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海と希望の学校 in 三陸第23回

岩手県大槌町にある大気海洋研究所附属国際・地域連携研究センターを舞台に、社会科学研究所とタッグを組んで行う地域連携プロジェクト―海をベースに三陸各地の地域アイデンティティを再構築し、地域の希望となる人材の育成を目指す文理融合型の取組み―です。5年目を迎え、活動はさらに展開していきます。

「海と希望の学園祭 in Kamaishi」開催

大気海洋研究所附属国際・地域連携研究センター
地域連携研究部門(大槌研究拠点)准教授
北川貴士
北川貴士
スクリーンの前に座るパネリストの5人
写真1:パネル・ディスカッション(左から、玄田・社研所長、野田・釜石市長、河村・大海研所長、杉山・先端研所長、河東・かまいしDMC代表取締役)

今年度、最終年度を迎えている「海と希望の学校 in 三陸」ですが、新型コロナウイルス感染症拡大の問題が発生して以来、控えめな活動を余儀なくされていました。最近になって、本事業をともに行っている社会科学研究所(社研)の先生方がようやく釜石に来ることが可能になったこともあり、今後の活動の景気づけにと、玄田有史・社研所長の声がけで急遽「海と希望の学園祭 in Kamaishi」を行うことになりました。

11月5日(土)、6日(日)に釜石市が主催、大気海洋研究所(大海研)・社研・先端科学技術研究センター(杉山正和・所長)が後援で、釜石情報交流センター・釜石市民ホール「TETTO」で行いました。5日は、野田武則・釜石市長、河村知彦・大海研所長挨拶のあと、3研究所・所長による講演を行いました。その後、河東英宜・かまいしDMC代表取締役にも加わっていただき、「海と希望のまち釡石」と題し、パネル・ディスカッションを行いました(写真1)。昼食時には宮古市立重茂中学校の生徒も駆けつけ、郷土芸能(鶏舞・剣舞・とど埼太鼓)を披露してくれました(写真2)。

翌日の6日は、近年、社会問題化している海洋プラスチックごみ問題を扱った映画「プラスチックの海」(2016年公開)の上映会を皮切りに、沿岸地域で生じている社会的課題をビジネスとして解決する取り組みを紹介するトーク・イベント「海と希望のソーシャルビジネス(中村寛樹・社研准教授ほか)」のほか、学術講演(宇野重規・社研教授「民主主義は海から生まれた」、佐藤克文・大海研教授「バイオロギングで実現する海洋生物と人の持続可能な共生社会」)を行いました。

バルーン・アート(写真3)で飾られた華やかな会場で、当センターは2日間を通して「希望の缶詰作り」や少し季節外れでしたが「タッチプール」を行いました(写真4)。また、釜石で活動をしている文京学院大学も「海のいきものかんむり作り」などのワークショップを開いてくださいました。大槌町の(株)ササキプラスチックによる射的の釣り版「キャスティング体験」は、景品も豪華で子供たちに大人気でした。海上保安庁・釜石海上保安部、海洋研究開発機構、三陸ジオ・パークなどにもブースを設置していただきました。

すでに今年度の予定が決まっていた中で新たに学園祭を行うことは、簡単なことではありませんでした。しかし、多くの人に参加していただいたことに加え、3つの研究所と釜石市をはじめとする多くの異なる組織がもたらす相乗効果で、学園祭は大変賑やかなものになり、盛会裏に終えることができました。来年度以降も続けていくことになりそうです。

赤い法被を着てハの字に並んで太鼓の演奏をする中学生
写真2:宮古市立重茂中学校による郷土芸能(魹埼太鼓)
バルーンアートで作られた電車とエビに加え、「海と希望の学園祭」と書かれたバルーンアートの垂れ幕
写真3:釜石市民ホール「TETTO」に飾られたバルーン・アート(本誌No. 1564表紙も参照)
タッチプールの中にいるヒトデに触れ合う子供たち
写真4:タッチプール「あ~ちびたっ」

「海と希望の学校 in 三陸」公式 TwitterのQRコード「海と希望の学校 in 三陸」公式Twitter(@umitokibo)

制作:大気海洋研究所広報室(内線:66430)メーユ

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デジタル万華鏡 東大の多様な「学術資産」を再確認しよう第32回

