新しい未来を
Imagine & Realizeして

工学部
石戸 奈々子
Nanako ISHIDO

石戸 奈々子

インタビュー一覧 > 石戸 奈々子

~自分の仕事・夢~

 子どもたちの創造的な学びの場をつくる活動を推進しています。

 きっかけは、マサチューセッツ工科大学メディアラボとの出会いです。メディアラボは1985年の設立以来、デジタルの未来社会に対するビジョンを世界に対して打ち出し続けて来た研究所。そんなメディアラボとの出会いをくれたのは、東大の授業でした。私は大学を卒業した後、学部時代のたくさんの先生方のご指導があり、幸いにして、恋いこがれていたメディアラボに参加することとなりました。

 そこには理想的な学びの場、創造の源泉があったのです。オープン性とデザイン性を備えた空間。ひらめいたらすぐに作ることができるおもちゃ箱のような環境。性別も年齢も出身も専門分野も多種多様で、世界一を誇る深い専門性のコミュニティ。学生も教授も世界中から集まるスポンサー企業も、夜通し議論し、連携する平等な関係。常に非常識なことに挑戦し続ける気合い。新しい価値を作りだすことに最大限の賞賛の言葉を贈る「demo or die」の行動原理。そして技術と社会との接点を常に模索する活動。

 「そんなワクワクした学びの場をつくりたい!」

 それから私は日本に戻り、子どもたちの主体的で協調的で創造的な学びの場をつくる活動を産官学連携で推進する団体であるNPO法人CANVASを設立し、運営しています。CANVASの設立や運営にあたっても、多くの先生方や、卒業生の皆さんに支えられています。

 21世紀に求められる力とは、そしてそのための学習環境とはどのようなものだろうか。これまでは、より多くの知識を得ることに評価の力点が置かれていました。教師が持っている知識を一方向に多数の生徒へ伝達する授業形態は、均一化された知識を身につけた人材を必要とする工業社会には効果的でした。

 しかし、経済がグローバル化し、大量の情報が国境を変えて行き交う社会となりました。世の中も複雑化し、1人の専門性だけでは解決できない課題が山積しています。そのような時代において、個々人の専門性を深めながらも、異なる文化、異質な価値観、多様な力を持つ人たちと協働し、社会に変化をもたらす新たな価値を生み出す力が求められます。

 これからの多元的で新しい社会を築いていくのは、子どもたちの世代です。未来を想像し、創造するのは、生まれながらネットを駆使し、生まれながらデジタルに暮らすデジタルキッズたち。世界中の子どもたちがつながって、新しい表現や、豊かなコミュニケーションを生み出し、新しい世の中を築いていって欲しい。そのような想いで活動をしています。

~大切にしていること~

 座右の銘は「Imagine & Realize」です。メディアラボに教えてもらった言葉です。
「想像と創造」。大事なのは、想像することだけではなく、それを実現することだと思っています。
頭の中で想像、イマジンして、実際に創りだす、リアライズすることです。
私はこどもたちがそれを可能にする世界を実現したいと思っていますし、また、子どもたちの目が輝き、創造力を発揮する社会を創りたい!と思っています。

後輩たちへ

~後輩たちへ~

 東大在学中には、たくさんの出会いを頂きました。

 友人、先輩、先生といった刺激的な人との出会いはもちろんのこと、知識、経験、機会も含めた多くの出会いがありました。振り返ってみれば、東大はとても寛大な学びの場だったと感じます。想いを形にするために必要な出会いに溢れていました。その出会いがいかに貴重なものであったかに気がついたのは卒業後。しかし、東大でのつながりにいまも生かされていることをしみじみと感じています。

 在学中の皆様には、ぜひたくさんの出会いを経験し、新しい未来をImagine & Realizeして欲しいと願っています。

プロフィール:
石戸奈々子(Nanako ISHIDO)
(2014/7/4現在)

NPO法人CANVAS理事長
東京大学卒業後、MITメディアラボ客員研究員を経て、NPO法人「CANVAS」を設立。実行委員長をつとめる子ども創作活動の博覧会「ワークショップコレクション」は、2日間で10万人を動員。その後、株式会社デジタルえほんを立ち上げ、えほんアプリを制作中。総務省情報通信審議会委員、慶應義塾大学准教授などを兼務。著書に「子どもの創造力スイッチ!」など。

©東京大学