王道ルートでなくても、チャレンジを!

工学部
石井 てる美
Terumi ISHII

石井 てる美

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~自分の仕事・夢~

 20代後半にお笑い芸人になりました。この世界の厳しさや先の見えない怖さを突き付けられる度に「なんでこんな世界に入ったんだ!」と自分で突っ込んでしまうこともありますが、思いがけないサプライズが待っているのもまたこの世界。自分のアイディアやネタがウケたりしたときの悦びの爆発力には凄まじいものがあります。子供の頃から人を笑わせることが大好きでしたが、芸人として1人ステージで見ず知らずのお客さんを笑わせることは自分が思っていたより遥かに難しく、人前でふざけることはマジメに振る舞うことの100倍の勇気が要るなと実感しています。その分、うまく行ったときはこの上なく嬉しく、「これができたなら、今度はもっとできるんじゃないか」「またあの喜びを味わいたい」「でもネタが思いつかない~!泣」と日々自分と格闘しています。

 夢は海外でお笑いにチャレンジすることです。原体験として、大学時代に海外インターンで出会ったアメリカ人の友人が、私のモノマネで爆笑してくれたことがあります。どういう形になるか分かりませんが、自分にできることを発信できたらと思っています。

 まだまだちゃんと「仕事」と呼べるまでには道半ばですが、しばらくはこのジェットコースターのようなスリリングな挑戦を最高に楽しみたいと思います。

~大切にしていること~

 やりたいことはやる、会いたい人には会う、行きたい場所には行く、というスタンスを大切にしています。芸人になるときも、やらない後悔はしたくないという思いのもと、決断しました。趣味で言えば、気になるミュージシャンのコンサートは必ず行く、どうしても現地で見たいフィギュアスケートの大会があれば海外であろうと行く(フィギュアスケート鑑賞が好きなので)、など自分のワクワクする気持ちに従ってすぐに行動に移すことが多いです。

 また、芸人になってから特に、既成概念や思い込みに捕らわれないこと、自分は自分、という思いを強く持つようになりました。とは言え「自分のブレない芯をしっかり持つこと」はまだまたこれからの私の課題でもありますが。

 また何より、家族や友人などの大切な人とのつながりは、私の人生の一番の宝物です。

後輩たちへ

~後輩たちへ~

 これを読んでくださっている現役東大生の方の中には、「お笑い芸人になる、だなんてありえない!」とお思いの方がほとんどだと思います。実際に私がそうでした。大学・大学院時代、「自分はバリバリのキャリアを築いていくんだ」という進路以外、現実的には考えたことがありませんでした。ですが、新卒で入社したマッキンゼーで働いている中で人生観が変わり、お笑い芸人に転身しました。(※言うまでもありませんが、マッキンゼーは社員を芸人になるように仕向ける会社ではありません。)

 何が言いたいかと言うと、人生何が起こるか分からないということです。(私が計画性の無いタイプの人間だというのもありますが。笑)ただ確かなのは、東大時代に培った知見・経験とそこから得られる自信、何より東大で出会った先生方・友人たちが将来に渡って自分を支えてくれるということです。大学生のうちは自由に過ごせる時間がたくさんあるので、勉強から遊び、部活・サークルから留学などなど色々な経験をして視野を広げるまたとないチャンスです。それらはいつしか自分の武器となって、将来何をしようとも自分を助ける大きな力になってくれます。また魅力的な人が溢れる東大で、自分の価値観や好きなことへの情熱を大切に、そういう思いを通じてたくさんの人と繋がって行って欲しいと思います。実際に私にとって今も、東大で出会った友人が生きる上での刺激でもあり、学生の頃のようにくだらないことで笑い合えるかけがえのない仲間です。

 また、何か将来やりたいことがあるという方は、それが東大生のいわゆる王道ルートと少し違ったとしても、ぜひともチャレンジして欲しいと思います。皆さんなら何があっても食いっぱぐれることは無く、リスクを取りやすい立場にいると思うので、一度の人生ちょっと冒険してみるのもいいのではないでしょうか。

 最後に、30代になって痛感する(周りの東大女性も口を揃えて言う)のは、東大は絶好の出会いの場だったということです。だからといって現役生のうちから意識的に結婚相手を探す必要もありませんが、頭の片隅になんとなく留めておいてください。笑

プロフィール:
石井てる美(Terumi ISHII)
(2014/7/20現在)

2002年文科三類入学、2006年工学部社会基盤学科国際プロジェクトコース卒業。
2008年同大学院終了後、外資系コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。
2009年夏に退職後、お笑い芸人を志し、芸人養成所「ワタナベコメディスクール」に入学。以降、ワタナベエンターテインメント所属のお笑い芸人として活動中。著書に「私がマッキンゼーを辞めた理由」(角川書店)。

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