法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター
明治新聞雑誌文庫チーム係長
吉井初巳

時代の「瞬間」を伝える

新聞の号外の題字を並べたもの
多様な形態で発行された号外

2022年3月30日に「明治新聞雑誌文庫所蔵新聞号外コレクション」が学術資産アーカイブ化推進室の協力でオンライン公開されました。明治新聞雑誌文庫所蔵資料のうち、明治期~昭和戦前期の主に一枚物の新聞号外として整理された資料をご覧いただけます。全国紙から地方紙に及ぶ2,000枚以上、発行新聞社は45社を数える号外紙面を、記事タイトルからのキーワード検索、発行年月日から探すことができます。

現在でも身近な存在である新聞の号外は、明治から昭和戦前期、実際の事件や戦争の速報に対して即時発行され、今以上に当時の人々にとって大きな影響力のある情報ツールでした。また、大きさについて、現在は新聞本紙と同サイズのものが一般的ですが、当コレクションの号外は手のひら大の小さなものや色刷りなど、時代や状況によって変化する様々な発行形態のものが集められています。当文庫初代主任でジャーナリストであった宮武みやたけ外骨がいこつが蒐集した、郵便はがきに印刷され購読者へ直接届けられた珍しい号外も含まれます。

日露戦争の頃、購読者獲得のため、新聞社による空前の号外発行競争が全国的に繰り広げられました。戦況が刻々と変化するにつれ、第二号外、第三号外など同じ日に複数回発行されている事例を当コレクションで多く見ることができます。

「郵便はかきノ新聞號外」と書かれた新聞の号外
宮武外骨が蒐集した郵便はがきの新聞号外

新聞号外は、劣化しやすく、サイズが多様で扱いに注意が必要とされましたが、今回の公開で閲覧の利便性が飛躍的に高まりました。報道の歴史資料のひとつとして、時代の「瞬間」、熱気を多くの方に感じていただければ幸いです。

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蔵出し!文書館 The University of Tokyo Archives第41回

収蔵する貴重な学内資料から
140年を超える東大の歴史の一部をご紹介

年史編纂と大学アーカイブズ事始

東京大学は2027年に創設150周年を迎えます。ことし10月には150周年に向けた事業がスタートし、事業推進のシンボルとなるロゴマークも発表されました。

創立100年時を振り返りますと、記念事業のひとつとして『東京大学百年史』の編集・刊行が計画され、「東京大学百年史編集室」(以下、編集室)がその任にあたりました。編集室は、編集事業の過程で収集した大学関係資料を沿革史編纂にとどまらず、学内外で広く活用し、さらには保存と研究を行う組織「大学アーカイブズ」を東京大学に設立しようと早い段階から構想していました。

「学内広報 昭和55年度」と書かれた学内広報の表紙
「東大百年史編集室通信」No.33~No.39が収録された『学内広報 昭和55年度』

そこで編集室は、1980年に大学アーカイブズの制度調査と情報収集のため、国内外の大学を対象とするアンケートを実施しました。『学内広報』No.485掲載の「東大百年史編集室通信」(以下、編集室通信)No.33では、このアンケートに対して国内79校から回答を得たこと、そのうち大学アーカイブズという名称は持たずとも、大学に関する資料や公文書類を保存する施設が「ある」と回答したのは19校だったことを報告しています。一方、「編集室通信」No.35では、諸外国からの反応について「9月16日現在調査総数38カ国、のべ439校のうち20カ国、のべ157校から回答があった」、「これまでのところアーカイヴ〔原文ママ〕が設けられていない回答はわずか10校」と書かれており、

「東大百年史編集室通信 No.35」と書かれた東大百年史編集室通信の記事
「東大百年史編集室通信」No.35

海外においてはアーカイブズをおかない大学のほうが珍しいといえる状況がうかがえます。編集室が行った事例調査については、その一部が1983年7月発行の『東京大学史紀要』第4号に報告されています(当館サイトに掲載あり)。

そして編集室は、百年史編集事業を終えた1987年4月に「東京大学史史料室」として念願の大学アーカイブズを設立し、現在は当館がその役割を継承しています。次の百五十年史編纂事業には当館のどんな資料が活用されるのか楽しみです。

(特任研究員・千代田裕子)

