【Campus Voice】「女子高校生のための東京大学説明会―リアル東大生や未来の東大生と交流しよう!―with 藤井総長」イベントレポート

2021年10月10日(日)、「女子高校生のための東京大学説明会」がオンラインで開催されました。全国の女子中高生334名、保護者18名が参加(後日の映像配信を含む総申込者数は525名)し、東大の現役学生97名がファシリテーターを務め、活発な交流が行われました。

2021.10.10
リポート/学生ライター
趙誼(総合文化研究科博士課程1年)

イベントスケジュール

1.林香里理事・副学長による開会挨拶

最初に林理事・副学長から以下のとおり開会のご挨拶がありました。

東大には、社会の過去と現在・未来に深く関わるという自覚を持ち、一生懸命に学ぶ学生と教員が集まっています。知の海原を前に、自分たちの知識がまだまだだと深く自覚し、現実に立ちすくんだり、躓いたりすることがありながらも、新たな知と社会を創っていきたいと考えています。しかし残念ながら、そこには女性の姿が圧倒的に不足しています。教員も学生も、もっともっと女性が増えなければ、いつまで経っても男性の価値観が世界の常識という今の社会が続いていくと思います。それは「東大女子」、「リケジョ」などという言葉が、当たり前と見なされる社会です。私は本日参加してくれた一人一人が、東大に来てくださって、私たち教員とともに、これまでの知のあり方を問い直し、日本を、そして世界を変えていく力となってほしいと願っています。
  • 林理事・副学長

2.東大の女性学生支援について(高橋美保男女共同参画室進学促進部会長)

次に、高橋先生から、東大の歴史や進学制度の説明と、女性学生支援についての案内がありました。
女性学生向けの東大独自の経済支援については、さつき会奨学金と理系大学院生向けの東京大学女子学生奨学金があります。
 

 
 

東大には複数の学生宿舎がありますが、三鷹国際学生宿舎においては、約30人の女性新入生枠を設けています。
 

加えて、東大独自の女性学生を対象とした住まい支援を実施しています。キャンパスに近いところで、セキュリティの高い安心安全な住まいを100室程度用意し、月額30,000円の家賃支援を入学から最長二年間実施しています。
 

東京大学キャリアサポート室では、さまざまな就職・キャリア形成の支援をしています。特に女性の学生には、東大女子同窓会さつき会による「女子学生のための就職・進路ガイダンス」、そして社会で活躍する女性の先輩と直接話すことができる、「東大ウーマントーク」というイベントなどが開催されています。

最後に、皆さんに将来の可能性の選択肢を広げる環境を選択してほしいこと、東大はそれに応える充実した教育環境を用意して待っていることを、メッセージとして伝えられました。
  • 高橋先生挨拶

3.学生からの話題提供

ここからは、学生3名による学生生活の紹介です。会場からの質問やコメントにも答えるかたちで行われました。

(1)西塔由香子さん(文科II類2年)

高校1年生のころは、硬式テニス部、茶道部、英語研究部という部活三昧だったため、定期テストで320人中230位という成績になってしまった。夏と冬に参加した短期海外研修で、世界で働く日本人に憧れを抱いたことがきっかけで勉強する気になり、春休みに猛勉強して230位から8位になった。それから勉強が楽しくなり、「せっかくなら日本で一番を目指したい」と思い、東大を目指し始めた。現役では不合格だったものの、一浪して念願の東大文科二類に合格できた。

会場からのコメント:「夢を与えてくれるパターン」、「すごい」と賞賛の嵐
西塔さんのコメント:一回だけ勉強頑張って、成功経験を作っておくと、楽しくなる。

浪人の時にはセンター試験で700点台という大失敗を経験した。それでも折れずに「二次試験の方が大きいから」と自分に言い聞かせながら、受験準備に集中し、逆転合格できたという西塔さん。「地方出身で、圧倒的天才でない場合、東大は執念を持ち続けられた人が行ける大学」とコメントしていました。

