての離陸や自動制御成功の感動をチームで共有できた。優勝チームの留学生は「人生で初めて日本人の友達と一緒に優勝を目指し楽しかった。」と語った。
大会HP:http://flyingrobot.t.u-tokyo.ac.jp/

13 生産技術研究所
「駒場リサーチキャンパス外国人研究者・留学生との懇談会」開催!
 10月25日(木)15時30分より、駒場リサーチキャンパスのユニバーシティ広場において、外国人研究者、留学生と教職員、日本人学生等との国際交流の促進を目的とした「駒場リサーチキャンパス外国人研究者・留学生との懇談会」が開催された。
 今回も、昨年度に引き続き、生産技術研究所と先端科学技術研究センターが主催となり、駒場リサーチキャンパスに集う全員のための懇談会として開催され、生研、先端研のメンバーからなる実行委員会の企画のもと、100人以上のスタッフ、ボランティアの協力により運営、実施された。当日は午前中に小雨がぱらついたが、午後にはすっかり晴れ渡り、15時30分、生産技術研究所の中埜良昭所長による開会の辞により晴れやかな開会となった。
 例年どおり、屋台形式による国際色豊かな各国料理が提供され、中国(2屋台)、韓国、インド、スリランカ、フランス、パキスタン、アジア地域(フィリピン・パキスタン・中国・日本の合同屋台)の8屋台に加え、事務部からも1屋台が加わり、計9屋台が会場をとり囲み、来場者に料理を振る舞った。
 各屋台の料理は長蛇の列ができる人気で、広場の随所で、一味違う本場の味を楽しみながら、国や地域、研究分野、世代を超えた語らいの輪が広がった。
 また、今回はアトラクションとして、有志によるアコーディオン、バイオリンの演奏が行われ、懇談会に華を添えた。「ポルカ」の演奏に引き続き、アコーディオン、バイオリンの伴奏による合唱「オー・シャンゼリゼ」、東京大学応援歌「ただ一つ」の歌声が会場に響き渡った。
 17時30分、先端科学技術研究センターの中野義昭所長による閉会の辞をもって、今後の駒場リサーチキャンパスの発展を祈念し、暮れゆく秋空のもと名残を惜しみつつ閉会した。参加人数は700名を超え大盛況の会であった。





14 大学院医学系研究科・医学部
医学部解剖体慰霊祭が行われる
 10月26日(金)14時から、台東区谷中の天王寺において平成24年度医学部解剖体慰霊祭(解剖体数 190柱)が、ご遺族約140名、医学部関係教職員約40名及びこの春教養学部より進学し、初めて解剖実習に臨んだ医学科3年の学生など約120名の合計約300名参列のもとに執り行われた。
 本慰霊祭は、ご遺体の解剖により医学教育と医学の進歩発展に尽くしていただいた方々の御霊に感謝し、お慰めするため、ご遺族をはじめご縁故深い方々のご臨席を得て毎年実施されているものである。
 住職以下7名の僧侶による読経が境内に流れた後、宮園浩平医学部長による祭文の朗読、焼香が行われ、ご遺族代表、教職員総代、来賓代表の焼香と続いた。学生代表として、医学科3年の都築和弥さんの焼香に続き、参列者全員が焼香を行った。
 本堂における行事を終えた後、千人塚において僧侶による読経が行われ、隣接する医学部納骨堂での焼香を行い散会した。



15 柏キャンパス・リエゾン室
柏キャンパス一般公開開催
 今年は「知の魅力―科学っておもしろいー」をテーマに、10月26日(金)、27日(土)の両日にわたり、柏キャンパス(大学院新領域創成科学研究科、宇宙線研究所、物性研究所、大気海洋研究所、人工物工学研究センター、空間情報科学研究センター、情報基盤センター、国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構、高齢社会総合研究機構、環境安全研究センター柏支所、国際センター柏オフィス、柏図書館)及び柏Uキャンパス(生涯スポーツ健康科学研究センター)において一般公開が開催された。昨年度一部が柏キャンパスへ移転した情報基盤センターは、今回初めての参加となった。
 キャンパスとして特別講演会やスタンプラリーを開催したのをはじめ、各部局とも、日頃の研究成果の紹介、実験や体験コーナー、ガイドツアー等それぞれ特色ある催しが行われた。
 今回初めて来場者の自動車入構規制を実施したが、無料シャトルバスの利用や自転車での入構等により、混乱もなく両日とも大盛況であった。2日間を通して、昨年より2割増の、7,000名を超える来場者が訪れ、地域に開かれたキャンパスの雰囲気が存分に感じられた。



