NO.1425

  

一般ニュース

産学連携本部
シンポジウム「中長期的な視点に立った多対多型産学官連携モデル」
―大学等産学官連携自立化促進プログラム―

 基礎・基盤分野を重視した産学官連携の新しい形を議論するシンポジウム「中長期的な視点に立った多対多型産学官連携モデル」(主催:産学連携本部)を2月29日(水)、山上会館で開催した。文部科学省から追加交付を受けた補助金での調査研究報告会として実施。産業界と大学関係者約100名が参加し、現在の産学連携活動の課題提起を含め、産業界と大学からこれまでの1対多、多対多の連携の長所と課題の紹介、米国における競争力の向上を図る目的で始まった「Engineering Research Center (ERC)」をテーマにしたパネルディスカッションなどを行った。



 第一部「産学連携に関する施策」の中で、文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課 里見朋香課長は、「組織対組織でつながり始めた産学官連携を、今後はグローバル化・オープンイノベーションの観点で育てていくことが重要」として、初期段階から金融機関や仲立ちをする多様なプロモーターなどを巻き込み、ネットワークを強化することが重要であるとした。また、経済産業省産業技術環境局大学連携推進課 進藤秀夫課長は、産学連携活動を明確にミッションとして位置づけるためのインセンティブシステム再構築について触れ、「早い段階での議論によって研究者に社会ニーズをインプットできるため、共同研究のやり方の幅を広げていくという意味で、早期の産学相互の意見交換に注目している」とした。本シンポジウムの主催者である産学連携本部 太田与洋教授からは、「十数年間の産学連携活動の基盤整備に続き、次に何をすべきか具体的に検討したい」として、大学研究者が自らの意志でオリジナリティを追求し、研究・教育活動をしながら生み出しつつあるシーズと、企業が確信を持てない将来ニーズが交わるセグメントにおける産学官連携スキームの必要性に対し、共通認識を持つことへの期待が示された。
 第二部「現状モデルの紹介(長所と課題)」では、民間資金ベースの例として、情報理工学系研究科 江崎浩教授から「東大グリーンICT プロジェクト」が紹介された。コンプライアンス上の制約が少ない民間資金ベースの利点を活用して、「多対多型の産学連携においては、共生することに対しての勇気を持つことと、産業セグメントにおけるステークホルダーをどれだけ取り込めるか、産業界を進化させ、いかにグローバルに戦わせるかが重要な視点」とした。また、企業側から見た産学連携の例として、三菱化学褐o営戦略部門RD 戦略室 中村友久部長が、同様の方式で有機系エレクトロニクス・デバイス開発に取り組んだ「京大アライアンス」について報告。「産学連携で生み出すべきものは技術ではなく価値。異業種企業連合および技術の垂直連携はコンソーシアムを組みやすい」と、情報のオープン化が難しいとされる産学連携において、京大アライアンスで行われた垂直連携のメリットを挙げ、企業の事業戦略にマッチする将来技術の基盤整備や、社内にはない技術の獲得など、企業の経営者側から見た産学連携の位置づけを強調した。
 続いて、公的資金ベースによる事例として、工学系研究科 大津元一教授が「NEDOナノフォトニクス特別講座」を紹介。国際市場の開発を目的に経済産業省の指導で作られた経緯に触れ、実情として「産学連携活動を始める際には企業間の調整が必須で、有能なマネージャーの存在が決め手。運営費交付金を減額されるといった“プロジェクト貧乏”の発生にも注意する必要がある」などと課題事項に言及した。東京工業大学大学院理工学研究科 谷岡明彦教授は、ナノファイバー研究のための大型装置を作る際に、その実用化技術を並行開発した経緯をはじめ、最後まで懸念事項となった知財の取り扱いや、10本近い共同研究契約を調印するまでに1 年を要したことなどについて具体的に紹介。また、人材育成として学生も対象に含めて実施した「NEDO講座」を取り上げ、「こういった場で学生を教育できることは重要で、NPO法人の学会を発足させ、このプロジェクトの活動を継続させる」と現状を報告した。
 続いて行われたパネルディスカッションでは、本学産学連携本部産学連携研究推進部 増位庄一プログラムオフィサーが「米国大学調査に基づく中長期的視点に立った基礎・基盤分野に配慮した複数企業との産学官連携モデル検討の提案」と題して、米国産学官連携研究センターにおける先進的なプログラムについての調査結果を発表。大学が主導してプロジェクトの設計運営を行うことの重要性を示し、大学中心の基礎基盤研究を強化した日本型モデルの構想化を提唱した。



