東京大学教員の著作を著者自らが語る広場

ベージュの表紙に福田アジオの写真

書籍名

超越20世纪民俗学 对话福田亚细男

著者名

福田 アジオ (福田亚细男)、 菅 豊 (菅丰)、 塚原 伸治

判型など

206ページ

言語

中国語

発行年月日

2021年6月

ISBN コード

9787547435823

出版社

山東画報出版社

出版社URL

書籍紹介ページ

学内図書館貸出状況(OPAC)

超越20世纪民俗学

英語版ページ指定

英語ページを見る

現代民俗学とは、これまであった「20世紀民俗学」に、これまでなかった新しい学知を付加し、さらに新しい民俗学へと変革を目指す学問の流れである。ここでいう「20世紀民俗学」とは、20世紀に柳田国男たちによって始められた日本の土着文化の理解とその復興運動、そして、その学問化を進めた運動を指す。それは、ある時代の要請によって生成した「時代の産物」であり、当初は「野の学問」として出発し、百年近い時間の経過とともに体系化され、組織化され、そして制度化された。この「20世紀民俗学」の成立の最終段階で、大きな役割を果たした民俗学者の一人に、本書が主題化した福田アジオがいる。
 
福田は、柳田の民俗学を批判的に継承した民俗学者である。福田は、まさに「20世紀民俗学」の申し子といっても過言ではない。現代において民俗学を考究するために、私たちはこの「20世紀民俗学」からの飛躍を試みなければならないが、それは福田、および同時代の人びとの学問を乗り越えることでもある。しかし、私たちは、これまで彼ら彼女らの仕事を意識的に十分に乗り越えようという意欲をもってきたのであろうか。私たちは、「20世紀民俗学」を惰性で継承しているだけに過ぎないのではないか。このような疑問と危機意識にかられた私たちは、「20世紀民俗学」の代表的論客である福田と直接に対峙して議論する研究会を企画した。その研究会の企画のサブテーマを「私たちは『20世紀民俗学』から飛躍できるのか?」と題したが、そこには「現代」という言葉によって形容される民俗学を創り上げようとしている人びとを、再び覚醒させる意図が込められていた。
 
しかしながら、そこから飛躍することは、これまでの日本の民俗学者たちが意識せずに依存してきた「20世紀民俗学」の根本―研究の目的や方法、対象―を更改する作業であり、ことによってはそれを捨て去らなければならないほどの困難な作業である。
 
本書は、2010年7月31日に東京大学東洋文化研究所で開催されたシンポジウム「《討論》福田アジオを乗り越える―私たちは『20世紀民俗学』から飛躍できるのか?―」で取り交わされた、福田との熱論の記録の中国語翻訳書である。本書が、「『20世紀民俗学』を意識的に継承する」という方向性と、「『20世紀民俗学』を捨てて新しい民俗学を構築する」という方向性との相克や軋轢を顕在化させることにより、今後の民俗学を転換する起点を生み出す一助となれば幸いである。
 

(紹介文執筆者: 東洋文化研究所 教授 菅 豊 / 2022)

本の目次

中文版序言 中国語版助言
序言
序章 为民俗学的衰颓而悲哀的福田亚细男 (プロローグ 民俗学の退廃を悲しむ福田アジオ)
課題1 民俗学的定义问题 民俗学の定義の問題
課題2 民俗学的方法问题 民俗学の方法の問題
課題3 传承母体论的问题 伝承母体論の問題
課題4 民俗学的国际性问题 民俗学の国際性の問題
課題5 民俗学的调查论问题 民俗学の調査論の問題
課題6 民俗学的实践问题 民俗学の実践の問題
与现场观众的讨论 フロアーとの討論
总括 エピローグ
附录 民俗学的未来与出路 附録 民俗学の未来と活路
 

関連情報

原書:
福田アジオ・菅 豊・塚原伸治 著 『「二〇世紀民俗学」を乗り越える ―私たちは福田アジオとの討論から何を学ぶか?―』 岩田書院,   187ページ 2012年12月 ISBN: 978-4872947793
http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN978-4-87294-779-3.htm
 
関連シンポジウム:
東文研セミナー(《討論》福田アジオを乗り越える―私たちは『20世紀民俗学』から飛躍できるのか?―)のご案内 (東京大学東洋文化研究所班研究「東アジアにおける「民俗学」の方法的課題」研究会、現代民俗学会、女性民俗学研究会 2010年7月31日)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=FriJun111139142010

このページを読んだ人は、こんなページも見ています