16 大学院教育学研究科・教育学部
留学生修学旅行で日本文化を満喫
 大学院教育学研究科・教育学部では、10月31日(水)に恒例の秋の留学生修学旅行を実施した。今年度は東京都内で日本文化に触れる日帰り旅行で、参加者は留学生18名、日本人学生チューター3名、李正連准教授(国際交流委員会副委員長)をはじめとする引率の教職員8名の計29名であった。
 朝8時に貸し切りバスで本郷キャンパスを出発し、秋空の下、最初の目的地である墨田区のアトリエ創藝館へ向かった。車中は森田賢治講師(国際交流委員会委員)の司会で進み、李准教授による挨拶に続き、参加者全員が挨拶・自己紹介を行った。
 8時30分頃に江戸文字提灯作りを行う体験工房に到着。墨田区と江戸文字の歴史について説明を受けた後、江戸文字提灯作りに取りかかった。文字の形をとる為に、習字と違い何度も塗り直す行程が特徴であるが、慎重に筆を進める学生、大胆に書き上げる学生と様々で、全員が真剣な表情で一文字と向き合い、一時間余り掛けてオリジナルの提灯が完成した。



 その後、江戸東京博物館へ移動。実物大(復元)の芝居小屋や江戸の町並みのジオラマなどで江戸東京の都市と文化を体感した。昼食は両国の町中にある店で和食を楽しんだ。午前中の日本文化体験による興奮に包まれ、参加学生と教職員が打ち解けた雰囲気の中で昼食を取りながら交流が進んだ。


 昼食の後は中央区の日本銀行を見学。見学の後は隅田川を上るクルーズ船から東京の町を眺め、専攻を越えて楽しく会話も弾み、午後のひとときを満喫した。
 浅草で船を降り、最終目的地であるかっぱ橋道具街へ移動。食品サンプルを前に写真を撮ったり、精巧な作りに見入って話したりしながら過ごした。
 17時半前にバスで本郷キャンパスに到着し、無事解散となった。あっという間の一日に学生達は名残惜しそうではあったが、皆充実した表情で旅を終えた。普段は触れる機会の少ない日本文化を存分に満喫すると共に、学生同士、また教職員とも親交を深めることができ、大変有意義な留学生修学旅行であった。



17 医科学研究所
濱田総長、医科学研究所奄美病害動物研究施設を視察
 11月6日(火)、濱田純一総長が鹿児島県奄美大島にある奄美病害動物研究施設を視察された。医科学研究所からは三宅健介副所長、甲斐知恵子施設長、服部正策准教授、諸田清事務部長、松井潤一管理課長らが同行した。
 奄美病害動物研究施設は、本学の施設の中では最南端に位置しており、奄美大島出張所から数えて110年、現在の施設として改組されてからも既に35年にわたって、本地域に多発した寄生虫病などの熱帯病や蛇毒に対する研究に取り組んでいる。加えて近年では、奄美大島の気候を利用した霊長類実験動物の飼育繁殖および霊長類を用いた感染症制圧研究を推進している。全国的にも霊長類用医学実験を行える環境を持つ大学は数少ないため、全学共同研究拠点事業として、多数の大学から共同研究依頼も受け入れている。濱田総長は直接ハブにも触れ、最新機器を備えた霊長類感染実験室も視察した。また、限られた時間ながら珊瑚の砂浜を散策し、マングローブの林など固有動植物種が多く生息する奄美大島特有の自然環境も体感した。濱田総長の視察の機会を得たことは、全学的な共同研究推進を目指す本施設として非常に有意義なことであった。





18 医科学研究所
医科学研究所で動物慰霊祭行われる
 医科学研究所動物慰霊碑前において、11月8日(木)11時から動物慰霊祭が執り行われた。医科学研究所では、数多くの動物が研究・実験に供され、医科学研究の発展に大きく寄与している。
 当日は、清野宏所長の挨拶、甲斐知恵子実験動物研究施設長の報告があり、引き続いて参列者が動物の霊に思いをいたし、献花を行った。動物を利用した研究に従事する研究者を中心に350名を超える教職員等が参列し、滞りなく終了した。