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ワタシのオシゴト RELAY COLUMN第199回

総括プロジェクト機構 国際建築教育拠点総括寄付講座 SEKISUI HOUSE – KUMA LAB
特任専門職員
勝 博子

唯一無二の研究室と共に

勝 博子
T-BOXに展示してある模型の前で

建築学科の隈研吾研究室を経て、現在はSEKISUI HOUSE – KUMA LABの秘書として、気付けばもう9年以上隈先生とお仕事をしています。私は研究室のアドミニストレーション全般を担当しており、国際的に著名な建築家や講師陣とも直接やりとりをしています。最近は海外の往来が再開したことでイベントなども増え、緊張感が増すとともにますます忙しくなってきました。

工学部1号館4階にある研究室はKUMA LAB設計でとても心地良い空間です。隣には3Dプリンターやレーザー加工機などを揃えたデジタルファブリケーション施設「T-BOX」があります。ここはモノづくりに励む学生の活気がいつも満ち溢れています。

KUMA LABには他にはないワクワクすることがたくさんあり、新しいアイデアが日々生まれています。そんな研究室をみなさんが大いに活用できるよう全力でサポートしていきたいと思います!

隈研吾氏と研究室の人との集合写真
隈先生と研究室スタッフの皆さんと
得意ワザ:
早起き!人生で一度も寝坊したことがない
自分の性格:
断捨離好き!家族にやりすぎて怒られます
次回執筆者のご指名:
出水稚子さん
次回執筆者との関係:
隈研究室つながりです
次回執筆者の紹介:
美味しいものに詳しい♡
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ぶらり構内ショップの旅第10回

サブウェイ@本郷キャンパスの巻

東大店限定「デストロイヤ―」

工学部2号館1階に店を構えるサンドイッチチェーン、サブウェイ。コロナ禍の影響で2月に閉店を決めましたが、惜しむ声が多く寄せられたことから営業を継続することになりました。カウンターにあるメニューでひときわ目をくのが、ローストビーフがこれでもかと盛られた「デストロイヤー」。東大店限定のこのメニュー。全部で4種類あります。通常の2倍のローストビーフ(100g、10~16枚)が挟まれた「デストロイヤー」、3倍の「キングデストロイヤー」、そして4倍の「ゴッドデストロイヤー」

松村多輝子さん
店長の松村多輝子さん

最高峰の「インフィニートデストロイヤー」には5倍の250g(25枚~35枚)のローストビーフが盛られています。ビジュアル的にもインパクト大のこのメニュー。もともと東大の学生がローストビーフサンドイッチに、追加でローストビーフをトッピングしたことから始まったとか。塩とこしょうで味付けられたローストビーフとわさび醤油の組み合わせは、意外とさっぱりと食ベれると話すのは店長の松村多輝子さん。このメニュー目当てに来る人もいるそうです。

通常メニューで人気があるのは、えびアボカドや肉系のもの。最近だと1月17日までの限定メニュー、3種類の具材を贅沢に挟んだイタリアンジェノバクラブとアメリカンBBQクラブが断トツの人気で、お店に来る約半数の人が購入しているそうです。毎朝お店で焼いているパンは4種類から選べます。

そしてサブウェイといえば、カスタマイズ。既存のメニューにてり焼きチキンをトッピングしたり、スパイシーなものに卵を足して味をマイルドにしたり……とメニューが何倍にも膨らみます、と松村さん。「カスタマイズできるというのがサブウェイの魅力です。さまざまな組み合わせを楽しみに、昼休みや授業の合間に来ていただけると嬉しいです」

ローストビーフ、トマト、レタスを挟んだサンドイッチ
営業時間

平日10時~15時(短縮営業中)
定休日:土日祝
ローストビーフが250g盛られた「インフィニート・デストロイヤー」(2,220円)
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インタープリターズ・バイブル第184回

カブリ数物連携宇宙研究機構教授
科学技術インタープリター養成部門
横山広美

専門的助言をどう行うか

多くの構成員が、社会に対して専門的助言を求められる場面に数多く接しているのではないだろうか。専門的助言は必要とする場面や相手によって、同じ内容でも提案の仕方や選ぶ内容が大きく異なる。コミュニティ内、政府の審議会、あるいはメディアに対して、どのように専門知を用いた助言をしていくべきなのか。

アメリカの政治学者ロジャー・ペルキーは、特に政府に対する専門的助言を4つの領域に分けて説明している。中でも、政府が政策をまだ持っていない際に、政策オプションを複数提示する「誠実な斡旋者」が好ましいと考えているようだ。社会がどのオプションを選ぶのかは、専門家ではなく政治側の責任である。

