東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙にブルー系の花柄模様。帯に「ちょっと斜めから見えてくる英語の思想法」とコメントあり。

書籍名

英語的思考を読む 英語文章読本II

著者名

阿部 公彦

判型など

216ページ、四六判、並製

言語

日本語

発行年月日

2014年5月30日

ISBN コード

978-4-327-48162-9

出版社

研究社

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英語的思考を読む - 英語文章読本II

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本書は以前に研究社から刊行した英語文章読本シリーズの第二弾です。小説作品もとりあげていますが、それ以外の散文にも触れることで、英語を読む際にどのような知的作業が伴うかを示しました。その過程を通して英語ならではの話の進め方、物の考え方、世界の整理の仕方なども確認しています。
 
本書は網羅的なものではありません。これだけ読めば英語的思考のすべてがわかるというものでもありません。ただ、英語やその背景にある文化をおもしろがるための大事な切り口は提供したつもりです。その切り口とは、「イノセンス」、「風刺」、「技巧」、「ヒーロー」、「批評」、「議論」、「神」の7つです。各章では、それぞれの切り口に合わせて選んだテクストをじっくりいじくりながら、読むことの可能性をさぐります。
 
読むとは "解読" で終わるものではありません。曝き、ほぐし、整理したり理解したりすることでいろいろな意味作用は生まれますが、ときには退いたり、待ったりすることも必要です。つまり、ときにはあきらめたり、呆然としたりする。読むときには、こちらの強烈なイニシアティブで相手を組み伏せることが肝要になる局面もありますが、相手の都合に合わなければならないこともある。負けてみせる。わからないで終わる。そういったことをいろいろ実践してみました。
 
本書はどこから読み始めても大丈夫です。興味の沸いた章からのぞいてみてください。ただ、もし可能であれば元になっている作品も手にとっていただきたい。そして -- これももし可能であれば -- 英語の原典もながめていただきたい。その補助として、各章の終わりに「英語名言読本」というコーナーも付しました。ここでは英語の背景にある文化に少しでも興味を持っていただくためちょっとした名言に焦点をあて、メインの章よりは軽めのアプローチをとっています。
 
やさしそうに見える作品でもけっこう難しいところはあるでしょう。「ヨブ記」などはかなりハードです。ただ、このシリーズの狙いの根幹にあるのは、"読む" とは挑戦だというメッセージです。挑戦でもあり、野望でもあり、企みや希望でもある。もちろん楽しみでもある。ときには退屈なこともあるでしょう。しかし、退屈さにも何かが潜んでいたりするのです。何と奥深いことでしょう。
 

(紹介文執筆者: 人文社会系研究科・文学部 准教授 阿部 公彦 / 2016)

本の目次

はじめに iii
1 [イノセンス] 心は言葉のどこにある? -- オスカー・ワイルド「幸福な王子」 1
 英語名言読本 (1) 名言の名手 -- オスカー・ワイルド 23

2 [風刺] 読んだふりの構造 -- ジョージ・オーウェル『一九八四年』 29
 英語名言読本 (2) "絶望" と仲よしになるために -- フィリップ・ラーキン 55

3 [技巧] 形容詞の時代 -- ジョン・アップダイク「殺す」 61
 英語名言読本 (3) 恋愛について考えてみませんか? -- ジェイン・オースティン『高慢と偏見』 79

4 [ヒーロー] 主人公の資格 -- F・S・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』 87
 英語名言読本 (4) 格好よすぎる台詞 -- ヘミングウェイ『老人と海』 110

5 [批評] 難解さへの処方箋 -- T・S・エリオット「形而上派詩人」 117
 英語名言読本 (5) 華麗に恋愛を語る -- ウィリアム・シェイクスピア『ソネット集』 135

6 [議論] 白か黒かで語る -- レイモンド・ウィリアムズ『田舎と都会』 143
 英語名言読本 (6) 大人の味わい -- ジョージ・エリオット『サイラス・マーナー』 171

7【神】疑問文の神学 -- 『ヨブ記』 179
 英語名言読本 (7) 超一級変人の美しい奇書 -- ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『ウォールデン』 202

文献 208
おわりに 211

関連情報

著者ホームページ
http://abemasahiko.my.coocan.jp

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