Q保護者の方に、浪人は反対されなかったですか?
Aすごく反対されました。そもそも東大を目指すこと自体も賛成してもらえず、「女の子だから、東大に行かなくてもいんじゃない?」と言われ続けたけど、「東大に行きたい」と言って、東大前期一本でいた。落ちたら高卒になるというのは流石に親も反対だったみたいで、浪人させてもらえた。浪人せざるを得ない状況に持っていくのもいいかもしれない。ずるい手ですが。

入学してすぐコロナ禍が始まったせいで、想像していた大学生活を送れず、暫く落ち込んでいた。それを救ってくれたのも、やはり東大という環境だったという。コロナ禍でも周りにアクティブに活動する友人が多く、立ち止まっている自分が恥ずかしくなった。友達の起業を手伝うことになって起業の楽しさを知り、自らも起業した。

東大に2年弱いて思ったことについて、東大は「どの分野にもレベルの高い人がいる(だから天狗になる暇がない)」、「遊ぶことも学ぶことも全力でできる」、「予想外が多くて面白い」、「女性学生向けの住まい支援がありながらも女性が少ないのでもっと増えてほしい」という感想でした。
(2)中川深結さん(薬学部4年)
中学校は地元の公立中学校に通い、県立高校に進学。中学の頃から「とりあえず東大に行きたい」と考え、高校に入学してから「東大現役合格」を目標に、勉強を頑張った。

高校は文理融合プログラムに入っていた。休みを利用して東大を見学しにいったり、五月祭にも参加。修学旅行ではアメリカにホームステイするなど、多彩な高校生活を送っていた。高校三年生の時は東大の入学案内を見て、自らのモチベーションを上げていた。

高校は勉強に比重を置いた生活をしていた。部活には入っておらず、帰宅後は授業の予習と復習、主に英文法、古文、数学に注力したという。二次試験の戦略については、英語と国語で点数を稼ぎ、理数系は最低限をとるという方針で頑張っていた。

高校時代にしておけばよかったこととして、東大の情報収集を積極的にすること、勉強をさぼらないこと(高校時代の勉強は大学入学後にも役立つ)、本をもっと読むこと、などを挙げていた。
(3)松原えみさん(人文社会系研究科1年)
江戸時代の養生について研究している。「養生」は「どうやって健康でいるか」という意味であるが今はあまり聞かない単語となり、当時の資料や文献を用いてその原因を調べている。
高校一年生の冬から高校三年生の春まで、長く体調を崩してしまったため、日々の勉強についていくのに精一杯で、英語と数学の学習は最後まで間に合わず、直前のセンター模試まで800点以下であった。都立高校で、現代史を学習し終わるのはセンターの二週間前だったことなどもあり、現役の受験はうまくいかなかった。不完全燃焼感を抱き、浪人を決意した。

浪人の頃には「効率」を一番意識していたそう。まずは、「とりあえず最低ラインを目指す」ことにし、完璧を求めるのではなく、時には「ここまでやったら最低ラインだろう」という諦めもする。その時松原さんがやっていたこととして、高校生もすぐに取り入れられる勉強法を紹介してくれた。それは自分の持っている問題集の「レベル分け」(下記の図を参照)。レベル3までを完璧にし、レベル4は放置してある程度時間が過ぎたら解いてみて、変わらず解説を見てもわからない状態であれば、また放置するという繰り返しで、効率よい勉強を実現した。
 
高校時代にやるべきだったこととしては、勉強の目的を考えること、教科としてではなくコミュニケーションツールとして外国語を勉強すること、を挙げていた。

松原さんは東大のおすすめポイントについて、1・2年生で教養学部での授業をとってから専攻が決められること、貴重な資料などの研究資源の豊富さ、多種多様な人がいて『当たり前』が覆されること、などを挙げてくれた。
 

4.藤井輝夫東京大学総長への質問

ここからは藤井総長が参加し、女子高校生から募った質問に総長自らが答えました。

Q.東大が女子学生を増やしたいと思っているのはどうしてですか?