研究者として譲ってはいけないのは、専門知に基づいている助言だろう。そもそも専門家が意見を求められる理由がそこにあるからだ。こうした態度は、時に科学主義だと揶揄されても重要である。同時に政治にはじかれず、かつ適切な専門知をインプットする難しさは並大抵でないであろう。第8波を迎えるCOVID-19(コロナ)でも、難しい状況が続いている。

コロナでは世界共通の科学知が広くオープンになっている。国内でも、一部の研究者たちがいち早く論文データや専門知を元に発信活動を続ける様子は大変心強い。それらのスタイルは、研究者の王道スタイルと言えるであろう。しかし日本の政策、いやそのはるか手前の科学的助言がそれに追いついていないケースが散見された。そうした中、こうした科学的不備を指摘する、政府への助言者集団の「外部」にいる専門家たちが活躍した。一例は最初に定着した接触感染の消毒手洗いから、空気感染を重視した換気に重点を置いたギアチェンジの推奨だ。ピルケーの分類では誠実な斡旋者ではなく、むしろ科学主義者に相当するかもしれない。しかも専門領域は必ずしも専門ではない。コミュニティの外からの方がむしろ助言しやすいという現実があるのかもしれない。

筆者の提案は、このような状況においては、専門を同じくする数名以上のグループで提案をすることだ。これを著者は「グループ・ボイス」と呼んでいる。

コロナについてはもともと最初から、政府に助言をする専門家集団の背景に、こうした先端の専門知をサーベイし、エビデンスを揃えるチームが学会のサポートなどを得ながら構成されるべきではなかったのかと感じる次第である。

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ききんの「き」 寄附でつくる東大の未来第38回

渉外部門
アソシエイト・ディレクター
高橋里沙

寄付をかっこよく!卒業生本音トーク

10月15日に「東大卒『母校にお世話になってない』ってそれホント!?~東大卒ブランドは「寄付」で守る!~」と題し、母校へ寄付をしている卒業生によるオンライントークイベントを行いました。

ゲストには、朝倉祐介さん(シニフィアン株式会社共同代表)、小田部幹さん(本学職員)、和家尚希さん(マイクロソフト米国本社)の3名をお招きし、寄付の理由等を伺いながら、「日本や東大の寄付文化」や「2027年に150周年を迎える東大に対する思い」についてお話しいただきました。

経営者である朝倉さんからは、以前はあまり注目されていなかったスタートアップがここ数年かっこいいと思われている現状から、「寄付がかっこいい」という雰囲気を作っていくことが大事ではないかというご意見をいただきました。また、日本一という理由以外に、具体的に行きたい理由のある大学になってほしい、東大だからこそ日本の教育を変えていけるはずだ、という期待の言葉もいただきました。

在学時からラグビー部OB・OGの多大な恩恵を感じていた小田部さんは、それに対する恩返しとして現役部員への寄付を行っているとのことでした。東大全体に対しての共感が難しくても、小田部さんにとってのラグビー部と同様に個々人や研究を見ていくと応援したくなるものがあるはずで、職員としては、自分が職員になった初心を思い返す「ツール」としても寄付は使うことができる、という興味深いお話も伺いました。

和家さんからは、「寄付」という言葉は堅苦しく聞こえるが、日本にはお金で好きなものや人を応援するという感覚は既にあって、そこからみんなで楽しく寄付によって応援していく動きになると、より寄付の魅力が増すのではないか、という示唆に富むご意見をいただきました。また、海外大学への進学等進路の多様化が進む中、優秀な人材を引き付けられるよう、東大にある魅力的な活動をもっと発信してほしいという奨励の言葉もありました。

朝倉祐介氏、小田部幹氏、和家尚希氏の3人が映っているZoom画面
↑オンライン対談の様子

今回のイベントを通じ、寄付者や卒業生と「対話」を続け、いただいた期待や言葉に応えていくこと、そしてともに東京大学を創り上げていくことが、東京大学がより魅力的で、愛される大学であり続ける一歩になるのではないかと感じました。

配信動画はこちらから↓
「東大卒「母校にお世話になってない」ってそれホント!?」のYouTube動画のQRコード

東京大学基金事務局(本部渉外課)
kikin.adm@gs.mail.u-tokyo.ac.jp