 ERCのモデルをベースに行われたパネルディスカッションでは、「自社ですべてのリスクを負えない昨今、優秀な技術を持つ外部機構に投資するのは選択肢のひとつ。多対多型のコンソーシアムであれば喜んで参加する」(鞄立グローバルストレージテクノロジーズ日本研究所 田河育也部長)、「自社内とは全く違う見方や分野への展開の場として活用するのには非常に良い。目的意識を持った参加型の大きな枠組みの中で動くのは非常にやりやすい」(三菱化学褐o営戦略部門RD戦略室 中村友久部長)といった積極的な意見が出された。
 参加者からは「産学官連携について多面的な視点でまとまった議論や実例を聞いたのは初めての経験で、大変有意義だった」「モデル検討の提案にぜひ参加したい」といった声が多く寄せられるなど、今回のシンポジウムを契機として、日本に合ったイノベーションに繋がる多対多型産学官連携モデルの検討開始が見込まれる。

産学連携本部
東京大学産学連携協議会 平成23年度「第2回アドバイザリーボードミーティング」「年次総会」を開催

 東京大学の知と産業界の知を融合させた、社会に役立つ新しい価値の創出を目的に、東京大学産学連携協議会の「平成23年度第2回アドバイザリーボードミーティング(ABM: Advisory Board Meeting)」および「平成23年度年次総会」を3月2日(金)、伊藤国際学術研究センターにて開催した。産業界との連携強化を図ろうと、2005年1月に設立されて以来、会員数は年々増加し、現在734社(2012年2月現在)。産業界と本学の双方向的な連携推進のプラットフォームとして、社会に寄与する価値を多様な形態で創造するための重要な基盤である。
 ABMは同センター特別会議室にて開催され、本学から濱田純一総長、各理事および保立和夫産学連携本部長ほかが出席。産業界から、野村ホールディングス 氏家純一常任顧問、鞄立製作所 川村隆取締役会長、東レ 榊原定征代表取締役会長、鰹ャ松製作所 坂根正弘取締役会長を迎え、活発な意見交換が行われた。



 冒頭、濱田総長は、「東日本大震災の復興支援活動を学内挙げて取り組んでいる。今後は、産業界からもご提案をいただき、ともに復興支援の取り組みを強化していきたい。秋入学構想に関しては、大学での主体的な機構および意識改革を積極的に推進していくので、是非ともご理解とご支援をお願いしたい」と挨拶し、産業界との多面的な連携の意思を表明した。
 続いて保立産学連携本部長が、アントレプレナー道場、科学技術交流フォーラム/国際産学連携フォーラム、シンポジウム「イノベーション・起業の新たな展開」等の活動内容を報告。新たな取り組みとして、復興・支援プロジェクト産学連携提案会や、「アジア・アントレプレナーシップアワード2012」の活動概要を報告した。
 次いで、2008年度ABMでの意見交換をきっかけに活動がスタートした産学コンソーシアム「ジェロントロジー(老齢学)」について、高齢社会総合研究機構 鎌田実機構長がこれまでの活動を報告。最終的な参加企業が45社にまで増え、20回以上の総括議論を行うなど、幅広い分野の産業界からの関心の高まりがあること、東日本大震災の被災地である遠野市と釜石市でのコミュニティケア型仮設住宅設置や、大槌町での仮設コミュニティづくりの支援・研究活動等、学際的に多岐にわたる課題解決を図っている点など、活発な活動内容が紹介された。
 産業界からは「短期間にもかかわらず、非常に重要な活動を幅広く展開しており、個々の活動内容も大変興味深い。ご努力に敬意を表したい」といった賞賛の言葉を多数いただいた。本学への要望として、「雇用延長のインセンティブや補助・支援を組み合わせた啓蒙を期待したい」「国を活性化するためにも、シニア世代の活用は非常に重要。東大がイニシアティブをとり、発信してほしい」「各自治体への財政的・資金的な具体化提案を合わせて行い、モデルケースを作れば、国全体に波及しやすくなるのでは」といったご意見を得た。
 最後に、松本洋一郎理事・副学長が「日本は課題解決先進国として、ジェロントロジーにおいてもイニシアティブがとれる。本学はその中心として、世界に打って出られるような仕組みづくりを提案・構築していきたい」と締めくくった。
 引き続き、地下2階の伊藤謝恩ホールで行われた東京大学産学連携協議会年次総会には産業界から262名の参加があった。



