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白い表紙に淡いピンクの四角い模様。帯に「これ一冊で、民事再生法の概略を過不足なく学べる」とコメントあり

書籍名

民事再生法入門 [第2版]

著者名

松下 淳一

判型など

236ページ、四六判、上製

言語

日本語

発行年月日

2014年12月25日

ISBN コード

978-4-641-13706-6

出版社

有斐閣

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民事再生法入門 [第2版]

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企業の経済活動は、モノやサービスの提供とその対価の支払いとによって行われている。例えば、小売業であれば、商品を仕入れてその代金を支払い、働いた従業員に賃金を支払い、商品を売って代金を得ることになる。経済活動が順調にいっている間は、対価の支払いは滞りなく行われるが、しかし、例えば為替相場の変動のような外的要因や、採算性のよくない事業への過剰投資のような内的要因によって、経済活動を続けるのが困難になる場合がある。このような経営状態の悪化が進むと、金融機関からの借入を約束した日に返済できないとか、商品の売主に対して売買代金を約束した日には支払えないというような現象が継続するという形で顕在化する。そのような場合には、借入金や売買代金の全額を支払うだけの財産がその企業にはもう残っていないことが多い。そのような状況においては、残り少ない財産を関係者で平等に分配することが必要になり、そのような割合的な分配のために裁判所で行われる手続等を定めているのが倒産法という法分野である。破綻が顕在化した事業の採算性が悪ければ、その企業の財産を全部売ってその代金で貸し手や売主に割合的に弁済する他ない。しかし、不採算部門を切り離し、経営全般にコストの見直しをすれば、収益が見込めて、事業を解体清算するよりも多くの弁済が見込める場合には、事業を継続しながらその収益から割合的な弁済をすることもできる。そのような内容の裁判上の手続 (再生手続) を定めているのが民事再生法という法律である。
 
本書は、民事再生法について解説する教科書である。執筆者としては、学部学生や法科大学院生で民事再生法をはじめて学ぶ者を主たる読者であると想定していた。したがって、実務的には重要であっても初学者の学習との関係では重要性が低い事柄には、全く又はほとんど言及していない。他方で、民事再生法という法律を理解するために重要な基本的事項については、丁寧な説明をしたつもりである。基本的な事項ほど、応用できる事項が多いからである。全体で200頁強の小さい本なので、執筆の際には、初学者の理解を助けるために何を書き何を書かないかの選択に十分に留意した。
 
刊行後、やや意外だったのは、若手の弁護士ではじめて民事再生法を勉強する際にこの本を読んだ人から、民事再生法がどういう法律か理解できて有益だったというコメントがいくつかあったことである。民事再生法という法律を法律実務の中で実際に使おうとする際には、いきなり実務書を読むよりも、まずは基本的な事項を理解してからの方が、実務上の具体的な取扱いを学ぶ際に頭に入りやすい、とのことであった。かくして、学生を念頭に置いて書いた本ではあるが、実務家にとっても有用であるようである。
 

(紹介文執筆者: 法学政治学研究科・法学部 教授 松下 淳一 / 2016)

本の目次

第1章 総論
第2章 開始申立てから開始決定まで
第3章 再生債務者の地位・手続機関
第4章 再生債務者の財産・事業
第5章 再生債権・共益債権等
第6章 別除権
第7章 相殺権・契約関係の処理
第8章 再生計画の条項および再生計画案の提出
第9章 再生計画の成立
第10章 再生計画の遂行および再生手続の終了
第11章 個人再生

関連情報

初版2009年3月10日

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