19 史料編纂所
平成24年度図書館団地総合防災訓練の実施
 11月8日(木)14時から約1時間にわたり、本ク消防署並びに文京区役所の協力を得て、図書館団地(総合図書館、教育学研究科、情報学環・学際情報学府、社会科学研究所、法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター、史料編纂所)における総合防災訓練が、今年度当番部局の史料編纂所の計画のもとに実施され、同団地の教職員等約210名が総合訓練に参加した。また、今年は東洋文化研究所教職員約30名が同研究所の避難訓練後、個別訓練に合流した。
 当日は、総合訓練として、大地震発生に伴い史料編纂所1階給湯室より火災が発生したとの想定で、火災報知器の発報、消防署等への通報、訓練実施本部の設置を行い、図書館団地自衛消防本部隊及び各部局地区隊の初期消火班が消火器を持って直ちに駆けつけると共に消火活動、結果を訓練実施本部へ報告した。同時に各地区隊誘導班は教職員等を集合場所へ避難誘導した。各地区隊通報連絡(情報)班は訓練実施本部へ避難人数・負傷者数・建物損傷状況等の報告を行った。
 その後、訓練実施本部周辺において個別訓練として、本ク消防署の指導による消火実技訓練及びAEDを使用した応急救護訓練、文京区役所の指導による「起震車」「煙体験ハウス」を用いた地震・火災体験訓練を行った。各訓練において多数の参加者が積極的かつ真剣に訓練を行い、消防署及び区役所の方々も感心されていた。
 最後に、本ク消防署より「従来は地震発生の際、直ちにガス栓を閉じるよう指導していたが、現在はまず身の安全確保を行うよう指導している。揺れが収まった段階でガス栓を閉じてもらいたい」などのアドバイスと講評があった。そして、訓練実施本部総監督である榎原雅治史料編纂所長より各関係機関及び参加者へ訓練協力に対するお礼及び総括の挨拶があり、訓練は無事に終了した。





20 大学院人文社会系研究科・文学部
外国人留学生見学旅行を実施
 11月9日(金)・10日(土)の両日、人文社会系研究科・文学部恒例の外国人留学生見学旅行を実施した。参加者は、留学生39人、引率教職員7人の合計46人であった。
 8時に医学部2号館本館前広場から貸切バスで出発3時間程で新潟県南魚沼市に到着し、早めの昼食をとった後、そぼ降る雨の中を鈴木牧之記念館を見学、隣接の雁木つくりで整備された牧之通りを散策した後、日本一の庵寺・越後一の寺、参道の石畳を歩くだけで仏の功徳があるという雲洞庵を訪れた。魚沼市に移動後は、国指定重要文化財の目黒邸を見学し、初日最後の酒蔵併設の越後ゆきくら館試飲コーナーでは、日本酒の利き酒に留学生が長い列を作り引率者を驚かせ、各自嗜好のお酒を買い求める姿は印象深かった。18時には宿泊地である越後湯沢温泉のホテルに到着し、各自温泉に浸かり疲れを癒した後、夕食を兼ねた懇親会となり、和やかな雰囲気の中ゲームを行うなど、留学生相互の親睦を深める楽しいひと時となった。
 2日目、すっきりしない空模様の中、まずは新潟県立歴史博物館へ向け出発した。この博物館では、引率の大津透教授(日本史学)の説明があり、留学生は熱心に聞き入っていた。次の目的地の出雲崎町へ到着したころには天候も回復し、晴れ間も広がったなか良寛記念館を見学、そして日本海を臨む景色の中での昼食も存分に楽しむことができた。今回最後の見学場所では、往時の宿場の繁栄を想像させる北国街道旧出雲崎宿を各自散策し、留学生の中には少々距離がある良寛堂へも足を伸ばした健脚者もいた。
 15時頃本学へ向け帰路につき、バスは予定時刻より若干遅れ20時過ぎ本郷構内に到着。こうして今年の見学旅行は、越後地方の歴史と文化を実感しながら、留学生同士の触れ合いなど、参加者に多くの思い出を残し無事終了した。毎年、本研究科・学部では人気の企画であり、また参加したいなど多くの声があり、引率者もほっとした瞬間であった。



21 大学院農学生命科学研究科・農学部
附属牧場で一般公開デー開催される
 11月10日(土)大学院農学生命科学研究科附属牧場で一般公開デーが開催された。牧場の一般公開デーは、笠間市の共催を得て今年で8回目となる。当日は、晴天に恵まれたこともあり多くの来場者でにぎわい、地元住民の関心の高さを物語った。
 前回までは来場者は個々に牧場内を散策してもらっていたが、一昨年宮崎で発生して約30万頭の家畜を殺処分した口蹄疫事故に対応して昨年4月に家畜伝染病予防法が改訂されたため、衛生管理区域(家畜の飼育スペース)への立入は、靴底消毒などを励行した希望者を職員が案内するツアー形式とした。また、会場では、ぬり絵大会、牧場クイズ、眞鍋昇教授による「食の安全は守られているか−畜産物の安全性担保への取り組み」と題した講演が行われた。その他、落書き用ヘイレージ(牧草をラップで巻いたもの)の設置や、仔ヤギとのふれあい広場の開催、牧場で生産した肥料により育てられた米と流通米との食べ比べ、体験乗馬など、多くのイベントが行われ来場者に好評だった。笠間市からは、地元産のゆで栗など笠間市農産物ブランドの試食コーナー、栗を使ったゲームなどの出店があり山口伸樹笠間市長も来場された。
 附属牧場では、来年も同様に一般公開デーを行う予定である。



