【Campus Voice】「東大理学部で考える 女子中高生の未来2021 Online」イベントレポート

 

こんにちは。今回は、2021年7月31日(土)に開催された「東大理学部で考える 女子中高生の未来2021 online」を取材させていただきました!

こちらのイベントは、女子中高生のみなさんに、理学部がどんなところなのか、理学部卒業後のキャリアパス、現役学生が実際にやっている研究などを紹介し、理学部の魅力や進路選択に関する有用な情報をお伝えする機会になればと開催されました。

2021.7.31
リポート/学生ライター
向井小夏(教養学部理科二類2年)

1.挨拶(理学系研究科男女共同参画委員会委員長 河野孝太郎先生より)

「東京大学はみなさんをお待ちしています」

森羅万象を求める理学を発展させる鍵は「多様性」であるということで、理学の研究者にも多様性が求められていると河野先生は話します。「研究者とはこういう人」という固定観念を取り払って、一人一人の個性を大切することが新しい理学を切り拓きます。東京大学では様々な多様性に向けた取り組みが行われており、理学の分野においても多くの女性研究者が当たり前に存在する未来をつくろうというメッセージを感じました。

続いて東京大学理学部についての紹介がありました。
まず、理学部10学科について、扱う学問の内容や学部の特色の説明がありました。

理学部では、どの学科においても最先端の内容について学び、研究する上で必要な技術を身につけることができるようなプログラムが用意されています。この中でも特に印象的だったのは、学生が国際的な視野を養うために全ての講義が英語で行われている化学科です。化学科だからといって、化学だけができればいいわけではないんですね。中高で幅広い科目を学ぶことの重要性を感じました。

次に、東大のキャンパスや研究施設、理学部と工学部の違い、理学部卒業後の進路について紹介されました。
理学部は東京都内のみならず、全国に研究施設があるため、学生や教員、研究者が様々な場所で活躍しています。また、理学部は、自然の本質に迫り、人類の智の先端を切り拓く学問という、好奇心に根ざした研究などを行うシーズオリエンテッド(seeds-oriented)という特徴を持ちます。この点こそが、社会の中での科学技術を重視し、需要に合わせた研究などを行うニーズオリエンテッド(needs-oriented)な工学部との違いです。理学部と工学部で進路を迷っている人は、自分のやりたいことがどちらに近いか、参考にしてみてはどうでしょうか。

学部卒業後の進路については、理学部の多くの学生が大学院に進学する一方で、企業などに就職する学生も一定数おり、多様な進路があるので安心してほしいとのことでした。
  • 理学部写真[1]

2.卒業生の講演1「理学部から行政へ 幅広い進路選択」室田優紀さん

  • 理学部写真[2]


理学部卒業後に、文部科学省に勤めている室田優紀さんにご講演いただきました。
 
研究者ではなく、研究環境や研究者を支える立場の行政官となった室田さんから、ご自身の学生時代を振り返りながら、進路選択に関わるアドバイスや、現在のお仕事の内容について伺うことができました。
 
まず、進路選択の際には、「せっかくなら東大、せっかくなら物理学科」というように、ご自身のやりたいことを妥協せずに叶えようとしてきたそうです。室田さんが自身の進路選択で大切にしたのは、以下の4つのPだそうです。
 
[1] Philosophy(理念)
[2] Profession(職業・仕事・研究内容、やりがい)
[3] People(人・風土、職場環境)
[4] Privilege(権利・給料、保障)
 
大切にしたいことが明確だと、自分の軸を持って選択を行うことができそうですね。
 
また、トップクラスの先生方、優秀な友人に囲まれ、刺激を受けながら自分自身も努力できるので、是非中高生のみなさんに東大を目指してほしいとのことでした。

理系科目は「『覚える』のではなく『身につける』」ことが大事だそうで、中高生のみなさんは是非自分の学習に取り入れてみてください!

また、現在の文部科学省でのお仕事についても伺うことができました。
文部科学省は教育や科学技術といった日本の未来を形づくる重要な分野を扱っており、未来を創造するための政策を作り、実行することが求められています。
  • 理学部写真[3]


未来を予想し、現在の課題を解決するために、研究者の話を理解するための知識、ディスカッションのためのコミュニケーション能力、政策を作り、それを説明するための論理力、机上の空論にとどまらせない実行力が重要で、これらの力の多くを、理学部在籍中に身につけたそうです。

理系分野の知識があるので研究者の方と対等に話せる、研究について知らない人に対しても論理的に説明できる、データリテラシーを持ってデータを扱える、など、理学部での学びが行政官としての仕事の中でも活きているそうです。

