MESSAGE ご挨拶

学術における卓越の実現を目指して
東京大学卓越研究員制度

Teruo Fujii

藤井 輝夫

東京大学総長

 現代は戦争やパンデミック、気候変動など、私たち人類社会の目の前に地球規模の課題が突き付けられている時代であると言ってよいと思います。これらに関連して世界の様々な場所で差別や分断が広がり、社会の中で格差の問題や閉塞感が露わになってきています。
 このように、これまで前提としていた諸条件や常識が大きく変化する、しかも年単位で変わっていく今日だからこそ、私たちはアカデミアとして、学術が果たすべき役割をしっかりと意識しつつ、何ができるのかを考え、速やかに行動に移すと同時に、過去から未来に向けて長期を見渡す視野にも立って、新しい社会の構築に取り組まねばならないと考えています。
 このような考え方に基づいて、東京大学では、新たな基本方針であるUTokyo Compass「多様性の海へ:対話が創造する未来」を公表しました。そこでは、東京大学を「世界の誰もが来たくなる大学」にしていくことを大きな柱の一つとしています。国内外から新進気鋭の若手研究者が集まり自由に研究に専念できる環境を整備することで、卓越した若手研究者を育成するとともに、彼らの活躍する姿をロールモデルとして、優秀で意欲的な学生が研究者を志向する好循環を生み出していきたいと考えています。次世代の知の創造に寄与する卓越した若手研究者をはぐくむためにも、若手研究者の支援をますます充実したものとしなければなりません。
「東京大学卓越研究員」制度は、東京大学に着任して3年以内の卓越した若手研究者が自らの研究テーマを追求し、自立して研究に取り組む環境を整えるためのスタートアップの支援を目的に、2016年度から始まりました。その後も、若手研究者たちの研究の場を支える学内外の声に耳を傾け、より多くの、より多様な卓越した若手研究者の自立・育成に資する制度であり続けることを目指し、定期的に制度内容を見直してきました。従来の若手研究者自立支援制度「東京大学卓越研究員(推薦型)」に加え、2018年度からは、国際的にも活躍できる学内外・国内外の若手研究者を受け入れ、新たな領域を切り拓き将来の学術を担っていただくことを目的とした、若手研究者育成支援制度「東京大学卓越研究員(公募型)」も実施しています。

 ご存知の通り、近年、日本の研究基盤が弱くなっているのではないかという指摘がなされています。国の財政難に伴い、若手研究者の安定的ポストが不足しているとも言われており、大学院博士課程への進学率も大幅に減少しています。しかし、これからの社会に、若い研究者の柔軟な発想による新たな学術の推進は不可欠です。研究者の皆様にはぜひ「東京大学卓越研究員」制度を活用して、研究に没頭する環境を確保していただければと思います。それぞれの分野で世界のリーダーシップを担うにふさわしい成果をあげられることを期待しております。
お問合せ
〒113-8654 東京都文京区本郷7丁目3番1号
東京大学 人事部(卓越研究員担当)
Email : UTokyo-Takuetsu.adm@gs.mail.u-tokyo.ac.jp