22 東洋文化研究所
第12回東京大学東洋文化研究所公開講座が開催される
 11月10日(土)に、医学部教育研究棟鉄門記念講堂にて、第12回東京大学東洋文化研究所公開講座が開催された。本講座は東洋文化研究所が長年蓄えてきた知的ストックをもとにして研究所スタッフがわかりやすく解説するアジアを知るための公開講座で、2001年から年1回開催し今年で12回目である。今回は『アジアの文』として、小寺敦准教授による「中国古代簡牘資料研究の現状」、古井龍介准教授による「碑文の語る南アジアの「文」:重層性と多様性」の講演が行われ、100名を超える大勢の市民の出席を得、活発な質問・意見が寄せられた。



23 大学院工学系研究科・工学部
第一回Deans Forum Workshop Series開催される
 11月12日(月)、工学部1号館15号講義室にて、第一回Deans ForumWorkshop Series“Resilience EngineeringWorkshop”が開催された。
 同ワークショップは、昨年11月に開催された第1回Deans Forumの中で合意された、学際的研究・教育分野の連携のための第一回ワークショップである。【Deans Forumは、世界の工学系をリードする大学(東京大学、マサチューセッツ工科大学、カリフォルニア大学バークレイ校、インペリアルカレッジロンドン、スイス連邦工科大学チューリッヒ校、スウェーデン王立工科大学、フランスグランゼコール連合体)により組織され、昨年11月、本学において第一回会合を開催。参加大学間の今後の学術交流推進について合意されている。】
 当日は、Deans Forum参加機関からの講演・参加者10名、工学系研究科を中心とする本学学生25名、教員・研究者23名、工学系企画委員・関係者35名、その他2名の合計95名の参加があった。



 原田昇研究科長、北森武彦副学長、Dr.T. C. Chen(IBM Fellow & Vice President,Science & Technology, IBM Research)による議長挨拶の後、関村直人国際工学教育推進機構長、Joonhong Ahnカリフォルニア大学バークレイ校教授による司会進行にて、各参加機関からのプレゼンテーションおよび質疑応答が行われた。



 その後、行われたディスカッションセッションでは、Resilience Engineeringの分野における今後の共同研究・共同教育の方向性について、活発な議論が行われ、今後さらにDeans Forumの枠組みの中で検討を継続する事が合意された。



24 大学院法学政治学研究科・法学部
10月期新入生歓迎会を開催
 11月15日(木)18時から法文1号館1階学生ラウンジにて10月入学の法学政治学研究科総合法政専攻大学院外国人研究生および法学部特別聴講学生の新入生歓迎会が開催された。
 留学生、客員研究員、日本人学生チューター、教職員等、総勢71名が出席し、熱気あふれるパーティとなった。
 新入生歓迎会は、山口厚研究科長の挨拶、新入生の自己紹介、西川洋一副研究科長による乾杯の後、歓談に入った。
 宴たけなわになった頃、まずドイツ出身留学生がオペラ曲「私のお父さん(ジャンニ・スキッキより)」「ハバネラ(カルメンより)」2曲を独唱した。次に中国出身留学生が一人で戦後日本の歴代首相名を暗唱した。最後に中国出身留学生有志10名が日本語で「帰省」(中島みゆき)と中国語で「美麗心情」を合唱した。
 終盤に参加者全員で集合写真を撮り、高原明生総合法政専攻長の挨拶の後、19時半過ぎに全員で片付けを行い、散会となった。昨年に引き続いて今回も法文1号館内で留学生と教職員が協力し合ってパーティを企画・運営し、外国の情緒と手作り感あふれる新入生歓迎会となった。