 冒頭の挨拶で濱田総長は、東日本大震災後1年を経た現在も精力的に取り組んでいる復興支援を継続的に実現するためにも、「行動シナリオ」を確実に実現する重要性について言及。続いて、鰹ャ松製作所 坂根正弘取締役会長の来賓挨拶の後、保立産学連携本部長が当本部の活動を報告。また、特別講演として、工学系研究科航空宇宙工学専攻 中須賀真一教授が、「超小型衛星による新しい宇宙開発・利用への挑戦」を行った。



 研究発表スペースでは、今回初めての試みとして、当本部が編集する『産学連携プロポーザル』にまとめられた共同研究をテーマとしたポスターセッションを設置。研究者自らが発表を行い、その研究成果や研究リソースを直接聞ける貴重な場が設けられたこともあり、研究者を囲み、会場の随所で和やかに交流が図られた。
 ABMをきっかけに発足したジェロントロジーの活動、大震災発生後の協力・支援活動から得た教訓など、本学における産学連携活動がさまざまな形で実を結びつつある。今回の産学連携協議会ABMおよび総会が、さらなる連携の強化に繋がることを期待している。

東京大学産学連携協議会:
http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/jp/kyogikai/message.html

産学コンソーシアム ジェロントロジー:
http://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/jp/research/network_gerontology.html

本部資産課
平成23年度ノートPCリユース事業の実績報告について

 資産管理部資産課では平成21年6月に「ノートPCリユースオフィス」を設置し、教職員の皆様よりご提供いただいたパソコンを再生し、学生に無償レンタルしている。

 昨年度も皆様のご協力により、83名の学生にパソコンを手渡すことが出来ました。今後とも、本事業へのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。



【リユースの対象となるノートパソコン】
研究室等で使わなくなったノートパソコンで、WindowsXP以降のライセンスシールが添付されているもの。(現在のところ、Macは対象外です。)

【ノートパソコンの回収連絡先】
美津野商事潟Vステム事業部(本学の委託業者)
E-mail:reuse@mizuno.net
TEL:03-3943-0181 FAX:03-3943-5181
(担当:川崎・三浦)

【事業への問い合わせ等】
ノートPCリユースオフィス(資産管理部資産課内)
E-mail:pcreuse@adm.u-tokyo.ac.jp 内線:22135
(担当:小川・戸田・牧迫)

本部人材育成課
平成24年度新任教職員研修を開催

 4月5日(木)から6日(金)にかけて、安田講堂において平成24年度新任教職員研修が開催され、5日は741名、6日は698名の参加があった。
 今回で3回目となる本研修は、新任教職員が東京大学の構成員として必要な法令、規則等の基本的知識を取得することを目的とし、本学におけるコンプライアンスの徹底並びにFD・SDの取組みの一環として実施された。



 開講の挨拶において、清水孝雄理事・副学長は、新任教職員への歓迎の言葉とともに、「東京大学のような大きな組織には、しっかりした戦略とガバナンスが必要であり、定められたルールは守る必要がある」「東大の教職員は社会的に注目される対象であり、そうした緊張感は常に持つ必要がある」として、本学教職員の責務、心構えについて述べられた。
 さらに、「大学には真理の追究という学術的責務と同時に、先進的な教育・研究・診療などを通して社会に貢献する責務があり、常にこの2つのバランスをとる必要がある」「この大きなミッションを担う事は大変なことだが、大変誇りのある、また、明日の日本に向けてやりがいのある仕事である」と新任教職員を激励し、「本学の基本原則である東京大学憲章と濱田純一総長の行動シナリオの実現に向かって努力してほしい」と力説された。
 そして最後に、前回の研修で濱田総長が述べられていた「ルールを守るだけでなく、より良いルールとは何かを考えてほしい」という言葉を紹介し、「ルールと真剣に向かい合うには、何よりまずそのルールをこの研修でしっかりと理解してほしい」と述べられた。
 最終日には、参加者の理解度を測るため確認テストが実施された。限られた日程の中で、多岐にわたる内容であったが、新任教職員が本学で勤務していく上での基礎的知識を集中して得られる有意義な機会となった。