最後に理系分野で女性が活躍するフィールドは社会にたくさんあるので、中高生のみなさんも頑張ってほしいとエールを送られました。

3.卒業生の講演2「大学教員としての仕事 -理学部に進学してよかったこと-」 高須昌子先生

続いて、同じく理学部卒業生であり、現在、東京薬科大学の教授である高須昌子先生にご講演いただきました。

まずは、中学、高校から現在まで、勉強や進路に関するアドバイスをまじえながらお話ししていただきました。

高校2年生の時にアメリカ留学に参加した高須先生。この時日本から参加した同期の多くが東京の大学に進学すること、一人暮らしをしたいという気持ちから、東大に行きたいと思ったそうです。しかし、この時京都に住んでいて父親も京都大学を勧めていたため、大学進学の際はまず父親を説得する必要があったそうです。そこで、東大が京大よりも優れている分野を探し、その分野の研究をするには東大の方が良いと父親に話して納得させ、東大に行くことの許可を得たそうです。

受験勉強では、まず東大受験の本を読んで方法論を学び、そこで教科書を読むことが勧められていたので、理系科目の教科書を3社分揃えたそうです。同じ事柄についての記述をそれぞれ比較しながら学ぶことで、理解を深めたとのことでした。中高生のみなさんも、まずは教科書の内容をしっかりと勉強するのが良いかもしれませんね。

理学部に進学して良かったこととして、基礎的な学問を学ぶことができたこと、優れた先生方や同期に出会えたことを挙げられました。

また、中高での勉強も現在のお仕事の中で役立っているそうで、理系科目はもちろん、全ての科目が何らかの形で現在に活きているそうです。特に、英語は、論文の読み書き、国際会議での講演の際に使っていて非常に重要とのこと。また勉強以外でも、部活動や委員会での経験が仕事上のコミュニケーションや共同作業において活きているとのことでした。
  • 理学部写真[4]

進路などで困った時は、本やネットで調べたり、いろいろな人に相談したりして、最終的には自分で決めようと、アドバイスがありました。。

最後の質疑応答で、中高生から「家で集中できない」という悩みが出てきました。高須先生の回答「集中できるところでやれば良い。集中できない理由を考えるのが大事。自制心に頼ってはいけない。」が印象的でした。

同じ悩みを持つ中高生のみなさんは、できない理由を分析し、自制心に頼るだけでなく勉強する環境を工夫するという戦略が取れると良いかもしれませんね。

4. 現役の理学部生による研究紹介

各学科の学生が研究を紹介するために、参加者はブレイクアウトルームに分かれました。研究紹介だけでなく、中高生が学生に直接質問をすることもできました。

ここでは実際に出た質問と学生の回答の一部を紹介します。
 

研究を始めて意外と役に立った科目はありますか?

生物化学専攻学生:英語は必須。論文が読めないと最先端の情報が得られない。また、データ解析の原理を学ぶときの大元は数学だと感じるので、数学も大事。

化学専攻学生:コミュニケーションに英語がまず必要。研究室に入ると周りの人に頼るという手もあるけれど、自分で理解できることを増やすのは大事。
 

英語の発音はペラペラの方が多いですか?どのようにすれば発音がよくなりますか?

化学専攻学生:東大生と言っても英語がペラペラの人ばかりではない。(リスニングのトレーニング方法の一つである)シャドーイングがおすすめ。
 

物理学科では宇宙の研究をする人が多いのですか?

物理学専攻学生:宇宙の研究を行う人が特別多いわけではなく、統計力学、量子力学など様々な分野を研究する人もいる。代によっても分野ごとの人数や割合は違う。
 

勉強が楽しく感じるのはどのような時ですか?

物理学専攻学生:勉強している中で、こことここが繋がっているんだ!というような発見があったとき


中高生のみなさんが活発に質問されていて、終始盛り上がっている様子でした!

5. 参加した中高生からの声

イベント後には参加者にアンケートへ回答してもらいました!その中から中高生の感想を一部紹介します。

「最先端の研究について知る事が出来て楽しかった。」

「全ての学びを積極的に受け取りに行くことの大切さが改めてわかりました。」

「現役大学生の皆さんが楽しそうに研究の話をされているのを聞いて、大学へのあこがれを再確認できました。」

「実際に話を聞けたので、東大生のことが身近に感じられました。」

「いろいろな研究テーマがあったので自分に合うものが見つかりそうだと思いました。」

「東大生のおすすめの勉強法や、勉強するにあたって意識していることが聞けて良かったです。真似したいと思うこともたくさんありました。」

「面白かった!」、「ためになった!」という声が多く聞かれ、中高生のみなさんにとって非常に実りのあるイベントになったのではないかと思います!

6. 筆者の感想

講演者の方や現役学生に対して、参加者が多くの質問を積極的に投げかけており、イベントも非常に盛り上がったのではないかと思います。
 
教養学部二年の筆者自身も、進路選択にあたってためになる情報がたくさん得られました。このイベントが、中高生のみなさんが納得のいく進路を選択する一助となれば幸いです。