25 大学院理学系研究科・理学部
外国人留学生見学旅行実施
 11月17日(土)と18日(日)にかけて留学生見学旅行を実施した。
 本研究科・学部には91名の外国人留学生が在籍しているが、留学生36名と4名のスタッフの計40名が参加し、山梨県河口湖・西湖周辺を訪れた。
 1日目は貸切バスに乗り午前8時過ぎに本郷キャンパスを出発し、中央道を走り渋滞も無く2時間弱で河口湖に到着した。河口湖畔にて昼食をいただいた後、太宰治の名作「かちかち山」の舞台になった天上山公園「カチカチ山ロープウェイ」へ移動し、3分間の空中散歩を楽しんだ。あいにく冷たい雨風に見舞われ、標高1,075メートルの展望台からは富士山や河口湖、南アルプスの全景を望むことが出来なくて残念だった。
 その後、日本の原風景である茅葺き屋根の農村集落を復元させた「西湖いやしの里根場」を訪れた。囲炉裏を囲み地元の方のギター演奏を聴いたり、鎧にかぶと・鉄砲や刀・着物を身に付けて記念撮影をしたり、伝統工芸の作品を鑑賞したり、予想よりも十分に満喫した時間を過ごせた。次第に雨足が強くなったため、予定より早く西湖の旅館に到着した。
 夕食後フルーツバスケットなど白熱したゲームが繰り返され、当初緊張気味だった生徒も国籍・専攻に関係なく交流が深まり、お互い打ち解けたようで安心した。
 2日目は朝食後「ほうとう作り」を体験した。グループに分けて粉を練って麺作りからスタート。その後、ほうとう鍋用の野菜を切り、それぞれオリジナルのほうとう鍋が出来上がり、全員で美味しく完食した。
 気持ちの良い秋晴れの下、富士山の裾野まで見渡せて河口湖周辺を移動の際には学生も歓声を上げ、大喜びの様子だった。
 積雪のため富士山4合目までしか行くことが出来なかったが、色鮮やかに染まった紅葉や美しい自然も楽しむことができ、また学生同士の親睦も深まり、スタッフ共々思い出深い見学旅行となった。


26 大学院農学生命科学研究科・農学部
フットパス研修旅行の実施
 農学生命科学研究科附属演習林の富士癒しの森研究所(旧・富士演習林)は、昨年度より名称を変更し、人々が森林からより多くの「癒し」が得られるような地域社会の実現を目指した研究を展開し始めている。森林がもたらす「癒し」の観点から参考となる事例地をスタッフ全員で訪れる研修旅行を昨年度から行っている。
 今年度は10月9日(火)〜10日(水)の日程で、フットパスをテーマとした研修旅行を先進地として知られる北海道で実施した。
 フットパスとは、単純に言えば「歩くための道」だが、「歩くことを楽しむための道」でもあり、道づくり自体に地域住民が楽しみながら関わっている事例が多く、当研究所では森林の快適性を引き出す有効な手段として注目している。今回の研修旅行では、当研究所スタッフに加え、関連する研究テーマに取り組んでいる学生、当研究所と連携している団体の職員が参加し、フットパスづくり活動に取り組まれているNPOの方の案内を得て、苫小牧市、平取町、上富良野町を訪問し、フットパス4事例を視察した。そして、これらに関わっているNPOメンバー、地域住民、専門家の方々と意見交換を行った。



 このほか、市民に開放された散策路を充実させている北海道大学・苫小牧研究林、水を使わないため森林内への設置が容易なバイオトイレを開発・販売しているメーカーも視察した。
 研修旅行は同様の課題に取り組んでおられる方との意見交換ができて非常に勉強となると同時に、所内メンバーとじっくり意見交換する良い機会ともなった。ここで得られた知見を活かして、12月には地域住民を対象としたフットパスの公開講座も企画されている。



27  
退職教員の最終講義(1月開催分)
 学内広報では例年、今年度末をもって本学を退職される方々の最終講義の日程等を紹介している。1月開催分は以下のURLに掲載している。

http://www.u-tokyo.ac.jp/news/detail_j.html?id=14838


キャンパスニュース
28 本部学務課
平成24年11月1日現在学生数
 本学では、毎年5月と11月の年2回、同月1日現在の学生数を調査している。本年11月1日現在の学生数は、学部学生13,971人、大学院学生13,512人、研究生等640人であり、詳細は以下のURLに掲載している。

http://www.u-tokyo.ac.jp/stu04/e08_02_01_j.html


人事異動
29 本部人事給与課
人事異動(教員)
 本年度11月2日〜12月1日の人事異動(教員)の情報を以下に掲載いたしましたのでご覧ください。

東大ポータル > カテゴリー:人事・労務・制度等 > 人事異動(教員)

http://www.ut-portal.u-tokyo.ac.jp/wiki/index.php/ 人事異動(教員)