東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

白い表紙の真ん中に地球のイラスト

書籍名

小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発

著者名

J. ロックストローム、M. クルム (著)、 武内 和彦、 石井 菜穂子 (監修)、谷 淳也、森 秀行ほか (訳)

判型など

260ページ、A5判

言語

日本語

発行年月日

2018年7月

ISBN コード

978-4-621-30302-3

出版社

丸善出版

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

小さな地球の大きな世界

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本書は、「プラネタリー・バウンダリー」という概念を主導する科学者グループのリーダーであるJ. ロックストロームが、写真家のM. クルムとともに2015年に出版した“Big World Small Planet: Abundance within Planetary Boundaries”を和訳したものである。1950年代半ばに「人間活動の巨大な加速」が始まり、1980年代以降は人間活動が地球環境の容量に収まりきれなくなってきた状況を「小さな地球の大きな世界」と表現したのである。このプラネタリー・バウンダリーは、気候変動、成層圏オゾンの破壊、海洋の酸性化など9つの地球システムのプロセスから構成され、それぞれが許容限界を超えているかどうかを、最新の科学的知見に基づいて判断したものである。その結果によると、生物種の絶滅率や窒素・リンは、気候変動よりもリスクが高く、限界値を超えて不可逆的変化が起こる危険性の高いゾーンに入ってしまっている。
 
ロックストロームらがプラネタリー・バウンダリーの概念を提唱した目的は、単に人間活動の加速化が地球システムの限界を超えるリスクを増大させていることに警告を発することにとどまるものではない。そうした限界を十分把握したうえで、人間活動をいかに回復力があり安定した生物物理的な「安全な機能空間」に収れんさせていくか、という新しい方向性を導こうとしているのである。この考え方は、かつてローマクラブが提唱した「成長の限界」とは一線を画している。むしろ、プラネタリー・バウンダリーの範囲内でこそ、持続可能な経済や社会の成長と繁栄が保障されうるとの提案である。この考え方は、国連が採択した2030年までの持続可能な開発目標 (SDGs) の捉え方にも大きな影響を与えている。すなわち、環境に関する目標の達成が、社会や経済に関する目標を達成するための大前提となるとの考え方である。
 
翻訳出版を最初に提案したのは、私とともに監修者を務めている地球環境ファシリティ (GEF) CEOの石井菜穂子さんであった。石井さんは、プラネタリー・バウンダリーのコンセプトをGEFの長期戦略の根幹に置いており、また、原著に見事に配置されたクルムの撮影によるインパクトのある写真に魅了されていた。しかし、翻訳出版に至るまでの道のりは平坦ではなかった。出版業界が低迷を続けるなかで、カラーページの多い書籍の翻訳出版はコストの面で見合わないというのが、いくつか相談した出版社からの回答であった。そこで、私は次善の策として、電子媒体での出版を考え、丸善出版に打診したところ、何と印刷物での刊行に踏み切ってくれたのである。ヨハン (ロックストローム) からもマティアス (クルム) のカラー写真抜きでの出版は考えられないと念を押されていたので、大変ありがたかった。そのおかげで、多くの読者の方の目に触れるようになり、幸いにも重版にも漕ぎつけることができた。
 

(紹介文執筆者: 未来ビジョン研究センター 特任教授 武内 和彦 / 2019)

本の目次

序文 変革への協力関係
重大な10のメッセージ
第一部 偉大なる挑戦
 第1章 新たな苦難の時代
 第2章 プラネタリー・バウンダリー
 第3章 大きなしっぺ返し
 第4章 あらゆるものがピークに
第二部 考え方の大きな変革
 第5章 死んだ地球ではビジネスなどできない
 第6章 技術革新を解き放つ
第三部 持続的な解決策
 第7章 環境に対する責任の再考
 第8章 両面戦略
 第9章 自然からの解決策
あとがき 新たなプレイ・フィールド
 

関連情報

出版社パンフレット:
https://www.maruzen-publishing.co.jp/files/
 
出版イベント:
第10回持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム【ISAP2018】 「小さな地球の大きな世界」日本語翻訳版販売開始・著者ヨハン・ロックストローム博士来日講演  (パシフィコ横浜 2018年7月18日、19日)
https://isap.iges.or.jp/2018/jp/
 
書評:
松島香織 評 「「地球の限界」から持続可能な社会の実現を」 (サステナブル・ブランドジャパン 2018年10月24日)
https://www.sustainablebrands.jp/news/jp/detail/1191010_1501.html
 
新刊『小さな地球の大きな世界 プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発』 (毎日新聞 2018年9月5日)
https://mainichi.jp/articles/20180905/ddm/015/070/018000c
 
長谷川 浩 評 (『有機農業研究』Vol.10, No.2 2018年)
https://www.yuki-gakkai.com/wp-content/uploads/2018/12/a7ad1043719f263b60d48b6b23fccdbb.pdf
 
関連インタビュー:
(eひと) 「自然の限界」に人類は… 「小さな地球の大きな世界」を邦訳した・谷淳也さん (朝日新聞デジタル 2018年9月25日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13695512.html
 

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