 本研修の講義内容と講師は次のとおりである。

『平成24 年度新任教職員研修日程』
○4月5日(木)9:35〜17:25
・「挨拶」 理事・副学長 清水 孝雄
・「高等教育政策、国立大学法人の仕組み」 副理事・経営支援担当部長 鈴木 敏之
・「学務・学生支援」 教育・学生支援部長 富田 靖博
・「監査」 本部監査課長 遠藤 勝之
・「情報セキュリティ・情報倫理・情報システム」 情報システム本部副本部長・准教授 玉造 潤史
・「研究」 本部研究推進課長 糸井 和昭
・「外部資金」 本部外部資金課長 根本 義久
・「ハラスメント」 ハラスメント相談所チームリーダー(専門員) 矢野 ゆき
・「アカデミックハラスメント」 学生相談ネットワーク本部学生相談所長・教授 倉光 修
・「メンタルヘルス」 学生相談ネットワーク本部・教育学研究科教授 佐々木 司、学生相談ネットワーク本部学生相談所長・教授 倉光 修

○4月6日(金)9:30〜17:15
・「本学の財務状況」 本部財務課副課長 蔀 正規
・「物品・サービスの購入」 本部契約課副課長 渡邉 仁之
・「出張旅費の仕組み」 本部契約課長 片桐 徹
・「会計システム」 本部決算課長 山ア 正人
・「資産の管理」 本部資産課副課長 渡邉 慎二
・「コンプライアンス基本規則」 本部法務課長 加藤 貴彦
・「情報公開」 総合企画部長事務代理・本部総務課長 吉田 博之
・「安全保障輸出管理」 安全保障輸出管理支援室長 渡部 俊也
・「産学連携」 産学連携本部知的財産部長 小蒲 哲夫
・「就業規則・服務」 本部労務・勤務環境課長 増田 浩一
・「環境安全・防災」 環境安全本部 企画調整部長・教授 土橋 律、安全衛生管理部長・教授 大久保 靖司、主幹・准教授 刈間 理介

バリアフリー支援室
「平成24年度新規採用チームコーディネーター研修会」開催される

 バリアフリー支援室は、4月18日(水)に大学院理学系研究科附属植物園・本園(小石川植物園)において「平成24 年度新規採用チームコーディネーター研修会」を開催した。
 本研修会は、障害のある職員の業務をコーディネートする職員に対し、本学のバリアフリー支援に関する理解の促進を図ることを目的とし、昨年度から実施している。今回は、対象となるチームコーディネーターが所属する部局の支援実施担当者にも参加を呼び掛け、7名が受講した。
 開会に先立ち、若原恭バリアフリー支援室本郷支所長から挨拶があり、本学のバリアフリー支援の現状と、受講者に対するコーディネーター業務への期待が述べられた。
 午前の部では、始めに、吉田雅彦本部人材育成課長から東京大学職員としての在り方及び本学の障害者雇用の現状について説明が行われた。次いで、矢口隆紀バリアフリー支援室係長から、バリアフリー支援室の概要及び支援体制について具体的な説明が行われた。その後、東京経営者協会障害者雇用アドバイザー中居紀二氏から、障害者雇用の概要及び障害者雇用におけるコーディネーターの役割について講演が行われた。
 午後の部では、理学系研究科附属植物園阿部紗智子特任専門職員から、附属植物園における障害者雇用の現状及び知的障害や自閉症の特徴について説明があった。次いで、受講者が3グループに分かれ、当日業務について指示方法、対応方法を協議してから、附属植物園で働く障害のある職員とともに、園内のトイレ清掃、落ち葉掃き、ゴミ拾いなどの実習を行いながら、コーディネーター業務について考える機会を持った。実習終了後は、受講者全員で一日を振り返り、感想や意見を出し合う中でコーディネーターの役割を改めて認識し合った。
 最後に、毎日行われる障害のある職員の「帰りの会」を見学し、本研修を締めくくった。