A.より多くの女性の学生に、自分のやりたいことを実現することや自分の能力を高めることに、この東京大学という場を是非とも活かしてもらいたいからです。また、教育研究をはじめとするあらゆる場面において、多様な視点が加わることが重要と考えるからです。私は国際的な会議や学会に参加する機会がよくあるのですが、男性と女性が同等の割合で交流することが多いです。それはすなわち、意思決定において、女性の視点もしっかり反映されているということです。しかし残念ながら、海外のトップ大学と比較すると、東京大学は極端に女性の学生の割合が少ない状況です。

東京大学が変わり、今後、より多くの女性の学生に来てもらうことができれば、卒業生として社会に出て、日本における意思決定の場にも女性が増えることになるでしょう。また社会の様々な場所で女性が活躍できるようになってほしいという思いがあるわけです。そうすれば、日本社会がより良くなると思いますし、そこから世界にも貢献できるのだろうと思っています。
 

Q.東京大学の魅力は?

A.皆さんが大学に入った時に、「やりたいことができる」と思うこと、まだやりたいことが見つかってないとしても、「見つけられるのか」と悩むことは大事なことです。東京大学は総合大学で、どの分野においても、トップクラスの教員、研究者、そして豊富な資料と蔵書、大規模な研究・実験施設という環境が整っています。やりたいことがあれば、どこまでも、相当高いレベルまでできるという環境があることが一番大きな魅力だと思います。また、東京大学に入った後にも、初年次ゼミナールや英語のコースなど少人数のアクティブラーニングで、学生が主体的に学ぶプログラムも充実しています。こうしたプログラムを通して、自分のやりたいことを見つけていくこともできます。そしてもう一つの魅力は、「人との繋がり」です。東京大学の卒業生は様々な分野で活躍しています。国内だけでなく、世界でもネットワークが築かれています。大学でつくった繋がりは皆さんの大きな財産になると思います。

 

Q.将来やりたいことが見えない時、勉強のモチベーションを向上させる為には、どうしたらよいですか?

A.勉強ばかりしていると辛いので、興味の幅を勉強以外にも持つといいのではないでしょうか。勉強以外の興味関心・趣味は、気晴らしにもなるし、将来に役立つ可能性もあります。私も浪人生の時には、泳ぎに行ったりして、気分転換をしていました。
 

Q.女性の学生がどうして増えないのでしょうか?

A.東京大学としても、女性学生が増えてほしいと、「女性学生支援について」で説明したような様々な支援を続けていますが、なかなか女性学生が増えていないのが現状です。本日はぜひ、高校生の皆さんから「こうすればもっと女性が東大を受験したくなる」といったアイデアをぜひ教えていただきたいです。
総合司会を務めた植阪友理先生(高大接続研究開発センター准教授)によると、男性と女性の東大入試合格率に大きな差はないそうです。性別に関係なく、受けてさえくれれば、ほぼ同じ確率で合格しているため、ぜひ女性の皆さんに東大を受験してほしいとのことでした。


このほか、現役の東大生がファシリテーターとなって小グループでの交流を行ったり、科類別に分かれて質問を受け付ける時間を設けたりと、少人数での交流の時間もありました。グループ交流には総長や理事も顔を出し、高校生と直接交流をする場面も見られました。
参加した女子高校生からは以下のような感想をもらっています。

「実際に東大生の方と交流でき、アドバイスをもらえたり、パンフレットだけではよくわからないことを知ることができたのがとても良かったです。」

「藤井総長や、教授の先生がたの、女子学生を増やしたい!という熱いメッセージが伝わってきて、自分も女子であることを恐れずに東大を受験しようと思えました。」


このレポートを読んで、少しでも東大に興味を持ってくださったみなさんには、ぜひ東大も進路の選択肢のひとつに入れてもらいたいと思います。