【Campus Voice】「女子中高生のための大学説明会―リアル東大生や未来の東大生と交流しよう!― with 藤井総長」イベントレポート

2024年10月20日、東京大学 ジェンダー・エクイティ推進オフィスが中心に主催するイベント「女子中高生のための東京大学説明会―リアル東大生や未来の東大生と交流しよう!―with 藤井総長」が開催されました。今回は全国各地から当日参加・後日の映像配信を含む200名を超える申し込みがありました。参加者と交流する東大生も40名程度参加し、活発な交流がなされました。

 
2024.10.20
リポート/学生ライター
吉田 朱里(教養学部文科一類1年)

沢山の可能性を持った大学(林香里理事・副学長)


説明会は、林香里理事・副学長の開会挨拶から始まりました。

「東京大学は女性のために沢山の可能性を開く大学だと、私自身、信じています。」

「東京大学には、日本だけではなく、世界トップレベルの研究者が集います。そして世界のトップレベルの実験装置や大きな図書館なども充実しています。それぞれ皆さんの興味関心を追求できるこの大学に、是非入っていただいて、人生の可能性を広げていただきたい。女性として、男性として、あるいは多様なジェンダーの人たちが沢山集まって、学問を楽しんでいただきたいと心から思っています。」
 

日常的に世界と接することができる場所(植阪友理先生)


続いて、東京大学教育学研究科、高大接続研究開発センター(兼坦)准教授の植阪友理先生から東京大学における特色ある教育プログラムや女性学生支援に関する説明がありました。

東大における特色ある教育プログラムの一つとして、体験活動が紹介されました。例えば国内においては、農業体験と漁業体験、復興まちづくりの業務体験、地方高校再建計画などが実施されています。海外においても、英国ロンドン、欧州ビジネスセンター体験活動、新興国インドでのマーケティングリサーチ、ハーバード大学医学部研究室の訪問、見学などが実施されています。

それだけでなく、初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)や初年次ゼミナール、グローバルリーダー育成プログラム(GLP)、Go Global Gatewayプログラムなどもあり、大学生活とは異なる考え方や発想、行動様式、価値観と触れ合うためのプログラムが多く用意されています。
「何かをやりたいと思った時にやれるだけのバックアップ体制はものすごくある。それぞれの教員が世界レベルで戦えるだけの力がありますので、トップレベルのことを自分で何かはっきり目標を持ってやりたいと思ったら、どれだけでもバックアップしてもらえます。」

続いて、東京大学の女性学生支援制度についての説明がありました。
東京大学には、独自の奨学制度があります。例えば、さつき会奨学金、東京大学女子学生奨学金(大学院学生対象)があります。中でもさつき会奨学金は、自宅から大学に通えない学生を対象にしたもので、入学試験に合格する前に採否が分かる返済不要の奨学金です。
加えて、キャンパスライフ支援として、オートロックなどセキュリティがしっかりした宿舎を用意したり、月額最大3万円の家賃補助を出す制度を設けたりしています。

「私も卒業生の一人として、海外の先生と修士一年から共同研究を20年くらいにわたってやっています。日常的に一流の研究者の人が大学にいて、学生とつながっています。東大は、世界のハブだなと感じています。日常的に世界と接することができる良い場所だと感じています。」

それぞれの理想に向けた学生生活(話題提供者)

東大の学生3人によって、東大を志望した理由や学生生活についてプレゼンテーションが行われました。
 
伊佐 麗さん 教養学部4年(大学院教育学研究科 教育心理学コース進学予定)
 
伊佐さんは沖縄生まれ沖縄育ちで、ミュージカルやバレエが趣味です。
現役時は東大に落ち、東京の予備校で1年間浪人後受験するも不合格。結局その年は他大学に入学しましたが、そのタイミングで新型コロナウイルスのパンデミックが起きてしまい、沖縄でオンライン授業を受けていました。しかし、その間に東大に入りたいという気持ちが再燃し、沖縄の塾で再度受験勉強することを決意。ついに3回目の受験で東大合格を果たすことができました。
 
なぜそこまで時間をかけてまで、東大を目指そうと思ったのでしょうか。
それは、「沖縄のロールモデルになる」という目標を達成したかったから。沖縄は難関大学に進学するための環境が十分とはいえない中、自分自身が東大に入学することで、沖縄の人々の無限の可能性を証明したかったのだそうです。

また、東大がリベラルアーツシステムの下で前期課程にてさまざまな学問に触れた後に、後期課程での専攻を決めることができる点に魅力を感じたそうです。
「言語学で推薦出願した経験もありますが、前期課程を経て、やりたいことは言語学ではなく心理学ではないかという考えに変わり、後期課程を経て、教育心理学というアプローチなら、自身が沖縄でしたいことができるということに気づきました。東大のカリキュラムは、何をしたいかがはっきり決まっていないからこそ色々なことを見て絞っていきたい方におすすめです。」
大学院では、教育心理学で沖縄の教育を対象にした研究を行いたいと考えているそうです。

学外でも、沖縄と東京をつなぐ架け橋になるために色々な活動に取り組んでおり、沖縄出身の学生で構成されている学生団体の一員として沖縄の高校生向けに進路サポートを行ったり、個人的にもSNSやコンテストへの出場を通じて沖縄関連のことを発信したりしています。