部局ニュース

先端科学技術研究センター
木製3m風洞を特別公開

 先端研発足25 周年事業の一環として、風洞運営委員会(委員長・岩崎晃教授)は3月13日(火)、戦後初の国産旅客機「YS−11」や総飛行距離の世界記録を樹立した「航研機」の開発実験が行われた風洞実験棟(1号館)の木製3m風洞の特別公開イベントを開催した。
 木製3m風洞は、駒場リサーチキャンパスがまだ帝国大学航空研究所だった1928年に設置された今なお現役の実験施設で、一般向けに稼働した風洞を公開するのは今回が初めて。1号館内には風洞で用いられた実験器具や風洞の歴史を紹介するパネルなどを展示する「風洞ギャラリー」が設置され、来場者が興味深そうに見入っていた。
 特別公開では、7回に分けて風洞を動かすデモンストレーションが行われ、公募で集まった一般の方約80人や元技官、元先端研客員教授の立花隆さんら計約100人が参加。風洞の中央に小型風車を設置して、風洞の人工的な風を利用した発電の模擬実験が行われた。ごう音とともに風洞が稼働し、風車が回り出すと、見学者からは歓声が上がった。
 ギャラリーは3m風洞がある実験室の入り口に設置され、風洞実験棟で保管されていた携帯用の計算尺や風洞の性能を測る実験器具のほか、航研機(航空研究所長距離機)の模型と世界記録を樹立した際に授与された証書などが展示された。ギャラリー化にあたっては、約半年前から風洞運営委員会や先端研有志が風洞実験棟内の清掃や整備を行って準備を進めていた。
 また、この日の特別公開に合わせて、14号館カフェでは、航空研究所時代から現代までの図書室に残された「蔵書印展」(図書室主催)のほか、特別公開記念講演会も開催された。



大学院農学生命科学研究科・農学部
緑地植物実験地 閉所式を開催

 3月24日(土)、千葉市花見川区にある農学生命科学研究科附属生態調和農学機構緑地植物実験地の閉所式が執り行われた。この地は、60年余り前の昭和29年に園芸実験所(その後、緑地植物実験所へ名称変更)が開所されて以来、長らく緑地植物に関する教育研究の場となってきた。しかしこのたび、その機能を西東京キャンパス(仮称)へと移転することとなった。これに先立つ平成22年4月1日、緑地植物実験所と西東京市にある附属多摩農場が改組され、演習林田無試験地の教育研究機能を取り入れて、同附属生態調和農学機構が設立された。西東京への移転作業が順調に進み、ほぼ平成23年度中に移転作業が完了する見込みとなったことから、この日、閉所式を執り行う運びとなった。
 当日は、13時より緑地植物実験地の現地見学会が開かれ、その後、隣接する検見川運動場のセミナーハウスに場所を移して、閉所式の式典と講演会が行われた。参加者は、園芸実験所・緑地植物実験所を支えた元教職員、この地で研究生活を送り、あるいは実習を行った卒業生、現生態調和農学機構の関係教職員、農学部事務職員など、約40名を数えた。
 式典では、長澤寛道農学生命科学研究科長、松本洋一郎理事・副学長、小林和彦生態調和農学機構長、北村文雄元緑地植物実験所長から挨拶があり、その後、小林和彦機構長が閉所を宣言した。つづいて、武内和彦教授から、緑地植物実験所の足どりと西東京における今後の展開について講演があり、これまで培った有形無形の資産を活かしつつ、農林業における生態系サービスなどの分野も強化していくという、緑地研究分野の今後の展開が語られた。さらに、堤伸浩教授より、園芸実験所時代より収集・開発し、今では国内屈指の品種数を有する花ハスコレクションを用いた研究の可能性について講演が行われた。
 その後の懇親会では、緑地植物実験地の懐かしい風景のスライドが映し出されるとともに、閉所式のために用意された緑地植物実験地の八重桜の塩漬けが振る舞われた。文字通り、思い出話に花が咲くひとときとなった。
 緑地植物実験地閉所は残念であるが、西東京キャンパス(仮称)への移転により、緑地研究がより豊かな実りを結ぶものと期待される。



