「製造部長」として、「母」として

経済学系大学院
田村 咲耶
Sakuya TAMURA

田村 咲耶

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~自分の仕事・夢~

 私の仕事を一言で言うと「製造部長」であり、「一児の母」です。

~「製造部長」としての顔~

 私の勤務するGEヘルスケアは東京日野市に重要な製造・開発拠点を持っています。
私は、その日野工場でCTやMRIといった医療機器の部品調達・在庫管理を統括しています。CTやMRIは数百点以上の精密部品で構成されており、一点でも欠ければ動きません。

 日本だけでなく、中国、インド、アメリカ、ヨーロッパ、中東などの各工場と連携して初めて1台に装置が完成し、そして、また世界中の医療現場へと飛び立っていきます。世界中と連携してモノを作りあげる仕事は、やりがいがあります。

~「一児の母としての顔」~

 同時に、私は2013年5月に長男を出産した「母」という顔も持っています。 それまで、仕事100%。料理と言えば”ほうれん草のおひたし””鯵のひらき”位しかレパートリーのなかった私ですが、今は帰宅後に30分で3~4品位作れるようになるなど、子どもと一緒に「母」として、成長中です。

 そんな私も、「ワークライフバランスをとって頑張ってます」と声高に言えればステキなのですが、実際はそんなに格好良くはいきません。

 夜に子供と一緒にいても、「あの部品、ちゃんとアメリカから出荷されただろうか」
「ああ、あの判断間違っていたかも!」と、仕事のことで頭がいっぱいになって、家のことが手につかなくなってしまうことも、しばしばです。
自分の力というよりも、家族、保育園、ファミリーサポートなどの自治体、民間のベビーシッターサービスなど、周りの力を総動員してここまで来れている、というのが正直な所です。

 ただ、心がけているのは、「両立は無理!」とは考えず、「やりたいことを、やるにはどうしたらいいだろう?」と前向きに考えるようにしています。

 例えば、仕事柄、海外出張が多いのですが、子どもが小さいと困難なことが多いのも事実です。しかし、「グローバルな仕事をしたい!」という希望もあり、周囲のサポートを総動員することで、復帰後もインド、中国、アメリカの出張に行くことができました。

 また、「家族に負担をかけているのだから、その分、より意味のある出張にしよう」という気持ちが強くなり、出張の質も以前より向上したと思います。

 そんな私ですが、これからも「イノベーティブな製品やサービスを送り出したい」という私の元来の夢を追求していきたいと思います。

 数十年後に、成長した子どもが「母さん、頑張っていたんだな」と、思ってくれたら最高ですね。

~大切にしていること~

 自信満々で臨んだプレゼンが、とんだ準備不足で、社長の前で撃沈したり…
 意気揚揚と始めた新しいウェブサービスが上手くいかなかったり…

 社会人経験はまだまだ短いですが、思い出すだけで顔から火が出てしまう位の失敗経験や、立ち直れないかも..というような挫折経験をしてきました。
もう無理!..と思う時もありましたが、後になってあの経験が自分を大きく成長させてくれたと実感しています。

 失敗はしたくてしているわけではありませんが、その時に叱咤激励してくれた仲間達、そして、そこから学んだ経験は宝です。

後輩たちへ

~後輩たちへ~

 特に、女性の後輩の皆様へ
キャリアを築いていきたいならば、自分がどうしたいのかを、会社や家族にしっかり伝えることが大切だと思います。そうでなければ、会社や周囲は 「女性ならば、子どもとずっと一緒に過ごす主婦や時短勤務がいいだろう」と思い込みがちだからです。

 私の場合、出産前から会社で「仕事を続けたい」とは言っていましたが「子供を産んだら分からないよー。産んだ瞬間、もう仕事がどうでもよくなるかもよー」と言われ続けていました。

 確かに、産んでみないと自分の気持ちは分からないので黙っていたのですが、出産して一か月経って体調が回復すると、「やっぱり、私は、ちゃんとフルタイムで働きたい」と思うようになりました。

 そこで、上司に「私はフルタイムで働きたいし、しっかりチームも持ってマネジメントもやりたい」と、出産三か月後には伝えていました。そして、復職前に上司・人事と面談したところ、自分の希望も踏まえてもらった上で、今のポジションの内示を受けました。
おそらく、育休復帰する際にチームを持つことは珍しいことではありましたが、自分で事前に言わなければ絶対にないキャリアだったと思います。

 また、復帰の際は、どうしたら自分にとって働きやすいかを考え、「18-21時は、基本的にメールは見ない」「週1回は在宅勤務」と、自分の希望を会社と部に提案しました。
これを、周囲が理解してくれたことで、もっといい仕事をしよう、というモチベーションになっています。

 もちろん、女性は様々な生き方があり、キャリアを追求しない生き方もあります。
産後はゆっくりスタートして、落ち着いてからフルタイム復帰というやりかたがいい人もいると思います。

 ここでお伝えしたいのは”自分にとっての働きやすい環境を作るために、自分で道を切り拓く努力は必要”ということです。
女性の生き方が多様だからこそ、自分から発信していかないと、周りが自分の環境を理解してもらうことは難しいと思います。

 また、昨今は、東大生の皆さんもベンチャーやNPO、グローバル企業など、キャリアの選択肢が増えてきていると聞いています。どんな環境の中でも、柔軟に自分の道を切り拓いていく力を身につけて頂きたいと思っています。

 私も頑張ります!

プロフィール:
田村咲耶(Sakuya TAMURA)
(2014/08/09現在)

東京大学大学院 経済学研究科 修士課程終了
ボストン・コンサルティング・グループを経て、GEヘルスケアジャパンに入社し、マーケティング、戦略立案を担当。
2012年より、将来の幹部候補を数年かけて育成するGEのグローバルプログラム「CLS :コーポレートリーダーシッププログラム」に日本人初のプログラム生となり、現在は製造本部にてローテーション中。
産育休を経て、現職は製造本部サイトマテリアル部 部長。

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