「諦めない限り、あなたの夢が叶うチャンスは消えません。受かるまで続けたという粘り強さで合格できた。挑戦するからこそ、叶う可能性があるってものなので、自分の可能性に限界を決めず、少しでもやりたい気持ちがあれば東大受験を含め何にでも挑戦してみてほしいです。」


■樋渡 優理さん 大学院人文社会系研究科修士1年
 
樋渡さんは、東京都出身で1年浪人を経験しました。
高校は進学校で、周りに東大を志望する人が多かったことから、東大を志望し始めたそうです。出身高校である東京都立日比谷高等学校は文化祭が忙しい高校だったそうで、高三の文化祭が楽しすぎて、なかなか勉強に打ち込めなかったこともあり、現役では東大に不合格になり、一年浪人を経験しました。

大学生活では、ゴルフ部や、女子高校生の東大進学を支援する学生団体「polaris」、バドミントンサークルに加入するなど、課外活動に力を入れている印象を受けました。
社会学を専攻した理由としては、人の人生や考えていることに元々興味があったからだそうです。また、文学部は必修が少ないので、自分の関心に合わせてさまざまな授業が取れる点にも魅力を感じたそうです。

大学院では福祉社会学を専攻し、「医療と障害の社会学」というゼミを通じて、病気や障害を持つ人々の生きづらさを観察する研究をしています。具体的には、子どもの居場所づくりをテーマに子どもの貧困支援を行うNPOでボランティアとして子どもの様子や支援者の意識を観察するフィールドワークを行っています。これによって、福祉や包摂に対するハードルの高さを解消し、福祉をもっと身近な存在にしたいそうです。


■加藤美侑さん 理科二類2年(医学部健康総合科学科進学予定)
 
加藤さんは広島県出身で、推薦入試で入学しました。加藤さんの理想的な社会は、全ての人が健康に暮らすことのできる社会です。
加藤さんは歳の離れた障害のあるお姉さんと育ち、お姉さんの通う施設の行事などを通して障害を持つ人と関わる機会が多くありました。小学校高学年の際に相模原障害者殺傷事件があり、社会にある重度知的障害の人への認識に違和感を持ち、この課題意識を多くの人に発信したいと考えたそうです。

その後、課題意識を持ち、英語スピーチコンテストやオンラインセミナーや英語オンライン国際交流、科学オリンピック広島県大会などにも参加しました。高2の夏に、障がいのあるなしに関わらず全ての人が健康に暮らせる社会を実現したいという思いが芽生え、東京大学医学部健康総合科学科を志望するようになりました。その後も、お姉さんの友人の障害者歯科受診の見学・お手伝いや、障害を持つ方に関わる小児科医等へインタビューを行いました。

入学後も体験活動プログラムでハーバード大の研究室や公衆衛生大学院、療育センターなどにも訪問しました。長期休暇にはカンボジアに医療ボランティアに行ったり、能登半島地震の福祉避難所へボランティアに行ったりする等、非常に精力的に活動している印象を受けました。

「東大は全てではないが、世界は確実に広がると思っていて、来て本当に良かったと思っています。東大を地方から目指すのは壁も高いし、男子率も高い。正直地方とは環境が違いすぎるけど、思い切って飛び込んでみる価値は大きいし、その壁は諦めずにぜひ東大に来てほしいなと思います。」

熱い仲間達との繋がり(藤井輝夫総長)



東大生のプレゼンテーションの後、総長からのご挨拶がありました。東大のUTokyo Compassや東京大学ダイバーシティ&インクルージョン宣言などの取り組みを紹介し、東大が多様性や包摂性を推進していることを示されました。また、現在東大が行っている「#言葉の逆風」プロジェクトや、女性学生への住まい支援、奨学金などにも言及され、女性学生を増やしたいという強い思いを示されました。

その後、グループに分かれて東大生や藤井総長に直接質問できるグループ交流を行った後、事前アンケートやグループ交流で出された一部の質問に藤井総長にお答えいただきました。
「学生の日常や校風から感じる東大の良さとは?」という質問に対しては、東大生一人ひとりが多様で、研究、運動、課外活動などそれぞれ何かしらに打ち込んでおり、そのような人たちと繋がりを持つことができる点だと述べられました。

次に、「総長の大学生時代のルーティンや楽しかったエピソードは?」という質問に対しては、東京大学海洋研究会というサークルで、夏休みに西表島や父島に行ってダイビングをしたり、バンドサークルでバンド活動を行ったりしていたということが挙げられました。
総長は、海の中のことを明らかにするための技術を研究したかったそうで、それができる東大を志望したそうです。また、大学2年時に、アメリカの海洋研究所によって深海に沈んでいたタイタニック号が見つけられたというニュースを見て面白いと思ったことも、海の中を明らかにするロボットの研究に繋がったそうです。

 

最後に

本イベントを通じて、東京大学が女子中高生を歓迎している姿勢を示すことができただけでなく、受験における不安や疑問を解消し、東大への受験を後押しすることができたのではないでしょうか。
このような取り組みを通して東京大学の女性学生率を向上させ、東京大学がより多様性に富んだ包摂的な大学になっていくことを筆者は強く願います。