先端科学技術研究センター
石川県と再生可能エネルギー分野で協定を締結

 先端科学技術研究センターは石川県、石川県産業創出支援機構と3月29日(木)、再生可能エネルギー分野の研究開発の連携・協力に関する協定を結んだ。先端研が自治体と協定を結ぶのは今回が初めて。
 中野義昭所長は協定式で、「石川県には相互に利益を出せるWIN WINの種がいっぱいある。大学が積極的に現場に出て、貢献できることを実証したい」、谷本正憲知事は「県内にはきらりと光る中小企業がたくさんある。互いに高め合っていけるよう連携をより強固なものにしたい」とそれぞれ決意を語った。
 6月には石川県での先端研の活動拠点を金沢市の県地場産業振興ゾーンに設置。2カ月に1回のペースで太陽電池など再生可能エネルギーを専門とする教授を石川県に派遣し、セミナーを実施する。



大学院工学系研究科・工学部
テクノサイエンスカフェ『見て触れてナットク!旅客機の最新技術』の開催

 3月31日(土)に大学院工学系研究科主催、国際工学教育推進機構及び大学発教育支援コンソーシアム共催によりテクノサイエンスカフェを開催した。当日は小中高生とその保護者を合わせて約90名の参加があった。6回目となる今回のテクノサイエンスカフェでは、航空宇宙工学専攻の4つの研究室の協力により「空気力学」「構造と材料」「推進」「制御」という複数の側面から旅客機の最新技術を紹介することができた。
 テクノサイエンスカフェは藤本浩司航空宇宙工学副専攻長の挨拶に始まり、鈴木真二教授による最新の旅客機についての講義があった。その後参加者は4班に分かれて順に研究室を訪問した。



 参加者は4つの研究室を訪問する中で、飛行機がうまく飛ぶために必要な条件や、それを実現するために必要な材料・構造を知った。大きな推進力と引き換えに起こる騒音への対策研究にも触れ、さらに航空機の制御の仕組みや操縦方法も学ぶことができた。このように具体的な研究を間近に見ることで、小中高生については航空機の研究が将来の選択肢の一つとして加わった可能性がある。終了後のアンケートでは「工学への関心が高まりましたか」の問いに「とてもそう思う」「少しそう思う」と回答した小中高生が約90%に上った。自由記述欄では「マイクロジェットの研究がしたい」等の具体的な感想も多かった。さらに運営に関わった学生へのアンケートでは「説明することで自分自身の知識を整理したり見直したりすることができた」という回答が過半数を超え、学生側にも効果があったと考えられる。
 テクノサイエンスカフェは、参加者にとっては将来の目標を思い描くきっかけになるものであり、学生にとっては知識を整理したりコミュニケーション能力を高めたりする機会を得られるという、双方に効果がある企画と言えそうだ。

情報基盤センター
スーパーコンピュータシステム柏拠点開所式を開催

 情報基盤センターでは、4月2日(月)に柏キャンパス第2総合研究棟において、スーパーコンピュータシステム柏拠点開所式を開催した。式典では松本洋一郎理事・副学長の挨拶に始まり、岩本健吾文部科学省研究振興局情報課長や平尾公彦理化学研究所計算科学研究機構長からご祝辞をいただいた。
 柏キャンパス第2総合研究棟に導入された最初のシステムである次期スーパーコンピュータシステム(愛称:Oakleaf-FX)は、ピーク性能1.13 PFLOPS を有しており、従来と比較してピーク性能、消費電力あたりの計算性能ともに約8倍となる高性能・低消費電力なシステムである(有限要素法、差分法タイプのアプリケーションの場合)。愛称「Oakleaf-FX」はその設置場所である柏キャンパスにちなんでいる。
 情報基盤センターは、全国8大学の情報基盤センターより構成されるネットワーク型拠点「学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点」の中核拠点、また革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の拠点として活動している。同センターの運用するスーパーコンピュータは企業も含めた学内外の様々な科学技術分野の研究開発に利用され、また、東京大学大学院で実施しているHPC(High-PerformanceComputing)教育にも活用されている。「Oakleaf-FX」は、これらの活動へのさらなる充実と進歩に貢献し、将来の計算科学を担う人材の育成に資するものとして期待されている。
 「Oakleaf-FX」は4月2日(月)から試験運転を開始し、7月2日(月)より正式サービスを開始する予定である。試験運転期間中の負担金は無料である。システムとサービスの詳細については、情報基盤センタースーパーコンピューティング部門のウェブサイトに掲載している。
http://www.cc.u-tokyo.ac.jp/





大学院経済学研究科・経済学部
学生サポートルーム開設

 大学院経済学研究科・経済学部では、4月に赤門総合研究棟6階に学生サポートルームを開設した。
 近年心理的な悩みを抱える学生が増える傾向が見られ、この対応策として、このたび、学生サポートルームを設置し、経済学研究科・経済学部の学生及び教職員に対し対人関係、心身の健康、進路・学業等の悩みの相談に対応できる体制を整えたものである。
 学生サポートルームは臨床心理士という臨床心理学に基づく専門職の2名で相談に応じ、教員・事務職員とも連携して、サポートしている。
 経済学部進学生に対するガイダンス及び大学院ガイダンスが4月4日(水)に行われ、その中で相談員より、学生サポートルームを紹介され、学生生活を送る上で困ったことや疑問に思ったことがあれば、幅広く相談できるので利用してほしいとの説明が行われた。



生産技術研究所
先進モビリティ研究センター(ITS センター)国際シンポジウム
「International Symposium on ITS Research 2012 in Kuala Lumpur」開催される

 4月14日(土)9時よりマレーシア・クアラルンプールのHotel Armada Petaling Jaya のAtlanta EastBallroomにて、先進モビリティ研究センター(ITSセンター)およびInstitution of Engineers, Malaysia(IEM)の主催でITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)に関する国際シンポジウムが開催された。本シンポジウムは、2008年から毎年(ただし、ITSWorld CongressがAsia-Pacific地域で開催される年を除く)開かれるAsia-Pacifi c ITS Forum & Exhibition のSpecial Academic Program として開催しており、今年はシンガポール、バンコク、台北に続いて4回目となる。ITSの発展のために、交通、情報、機械工学の研究分野の融合と国を超えた共同活動がより重要となっていることから、毎回、様々な国から専門家を招いて開催している。今年は日本、マレーシア、台湾、オーストラリアの4か国14名の専門家をお迎えして各国のITSの情勢報告と意見交換を行った。
 IEMのVincent Chen Kim Kieong会長と須田義大ITSセンター長の開会挨拶から始まった本シンポジウムでは、ITS Japanの天野肇常務理事、ITS MalaysiaのMohamad bin Husin会長のご挨拶も頂き、本セミナーへの大きな関心が示された。第1部ITS Innovationでは、マレーシアのMohamed Rehan bin Karim教授、台湾のJason Chang教授、ITSセンターの牧野浩志准教授の3名が、路車間通信の現状・あり方、ウェブやクラウド技術を活用した新しい公共交通サービス等、益々発展するITSの最新動向に関する発表を行った。第2部Traffic Managementでは、マレーシアのAhmad Farhan Mohd Sadullah教授、東北大学の桑原雅夫教授(ITSセンター兼任教授)、愛媛大学の吉井稔雄教授、オーストラリアのEdward Chung教授(ITSセンター客員教授)の4名が、最新の交通センシング技術・制御技術、ブルートゥースを利用した交通管理技術等について講演した。第3部Vehicle Control & Image Processingでは、ITSセンターの須田義大教授および池内克史教授、マレーシアのRiza Atiq Rahmat教授およびTay Yong Haur准教授の4名が、持続可能なITSのための車両制御技術、最新画像処理技術のITSへの活用、アンドロイド基盤プラットフォームを活用したITSアプリケーション等について講演した。第4部Sustainabilityでは、ITSセンターの大口敬教授および洪性俊助教、タイのSorawit Narupiti准教授の3名が電気自動車(EV)の普及を想定した急速充電ステーションの最適配置、交通シミュレーションを利用した環境評価技術等について講演し、活発な議論が行われた。聴衆のほとんどはマレーシア現地のITS関連専門家・エンジニアであったが、各国、特に日本のITSに関する最新研究動向については熱い興味を示すなど、本シンポジウムは大盛況で終わった。



東洋文化研究所
教職員等歓迎会を開催

 4月19日(木)に東洋文化研究所1Fロビーにおいて、4月に異動してきた教職員等の歓迎会が開催された。歓迎会には教職員のほか、日本学術振興会特別研究員(PD)や外国からの訪問研究員なども加えて総勢50名ほどが出席した。
 歓迎会は、大木康所長の挨拶、前田正史理事・副学長による乾杯の後、歓談に入った。宴たけなわになった頃、教職員や訪問研究員の自己紹介などを行い、20時近くまで続き、日頃あまり面識のない人たちと交流を深めることができた。